年末年始に花園ラグビー場(東大阪市)で開催される「全国高校ラグビーフットボール大会」。“聖地”を目指す戦いもクライマックスを迎えています。

 先週末には埼玉・愛知で花園初出場が決まるなか、大阪・神奈川・福岡・奈良では、全国制覇の経験を持つ強豪校がライバルとの熱闘を繰り広げました。

<慶應志木vs川越東>大熱戦を制して悲願の全国大会初出場!

 11月15日(土)に行われた埼玉第2地区の決勝は、2大会ぶりの全国大会出場を目指す川越東と、61年ぶりに埼玉大会決勝の舞台に進んできた慶應志木の対戦。両チームが強みを発揮し合う予想どおりの白熱の展開となりました。

 先制したのは川越東でした。前半5分、持ち味のBK陣の決定力を生かした攻撃でFB飯野幹也選手がトライ。さらに1トライを加えて12対0とリードします。

 一方、川越東の鋭い出足に苦しんでいた慶應志木も徐々に対応。前半終了間際には得意のモール攻撃から反撃のトライを奪うと、後半開始直後にもトライを奪い、14対12と逆転します。しかし、川越東も譲りません。後半8分には、スピーディーなパス展開からCTB谷川史人選手がトライ。ゴールも決めて19対14と再逆転に成功しました。

 再びリードを許した慶應志木。それでも戦い方に迷いはありませんでした。ここから再び、全員で鍛え上げ作り上げたモールで勝負します。そして後半19分、繰り返しモールをつくりながらじわりじわりと敵陣深くまで侵入していくと、最後はNO8小島昌悟選手からのボールを受けたCTB浅野優心選手が中央にトライ。SH荒木大志選手が慎重にゴールを決めて、21対19と2点のリードを奪いました。

 残り時間10分あまり。花園への執念が激突する攻防が続きます。必死の攻撃を仕掛ける川越東に対して、自陣からでもモールをつくって時間を使っていく慶應志木。刻々と時間が過ぎるなか、最後は慶應志木の初出場への想いが勝りました。ラストは自陣深くまで攻め込まれたピンチに対して、気迫のディフェンスで川越東の反則を誘いノーサイド。最後まで自分たちを信じて戦い続けた慶應志木。大熱戦を制して悲願の全国大会初出場です。

<名古屋vs栄徳>創部67年目で悲願の花園初出場!

 同じ11月15日(土)、愛知第2地区の決勝では、名古屋と栄徳が激突。過去5大会、決勝に進みながらも中部大春日丘の厚い壁に阻まれてきた名古屋が、愛知県に2校の出場権が与えられた記念大会で見事チャンスをものにしました。

 序盤から優位に試合を進めた名古屋。前半11分、敵陣深くまで攻め込んだチャンスに、ラインアウトからのモールをしっかりと押し込み、先制のトライを奪います。21分にはFW陣の力強い縦突進の連続から、最後はHO丹羽倖己選手がトライ。ゴールも決めて14対0とリードします。

 一方、名古屋の勢いの前に受け身になっていた栄徳も反撃を見せます。前半終了間際には、トライラインまで10m付近のラインアウトから、積み重ねてきた努力を感じさせる鮮やかな連携から、キャプテンのLO宇都野右真選手がトライ。14対7と追撃の狼煙をあげると、19対7とされた後半10分、敵陣の深い位置でFL山田清信選手がチャージしたボールをNO8小西凌央選手がトライエリアで押せてトライ。ゴールも決めて19対14と、ワンチャンスで逆転可能な5点差に詰め寄りました。

 試合はそのまま終盤へ。両チームの差はわずかに5点。どちらに流れが傾くのか、緊迫の攻防が続くなか、スコアを動かしたのは名古屋でした。後半20分、ゴール前のピンチをしのいだ栄徳が自陣の深い位置からキックを転がして攻撃を仕掛けると、ルーズボールに素早く反応した名古屋のCTB中島裕次郎選手が密集サイドを上手く抜け出し、そのまま25m以上をひとりで走り切って中央にトライ。ゴールも決めて26対14とします。

 チームメイトが「いつもチームに安心感をもたらしてくれる存在」と頼りにするキャプテンが、試合の行方を左右する貴重な追加点を奪いチームを勢いづけました。この後、試合終了間際にも1トライを加えた名古屋が33対14で栄徳を振り切り、創部67年目で悲願の花園初出場を決めました。

<桐蔭学園vs日大藤沢>3大会連続23回目の花園へ!

