3回戦に突入した全国高校ラグビー大会。年が明けた1月1日には、ベスト8進出をかけて8試合が行われました。
第3グラウンドの第1試合、天理(奈良)と流経大柏(千葉)の対決は、両チームの勝利への執念がぶつかり合う予想どおりの大熱戦になります。
先制は流経大柏。前半14分、天理のパスが乱れたところを詰めていたSH三田村喜斗選手が、うまく足に引っかけて、そのまま一気にトライ。さらに後半6分、FW陣の力強い攻撃の連続から、最後はPR河内晟歩選手がトライ。ゴールも決めて12対0とリードをひろげます。FWを前面に圧力をかけ続ける流経大柏、鋭い堅守が持ち味の天理からの貴重な二つのトライで、試合の流れを引き寄せたかと思いました。
しかし、その直後、天理にビッグプレーが生まれます。NO8刘思遠選手が、三田村選手のキックをチャージ、こぼれたところを、FL内田旬選手が押さえてトライ。12対5とワンチャンスの差に追い上げます。それでも、流経大柏は慌てません。それまでと同様、FWで圧力をかけ続けると、19分には、三田村選手が強風の中PGに成功。15対5とリードを10点にひろげます。それまで2本のPGに失敗していた三田村選手、「ここは、絶対に決めて、もう一度チームを奮い立たせると思っていた。距離はあったが、すかさずショットを志願した」と心の強さが光りました。
《写真 流経大柏 三田村選手》
10点差となり残り時間10分。ここから天理の強烈な反撃が始まります。ハーフ団を入れ替えて、一段と攻撃のテンポを引き上げると、FWの選手たちも呼応。そして23分、敵陣ゴール前に攻め込むと、キャプテンの内田涼選手が、低い姿勢からタックルをもともせず、インゴールに飛び込んでそのままトライ。ゴールも決めて15対12と3点差に詰め寄ります。
ここからは、まさに執念と執念のぶつかり合い、息詰まる攻防が続きます。インジャリータイムも3分を過ぎた33分、天理は、敵陣ゴール前10メートールでラインアウトのチャンスをつくると、得意のモールの形を作って、そのまま一体となって一気にインゴールまで押し込みます。グラウンディングができていれば、大逆転のトライ。
しかし、「モールを一気に押し込まれて、やられたと思ったが、目の前に(天理の)FWの選手が来たので、こんなところで負けるわけにはいかないと思って、必死で体をボールとの間に入れた」と話した三田村選手。執念のディフェンスで、逆転のトライを許しませんでした。試合は、このままノーサイド。ノーシード同士の大熱戦は、流経大柏がぎりぎりのところで踏ん張って、ベスト8進出を果たしました。
第3グラウンドの第2試合では、試合時間残り1分の場面で、茗渓学園(茨城)のHO川村航平選手が、大分東明(大分)の二人のタックルをはねのけて、起死回生の逆転トライ。劇的な幕切れで茗渓学園が準々決勝進出を決めています。
《写真 中部大春日丘 福田主将》
第1グラウンドの第2試合、中部大春日丘(愛知)と国学院栃木(栃木)の試合も、最後の最後まで目が離せない大激戦となります。宮地真監督が「この試合をターゲットに準備をしてきた」と語った中部大春日丘。前半から終始ペースを握って終盤まで24対14とリードを奪います。しかし、ここから国学院栃木が驚異的な反撃、ロスタイムに突入した後半31分、この1年間磨き上げてきたFWとBKが一体となってボールを展開していくラグビーで5点差に詰め寄ります。そしてラスト1プレイ、ここからもミスなくボールをつなぎ続けて、5分以上、フェイズを重ねて攻め続けます。それでも、中部大春日丘は崩れませんでした。
キャプテンの福田大和選手が「(最後の場面は)苦しかったが、自分たちがやろうとしていることが冷静にできた。勝つために15人が体を張り続けることができた」と振り返った中部大春日丘。最後は、ジャッカルに成功して、熱戦に終止符を打ちました。中部大春日丘、チームとして目標にしてきたベスト4に向けて、まずは準々決勝進出です。
関西の強豪同士の対決となった、東海大大阪仰星(大阪)と報徳学園(兵庫)の対戦は、終始落ち着いて試合を進めた東海大大阪仰星が、粘る報徳学園を2点差で振り切って17対15で勝利。
《写真 石見智翠館 宮崎主将》
2回戦で、強豪・京都成章に競り勝って、大阪桐蔭(大阪)に挑んだ石見智翠館(島根)。圧倒的なフィジカルを誇る大阪桐蔭に対して、真っ向勝負を挑みます。前半17点のリードを許したものの、中盤には、1トライを返して食い下がります。しかし2回戦の激闘の影響もあってか、終盤に力尽きました。それでも、宮崎和史主将は「最後は、相手の動きも遅くなっているのが分かったが、それ以上にこちらの体が動かなかった。悔しい幕切れだったが、智翠館でラグビーができて、本当に楽しくて最高に幸せだった。ここまで支えくれた両親や周りの方々に感謝したい」と、涙をみせながらも最後は充実した表情で花園を後にしました。
そのほか、Aシード3校、桐蔭学園(神奈川)は光泉カトリック(滋賀)に86対0と大勝、佐賀工業(佐賀)は目黒学院(東京)に45対14、東福岡(福岡)は名護(沖縄)に59対0と危なげなくベスト8進出を決めています。
1月3日、今日行われる準々決勝の組み合わせは以下の通り。第1試合は、優勝候補桐蔭学園と東海大大阪仰星の対戦、ここ数年、東福岡とともに高校ラグビー界をリードしてきた両雄が激突します。
第2試合では、初めてのベスト4進出を狙う中部大春日丘がAシード佐賀工に挑みます。準決勝は1月5日(金)、準々決勝を勝ち上がった4校により、再度抽選が行われて対戦相手が決定します。
1月3日(準々決勝)
桐蔭学園(神奈川) 対 東海大大阪仰星(大阪)
中部大春日丘(愛知) 対 佐賀工(佐賀)
東福岡(福岡) 対 茗渓学園 (茨城)
流経大柏(千葉) 対 大阪桐蔭(大阪)
(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)