備蓄米が放出されたものの、スーパーで売られている銘柄米は税込み5000円を超えるものが並び、依然、コメ価格は高止まりの状態が続いています。そんな中、小泉進次郎農林水産大臣は随意契約の備蓄米について、外食や給食などの事業者も販売の対象にすると明らかにしました。こうした取り組みでどんな影響が出ると考えられるのか。流通経済研究所・折笠俊輔主席研究員の見解も含めてまとめました。

外食や給食の事業者なども備蓄米の販売対象 銘柄米の価格に影響?

 改めて、現在の備蓄米の放出状況は、▼2024・2023年産の古米など31万t(競争入札)▼2022年産の古古米20万t(随意契約)▼2021年産の古古古米10万t(随意契約)、そして、2020年産の古古古古米10万tも今後放出されます。

 こうした中、6月20日から、随意契約の備蓄米について外食(飲食店など)・中食(弁当など)・給食の事業者も販売の対象とすると、小泉農水大臣が明らかにしました。

 販売対象拡大に関して、流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員は「広く販売されることの影響はコメ市場全体に波及する」「安価な備蓄米が流通すると、本来売れるはずの銘柄米が余り、銘柄米は安くなっていくのでは」とみています。

『スポット価格』が急落とは?

 一方、コメの「スポット価格」が急落しているようです。コメの流通は、生産者(農家)→集荷業者(JAなど)→卸売業者→小売店そして消費者のもとへと渡ります。この一連の流れの中で、卸売業者間の取引があります。それをスポット取引といい、主に卸売業者同士で手元のコメを売り買いする際の価格がスポット価格です。この取引では、基本的に銘柄米が対象となります。

 現在、新潟県産のコシヒカリに影響がみられ、金沢米穀によると、60kgあたりのスポット価格は5月下旬に5万100円でしたが、6月16日には3割安の3万5500円。1万5000円ほど下がっています。このスポット価格は、今年1月にコメの不足感から急騰して5月末がピークになったということで、3万5500円は元の価格に戻ったぐらいだそうです。スポット価格の低下について折笠氏は「スポット取引はコメ取り引き全体の1割未満。コメが余っているか否かがわかる指標の1つ」と指摘。すぐに販売価格に影響するとは言い切れませんが、今後、下がっていく可能性があるかもしれないということです。

「7・8月ごろには銘柄米も安く買える可能性」 一方で懸念も…

 そして気になる今後のコメの価格。折笠氏によりますと、現在、店頭価格が下がる兆しがあるということです。「7・8月ごろには銘柄米も安く買える可能性が出てくる」としていて、「価格は4000円を切るくらいか」とみています。

 一方で、懸念も指摘しています。それが『備蓄米の流通によって銘柄米が売れず、高値で仕入れた卸売業者が倒産する可能性』です。折笠氏は「余った銘柄米は備蓄米として買い入れるような対策をするのではないか」「今は米価を下げる政策の達成を考えているのでしょう」とコメントしています。