2023年12月に大阪府岸和田市で、飲酒運転により親子2人をはね死傷させたとして、危険運転致死傷の罪に問われていた男。1審・2審で懲役12年を言い渡されていましたが、最高裁へ上告しなかったため、判決が確定しました。
▼親子2人が死傷 死亡した母親は 全盲の息子に付き添っていた…
1審判決によりますと、男(31)は2023年12月、岸和田市の道路で乗用車を酒に酔った状態で運転。対向車線脇の路側帯に時速約56kmで突っ込んで、歩行者の親子2人をはね、母親(当時82)を死亡させたほか、全盲の息子(52)にも外傷性くも膜下出血などの重傷を負わせました。
白杖をついて歩いていた息子に母親が付き添い、2人でJR阪和線の駅に向かっていた際に事故は起きました。
▼1軒目ですでにビール8杯
大阪地裁堺支部での1審で明らかになった事実をまとめると、岩井被告は事故前日の夜、知人らとの忘年会に車で向かい、計4軒の飲食店で飲酒。1軒目ですでに、ジョッキで8杯ほどのビールを飲んでいたといいます。
そして翌朝、帰宅する際に今回の事故を起こしました。呼気検査からは、被告は事故当時、酒気帯び運転の基準(0.15mg/リットル)の4倍以上にあたる、呼気1リットル中0.69~0.85mgのアルコールを体に保有していたとみられるといいます。
▼「車を買ったばかりで、正直見せたいという気持ちがあった」運転代行業者の電話番号も登録せず…
1審で男は起訴内容を認め、被告人質問では、忘年会に車で向かった理由について、“車を知人に見せたかった”などと説明しました。
(1審の被告人質問)
(弁護人)「なぜ車で行ったんですか?」
(男)「家の掃除とか洗濯、家事が(出発ギリギリまで)あったというのと、車を買ったばかりで、正直見せたいという気持ちがあった」
また男は、当初は帰宅時に運転代行業者を呼ぶつもりだったといいます。
(1審の被告人質問)
(弁護人)「家を出る時は、代行を呼ぶつもりだったという理解で間違いないですか?」
(男)「はい」
(検察官)「シラフの時に代行を呼ぶつもりだったとしても、お酒を飲んだら気が大きくなりますよね?どうして代行を呼ぶと、自信が持てたんですか?」
(男)「普段からずっと、当たり前のように呼んでいたので」
しかし、男は運転代行業者の電話番号を、携帯電話に登録していませんでした。
(裁判官)「なぜ携帯電話に登録しないんですか?」
(男)「常に名刺を持ち歩いていたので、登録する必要性を感じませんでした」
(裁判官)「結局代行を呼ばなかった理由は、今も思い出せないんですか?」
(男)「はい」
▼1審・2審で懲役12年
大阪地裁堺支部(武田正裁判長)は去年9月の判決で、危険運転致死傷罪の成立を認定したうえで、「自宅を出た時から飲酒運転をする意図があったとは認められないが、安易に自動車で酒席に赴いた上、帰宅に際し、代行運転の依頼や他の交通手段の利用も容易だったのに、あえて車を運転した。同情の余地はない」「反省はいまだ不十分と言わざるをえない」として、男に懲役12年を言い渡しました。
この判決を不服として、男本人が大阪高裁に控訴していましたが、大阪高裁(村越一浩裁判長)は4月18日、「1審判決の量刑理由は相当で、判断を誤っているとは言えない」として、控訴を棄却しました。
▼最高裁に上告せず 懲役12年が確定
大阪高裁によりますと、期限までに男側・検察側のいずれからも上告はなく、男の懲役12年判決が確定したということです。