 翌日の16日(日)は、全国大会3連覇を狙う桐蔭学園が、神奈川第1地区の決勝で日大藤沢と対戦。序盤から、全員がフィジカルの強さと高いハンドリングスキルを発揮して、次々とトライを重ねていきます。

 開始4分、キックパスに上手く反応したWTB鈴木豪選手からのパスを受けたCTB古賀啓志選手が先制のトライを奪うと、前半だけで6トライ。FB曽我大和選手がコンバージョンキックをすべて決めて42対0とリードします。

 後半に入っても桐蔭学園の勢いは止まりません。メンバーが次々と入れ替わるなか、交代で出場した選手も力を発揮して得点を加えていきます。

 後半16分には「ここがチャンス」とばかりに渾身の力でモールを押す日大藤沢の勢いを止めることができずに1トライを許したものの、後半も6トライを奪う猛攻で36得点。終わってみれば78対7の大勝で、3大会連続23回目の花園への出場を決めました。

<大阪桐蔭vs大阪朝鮮高>「気迫あふれる激しい攻防。貴重な機会をいただいた」

 その桐蔭学園を退けて、サニックスワールドユース大会で連覇を果たした大阪桐蔭。大阪第3地区の決勝で、花園でベスト4に進出した実績を持つ大阪朝鮮高と対戦しました。

 フィジカルの強さとディフェンスの固さが持ち味の大阪桐蔭。試合開始から強みを発揮して主導権を握ります。序盤から激しい当たりで真っ向勝負を挑んでくる大阪朝鮮高に対して、その気持ちを上回る強靭なフィジカルで対抗。前半8分には、FB須田琥珀選手がタックルを引きずりながらトライエリアに飛び込み先制のトライを奪うと、14分にはスクラムをしっかりとコントロールした後、ディフェンスの薄くなったサイドをきっちりと突き、最後はWTB上原健新選手がトライ。その後も確実に得点を加えて、前半で24対0と大きくリードを奪います。

 後半、地元の大声援を背に懸命に体を張り続ける大阪朝鮮高の粘りに苦しんだものの、持ち味のディフェンスの固さを発揮して最後まで得点を許しませんでした。さらに、2本のトライを加えて38対0のシャットアウト勝ち。全国大会への出場を決めました。

 試合後、綾部正史監督が「全国大会を見据えると、この大阪大会の決勝で大阪朝鮮高と対戦できたのは大きかった。最後までしっかりと身体を当ててチャレンジしてくる姿勢と、気迫あふれる接点での激しい攻防。貴重な機会をいただいた」と振り返りました。

 手崎颯志主将も、「向こうも気持ちのこもった強いチーム。その相手にコンタクトゾーンで上回れたことが勝利につながった。これでやっと(花園への)スタートラインに立てた。フィジカルはもちろん、メンタルも強くして、去年のチームができなかった全国制覇を果たしたい」と花園での健闘を誓いました。

東海大大阪仰星・常翔学園が“聖地”へ!

 大阪大会の第1地区・第2地区の決勝は、東海大大阪仰星・常翔学園が持ち味を発揮し、それぞれ7大会連続25回目、2大会連続43回目の全国大会出場を決めました。

 近大附属と対戦した東海大大阪仰星は前半5分、仰星らしい素早いパス回しからWTB山本健剛選手が先制のトライを奪うと、12分にはHO角方温太選手がチャージしたボールに山本選手が素早く反応して2本目のトライ。その後も、個々の選手がスペースを上手く使いながらテンポよくボールをつないでいくラグビーで得点を量産していきます。

 ひとりひとりの判断力の確かさに加えて、BK陣のフィジカルの強さも光った東海大大阪仰星。80対5の大差で近大附属を下しました。東佑太主将が「僕たちはチャレンジャー。春の選抜大会に出場できなかった分、基本を徹底して泥臭く激しくプレーしようとやってきた。昨年度は(全国大会の)決勝戦で敗れる悔しさを味わったので、今年(の大会)は本当に全員で笑って終わりたい」と語った東海大大阪仰星。確かな手ごたえと共に、全国大会への出場権獲得です。

