「出てこいや!」道で暴言をはいたり、深夜・早朝の騒音など、「ある男性」の行為に8年間悩んできたAさん。「ものすごく嬉しかったです。これで解放されるんだ」と胸をなでおろします。

それは6月25日のことでした。閑静な住宅街に現れたのは大阪地裁の「執行官」や執行作業を委託された業者。訪れたのはAさんを悩ませてきた男性の家でした。「午後4時ごろです。大阪地裁の執行官や執行業者たちが、これから男性の家に入ります」(記者リポート)
スライド22.JPGおそるおそる扉を開ける男性、しかし心当たりはあるはずです。

男性:「くそばばあ!はよ死ねよ。ひとりごとや」
Aさん:「いま殴ろうとしましたね?」
男性:「なぐってませ~ん」

近所の住民に対し、男性は暴言や騒音など迷惑行為を繰り返していました。
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「思いっきり大きい声で暴言を直接吐かれる『うるせぇばばあ』みたいな感じで。大きい声で言われて。ご近所もトラウマになっているのでもう怒り…怒りしかないですね」(Aさん)

ある時は、住民の個人名を挙げて暴言を吐き、
「出てこいや!文句があったら出てこいや!お前らな、己のやることもできなくて昭和の人間と言えるのか!恥ずかしいと思わんか、バカモノ!ハゲ!ふん!」(男性)
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ある時は、家の前を通りかかった宅配業者を怒鳴りつけます。
「降りてこい言うたら降りてこんかい。次から徐行せえよ!」(男性)

早朝の住宅街に軍歌が鳴り響いた日も

別の日には、「ウォンウォンウォン!」と爆音で車のエンジンをふかす、明らかな嫌がらせも。そして車から出ると。
「以上パフォーマンス終了です。ご苦労さん」(男性)

さらに、朝6時の住宅街に鳴り響いているのは軍歌です。Aさんによると、深夜のときもあるといいます。

Aさん「(軍歌のような)こういった類の系統の曲です。あと梅沢富美男さんの『夢芝居』」
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なぜ迷惑行為を繰り返すのか。憤マン取材班がことし1月、本人を直撃した際には。

男性「近所でも一緒や、挨拶をしない人間。会釈もしない」
記者「その人を懲らしめるためにやっているのか?」
男性「懲らしめる意味は全くない!」

男性は持論を展開「注意喚起!わからんか?」

男性は、住民らが自分に挨拶をしないことが不満だと主張したうえで、「近所での交通マナーの悪さ」がきっかけだったと話し始めました。

男性「(警察に)取り締まりを依頼したが、無反応な。(警察を)呼ぶためにわざとやったんや。分かるか?」
記者「それと、ここで大声で騒ぐことはどう関係あるんですか?」

男性「関係あんねん。注意喚起や。注意喚起!わからんか意味が?」
記者「なんの注意喚起ですか」
男性「そういうことや、警察に対するアレとか」
記者「じゃあ自分で警察署に行ったらいいじゃないですか」
男性「なんで行かなあかんねん」

一連の行動は、交通マナーの改善を求めても対応しない警察を呼び寄せるためだったと持論を展開したのです。

迷惑防止条例めぐり府議会で質疑

迷惑行為を取り締まる条例は適用されないのか。今年3月には、男性をめぐって、大阪府議会で議論が起きたことも。

占部走馬府議「この状況で、大阪府の迷惑防止条例に違反しないとなると、この条例はどのような場合に条例違反だと大阪府警本部は判断して摘発に動くのでしょうか?」
スライド11.JPG大阪府警 岩下剛本部長「個々の事案ごとに具体的、事実関係に即して厳格に判断をしております」
占部走馬府議「野放しになっていて、この条例でこれが抑えられないなら意味がないのではないかと思います」

ただ、転機が訪れます。男性が暮らす家の所有者である親族が、迷惑行為の数々を知り、男性に対し家から出ていくよう求め提訴。

しかし一審の大阪地裁は今年2月、「近所トラブルは男性と住民との間の問題に過ぎず家から出ていく必要はない」と判断したのです。

判決2日後の男性の自宅前には「裁判所のお墨付きを得た」と言わんばかりに、住民らを非難する貼り紙が掲げられていました。スライド8.JPG
そこには「ストーカー家族」、「引きこもり」、「盗撮された」などと書かれています。住民らが絶望するなか、6月4日、事態が大きく動きました。

二審で一転「建物土地を明け渡せ」との判決

裁判長「主文、一審の判決を取り消す。男性は親族に対し、建物と土地を明け渡せ」

二審の大阪高裁が一転、家から出ていくよう男性に命じたのです。その理由について「男性はこの家を、いわば近隣住民への迷惑行為を行うための “拠点”として使っていると言わざるを得ない。男性が家を占有する権利はない」と述べました。

男性を訴えた親族の代理人を務める西村隆志弁護士。不動産の明け渡しをめぐる裁判が専門ですが、判決の内容には驚いたといいます。スライド5.JPG
西村隆志弁護士「『迷惑行為をする拠点として使っていた』、そういった文言ですね。そこまで踏み込んで言及する判決は、私見たことなかったからです」「同じような迷惑行為が行われているような事例があったときの先例になるのではないかなというふうに思います」

その後、男性は上告することなく6月20日に、判決が確定しました。そしていよいよ家を明け渡させるための手続きが始まりました。

執行官らが家から出ていくよう通告

「こんにちは。裁判所から来ています」近所で迷惑行為を繰り返す男性に対し、大阪地裁が退去させるための手続きに乗り出しました。

関係者によりますと、男性は「聞いていない」などと戸惑いを見せたものの、執行官らは7月下旬ごろまでに家から出ていくよう通告したということです。

スライド1.JPGおよそ8年間、悩んできた住民は、「出ていった先で、また人に迷惑をかけるような行為を続けたら、私達だけが喜んでいいのかってなると、完全な解決ではない」と話し、安心した一方で、複雑な気持ちだとも話します。

自らの行為が原因で家の明け渡しを命じられた男性。これからはもう過ちを繰り返さないでもらいたいものです。(2025年6月30日 MBSよんチャンTV「発掘!憤マン」より)