大阪・ミナミで深刻化している「放置自転車問題」。道路が“駐輪場”と化し、歩行者の邪魔になっているだけでなく、命が危険にさらされる事態まで起きているといいます。違法駐輪する人の言い分とは?取材班が直撃しました。

「約4000台」大阪・ミナミにはびこる放置自転車

 日本有数の繁華街、大阪・ミナミ。連日、大勢の外国人観光客らで賑わっています。そんなインバウンド客と並んで目立つのが「放置自転車」です。

 道頓堀のど真ん中や、交番の前でも、お構いなし。ほとんど封鎖状態となってしまっている路地も。ミナミエリアの放置自転車、その数なんと約4000台です。

 歩行者からはこのような声が。

 「ちょっと邪魔ですね、歩くのに。危ないし」
 「子どもとかもいるんで通りにくかったりする」
 「お前らええ加減にせえよ!って言いたいね。」
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 こうした状況に地元商店街の理事長も頭を抱えています。

 (南地中筋商店街振興組合 真鍋知秀理事長)「自分たちのお店の前に放置自転車をされると、自分たちの商売もしにくくなるし、お店の方も困りますね」

 地元商店街などは、ミナミを見回って放置をやめるよう書いた札を自転車に貼るなど、対策を実施。しかし、いまだに放置自転車は後を絶ちません。

放置自転車が人の命を脅かす事態も

 さらに深刻な問題も起きているといいます。

 (南地中筋商店街振興組合 真鍋知秀理事長)「放置自転車があったことによって、緊急車両が通れず、消火活動に向かえなかった」

 今年1月、商店街で火事がありましたが、放置自転車のせいで緊急車両が通れず、消火活動が遅れる事態が発生したといいます。

 (南地中筋商店街振興組合 真鍋知秀理事長)「まさか自分が止めた自転車が人の命を危険にさらすことに加担してるとか、みじんも思っていなかったと思うんですよね。でも、実際に放置自転車がそういうことを引き起こしたわけです」

「みんな止めてるやないですか」開き直る違反者

 なぜ違法駐輪をするのか。取材班が直撃すると…

 (記者)「ここは駐輪禁止エリアですが?」
 (男性)「あ、すみません。気をつけます」

 外国人の女性2人組は…

 (記者)「This place is no bicycle.」
 (外国人女性)「Sorry Sorry」

 多くの人は注意すると非を認めますが…

 (記者)「ここは駐輪禁止エリアですが?」
 (女性)「ごめんなさい、時間ないんです」

と、自転車でそのまま走り去っていく人や…
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 (男性)「みんな止めてるやないですか」

と開き直る人も。

毎日撤去しても“いたちごっこ”状態

 こうした状況に行政も手をこまねいているワケではありません。

 大阪市ではおととしから、自転車の「リアルタイム撤去」を開始。以前は撤去するには30分程度、放置されているのを確認する必要がありましたが、今は見つけ次第、撤去できます。

 今年4月からはピークとなる夜の時間帯に毎日、キタとミナミで撤去作業が実施されています。

 中には目の前で撤去されてしまった人たちも…

 (撤去された人)「ちょっと止めて買い物行こうかなと思ってただけ。気をつけます、ちゃんと駐輪場に行きます」

 こうした対策で、ミナミの放置自転車は去年の8400台から、今年9月は3700台と半分以上減っています。実際、撤去作業が行われると、すっきりきれいになりますが…
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 (記者)「いま自転車が止められました」

 作業員がいなくなると、すぐまた自転車が…。簡単には無くなりません。

対策費用は「年間5億5000万円くらい」

 ミナミで撤去された自転車が向かう先が…大阪市浪速区にある自転車保管所です。常に800台から1000台がここで20日間保管されています。

 こうした撤去や保管に必要な費用はもちろん、税金。市全体でかかっている総額はなんと…

 (大阪市建設局 氏原正晴課長)「昨年度で大体年間5億5000万円くらいかかっています。皆さんの心がけ次第で、この負担も減らせるということになります」

 多額の税金がかかっている放置自転車問題。自転車を取りに来た人に止めていた理由を聞いてみると…
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 (自転車を取りに来た人)「駐輪場は基本ほぼあいていないし、少ない。もっと増やしてくれたらと思います」
 (自転車を取りに来た人)「駐輪場ですね。100円、200円の駐輪場を増やしてくれたら、ほんまに助かりますけどね」

 路上に駐輪するのは「駐輪場が足りないせいだ」というのです。

駐輪場が「あいていない」は本当?取材すると“意外な事実”が…

 本当にそうなのか?ミナミにある駐輪場へ行ってみると…

 (記者)「収容台数280台のこの駐輪場ですが、まだまだ空きが目立ちます」

 「エディオンなんば本店」の駐輪場。店の利用客以外も2時間無料で止められますが、ピークとなる夜の時間帯でも余力はあるといいます。

 また、商業施設「なんばCITY」にある駐輪場も同じく2時間無料ですが、訪れてみるとガラガラです。
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 ミナミ周辺にある駐輪場の場所と止めることができる台数を示した地図を見てみると、大きな道路沿いが多く街中は少ないですが、すべて合わせると約4900台が止められます。ところが、平均して2000台分ほどは空いている状態だといいます。

 また、おととし、放置自転車をしている人1400人に行ったアンケートでは「駐輪場の場所を知っていても止めない」と答えた人が6割にものぼったといいます。

 こうした結果を踏まえ、市などは今後も撤去を継続しつつ、そもそもミナミには公共交通機関などで来るよう、呼びかけに力を入れていく方針です。

目指すのは「歩いて楽しむ街」

 地元商店街の理事長も「歩いて楽しむ街」へとイメージを変えていく必要があると考えています。

 (南地中筋商店街振興組合 真鍋知秀理事長)「ミナミの街自体を、歩いて来て、もしくは公共交通機関で来て、歩いて楽しんでくださいね、それでいろんな発見をして、まちの魅力を感じてくださいと。ミナミ自体が“ウォーカブルシティ”として、新たな未来に向かっていくといいなと考えています」

 大阪の長年の社会問題、放置自転車。根本的な解決のためには、一人一人が意識を変えていくしかないのかもしれません。