 第2地区で登場した常翔学園も、ここ数年で力をつけてきた関大北陽相手に伝統校の底力を見せつけました。

 白木繁之監督が「前を向いてプレーする、最後まで攻め続けるのが常翔のラグビー。今日はそれを体現できた」と振り返ったように、試合開始から持ち味の“縦への推進力”を発揮し、得点を積み重ねていきます。

 前半6分、スクラムを押し込んだ後、力強い縦突進の連続でPR古澤晴也選手が先制のトライを奪うと、14分には相手ボールのスクラムを一気に押し込み、ボールがこぼれたところをFL田中蓮聖選手がトライエリアで押さえてトライ。その後も着々と得点を加えていきました。

 後半25分に関大北陽に1トライこそ許したものの、最後まで攻撃の手を緩めず、試合終了間際にも追加点を奪った常翔学園。52対7の大差で力のある相手を下し、第2地区の優勝を飾りました。

<御所実vs天理>ライバル対決は両校優勝の死闘に

 同じく16日行われた奈良大会決勝は、4連覇を狙う天理と、春の選抜大会でベスト4に進出した御所実が対戦。31年連続のライバル対決は予想どおりの大熱戦になります。

 序盤、押し気味に試合を進めたのは天理。ハイパントからの攻撃を上手く使ってエリアを確保していくと前半8分、コンテストキックに競り勝った後タイミング良くパスを受けたCTB森本樫大選手が巧みなステップでディフェンスをかわして先制のトライ。ゴールも決めて7対0とリードします。

 一方、御所実もこの後反撃。前半こそ天理の固いディフェンスに得点を阻まれますが、後半9分には素早いパス回しからFB富田琉生選手が左隅に飛び込んでトライ。プレッシャーのかかる難しい角度からのコンバージョンキックも富田選手が自ら決めて、7対7の同点に追いつきます。

 その後は、まさに死闘。どちらも懸命にトライラインに迫りますが、お互いが積み上げてきた努力を彷彿させる粘り強いディフェンスで得点を許しませんでした。試合は7対7のままついにノーサイド。奈良県大会は16年ぶりの両校優勝で幕を閉じ、抽選の結果、御所実が4大会ぶり15回目の聖地への切符を手にしました。

地区大会決勝の結果

 2校が出場する福岡では、優勝候補の一角、東福岡が浮羽究真館をノートライに抑えて快勝。第2地区では、筑紫が修猷館を下して5大会ぶり7回目の出場を決めました。

 また、強豪対決となった長崎では、長崎北陽台が長崎北を無得点に抑えて、2大会連続23回目の出場権を手にしています。

 11月23日(日)には、茨城の茗溪学園・東洋大牛久の決勝戦が行われ、第105回全国高校ラグビーフットボール大会の各地区代表校56校が出揃います。


<11月15日(土)>
▼埼玉第1 昌平 36-22 熊谷
▼埼玉第2 慶應志木 21-19 川越東
▼愛知第1 中部大春日丘 110-5 西陵
▼愛知第2 名古屋 33-14 栄徳
▼岡山   倉敷 88-0 合同(岡山朝日・岡山一宮・玉島)
▼徳島   城東 41-0 つるぎ
▼山口   高川学園 71-19 萩商工
▼福岡第1 東福岡 80-3 浮羽究真館
▼福岡第2 筑紫 46-5 修猷館

<11月16日(日)>
▼神奈川第1 桐蔭学園 78-7 日大藤沢
▼神奈川第2 東海大相模 40-10 関東六浦
▼滋賀    光泉カトリック 87-0 八幡工業
▼奈良    御所実業 7-7 天理(抽選で御所実業が全国大会出場)
▼大阪第1  東海大大阪仰星 80-5 近畿大付属
▼大阪第2  常翔学園 52-7 関大北陽
▼大阪第3  大阪桐蔭 38-0 大阪朝鮮高
▼和歌山   近大和歌山 42-7 熊野
▼広島    尾道 45-14 崇徳
▼愛媛    松山聖陵 80-0 新田
▼高知    土佐塾 17-15 高知中央
▼長崎    長崎北陽台 12-0 長崎北
▼熊本    九州学院 33-21 熊本西