日本高等学校野球連盟は12月12日(金)、来年行われる第98回選抜高校野球大会の「21世紀枠」の出場校選考で対象となる、各地区連盟が推薦する候補校9校を発表しました。

 各地区の推薦校(北海道を除く)は、11月に各都府県連盟が推薦した45の候補校(46都府県のうち大分県から推薦校がなかったため45校)の中から、地区(東北・関東・北信越・東海・近畿・中国・四国・九州)ごとに選考が行われて、候補校9校が決定しました。

<北海道><東北地区> 士別翔雲(北海道)・名取北(宮城)

 北海道では、地区予選を勝ち抜いて秋の道大会に出場した公立高校の8校の中から、初戦で勝利をおさめた士別翔雲高校と紋別高校を選考基準に合わせて比較。その中で、冬季はグラウンドが約半年間使用できないという困難な状況を乗り越えて道大会ベスト8に進出した確かなチーム力、野球文化を次世代につなごうと23年間継続して小学生を対象とした野球イベントを行っている地域とのかかわり、そして何よりも指導者とベンチが一体となって戦う姿勢が評価されて士別翔雲高校が満場一致で選出されました。道大会でも、3年間で2度のベスト4と、近年安定した成績を残している士別翔雲。出場が叶えば、歴代日本最北の出場校となります。

 東北地区では、各県が推薦した各校の中から、選抜大会に出場した場合、「(甲子園で戦える)ある程度の実力を兼ね備えているか」を確認した上で、名取北(宮城)・高田(岩手)・いわき湯本(福島)の3校を選択。その中で、今秋、創部後初めての東北大会出場を果たした実績や、東日本大震災で失われた名取市の海岸防災林再生プロジェクトに継続的に参加するなどの地域貢献、「野球用語を考える」という新しい普及振興への取り組みが高く評価されて名取北高校が選ばれました。

<関東・東京地区>県立上尾(埼玉)

 関東・東京地区では、各都・県ごとに推薦校の推薦理由の説明を行った後、この地区の推薦校について協議。協議の結果、昭和の時代から続く名門校として私立全盛の平成時代以降も公立高校の雄として埼玉県内で常に安定した戦績を残し、今秋もベスト4に進出している実績や、「誇りと責任」を合言葉に野球部員としての“誇り”を忘れずに、自分たちの役割を“責任”をもって果たすことが徹底され、地元小学生との野球教室を15年以上行うなど地域活動にも意欲的に取り組んでいる上尾高校が全会一致で選出されました。

<東海地区><北信越地区>県立四日市(三重)・県立若狭(福井)

 東海地区では、三重県唯一の全国高校野球選手権大会優勝を成し遂げた歴史、文部科学省が指定する「スーパーサイエンスハイスクール」として全校生徒が3年間1つのテーマについての探究活動を行う中で、野球部員が野球に関する探究活動に取り組み、その内容を指導者と選手全員で共有し練習や試合に積極的に活用して県大会ベスト8につなげた創意工夫、三重県内屈指の進学校として学業と部活動の文武両道を高いレベルで実践している点が評価されて四日市高校が選出されました。

 北信越地区では、各県による推薦理由の補足説明を経て、推薦校のなかから若狭(福井)と高岡第一(富山)の2校を選出、その上で、近年に好成績を残している実績や、文部科学省指定の「スーパーサイエンスハイスクール」として、野球部員が地元の資源活用に寄与するなど文武両道を実践している点、毎年複数の保育園等を対象に「ティーボール教室」を開催するなど地域の野球普及への貢献、この4年間で3度福井県から21世紀枠候補校として選出されている点が評価されて若狭高校が推薦されました。

<近畿地区><中国地区>県立郡山(奈良)・山口県鴻城高校(山口)

 近畿地区では、各府県の説明を受けて、まず日高中津(和歌山)と郡山(奈良)の2校を選出。その上で、創立132年を迎える県内屈指の進学校として他校の見本となる高いレベルでの「文武両道」を実践している点、野球の普及活動を目指し学童野球との交流会やキッズフェストなど地域に良い影響を与えていることが高く評価されて、奈良県立郡山高校が選出されました。

 中国地区では、各県の推薦校の中から21世紀枠の選考条件の中で「困難克服」「地域貢献を評価して3校を選出。その中で「地域とともに歩むチーム」を理念に掲げて、少年野球チームとの交流を長年継続していること、地元の小学校とのふれあいフェスタでの野球未経験者への野球普及活動、さらには地域の福祉祭りでのボランティア活動や学校周辺・駅での清掃活動など地域社会への貢献活動に積極的に取り組む姿勢、この秋46年ぶりに中国大会に進出した実績が評価されて山口県の山口県鴻城高校が、私立高校として唯一選出されました。

<四国地区><九州地区>県立高知農業(高知)・県立長崎西(長崎)

 四国地区では、4県の中から21世枠の選考基準に照らし合わせて、香川中央(香川)と高知農業(高知)を選出。その中で、令和3年度に新入部員が「0」という状態から、学校の魅力発信や地元少年野球との継続的交流、未就学児への「やきゅう体験プロジェクト」などの野球の普及活動への積極的な取り組みを行うことで困難な状況を克服、さらには指導者と部員が一体となって創意工夫を凝らした練習を重ねて飛躍的な成長をとげて、この秋の高知県大会準々決勝では優勝した明徳義塾とタイブレークにもつれ込む接戦を演じた実績が全国のモデル校として相応しいと評価されて高知農業が候補校に選ばれました。

 九州地区では、九州各県の候補校の中から各校の推薦理由を精査して長崎西(長崎)と徳之島(鹿児島)の2校を選出。その上で、県内トップの進学校、さらには全国で2校ずつしか指定されていない文理融合基準枠、科学技術人材育成重点枠の「スーパーサイエンスハイスクール」として高いレベルでの文武両道を実現している点、公立の進学校という練習時間への制約がある中で、生徒自らが発案した「アプリ」を駆使して情報を共有し野球への理解を深めることで、九州大会でベスト8入りを果たした実績、さらには、(長崎の)爆心地に近い学校から平和への願いが込められた校歌「平和の鐘」を全国に届けたいという想いが受け止められて長崎西高校が選出されました。

21世紀枠 各地区推薦校(都道府県大会成績)

 21世紀枠は、来年の1月30日(金)に21世紀枠特別選考委員会で各地区から推薦された9つの候補校を対象に選考が行われて、代表校2校が決定します。

▼北海道   士別翔雲 ベスト8
▼東北    名取北(宮城) ベスト4
▼関東・東京 県立上尾(埼玉) ベスト4
▼東海    県立四日市(三重) ベスト4
▼北信越   県立若狭(福井) 準優勝
▼近畿    県立郡山(奈良) ベスト4
▼中国    山口県鴻城高校(山口)  ベスト4
▼四国    県立高知農業(高知) ベスト8
▼九州    県立長崎西(長崎) 準優勝