年末年始に東大阪市花園ラグビー場で行われる全国高校ラグビー大会。その花園を目指す各地での戦いが佳境を迎えています。11月11日(土)は、福岡・福島・群馬で決勝戦が行われました。

【福岡県】花園連覇を狙う東福岡は攻守にわたって力強さと巧みさを見せ勝利

 11日に行われた福岡県大会決勝には、全国大会連覇を狙う東福岡が登場。2年連続同じ顔合わせとなった筑紫と対戦しました。藤田雄一郎監督が「全国連覇を達成するにも、まずはここを突破しないといけない。1年で一番大事な試合」と言って送り出した東福岡の選手たち。立ち上がりは、伝統の「魂のラグビー」を掲げて果敢に飛び込んでくる筑紫の勢いに押されます。筑紫の強烈なタックルの前にボールを失うと、そのまま押し込まれてペナルティーを犯してしまいます。このチャンスに筑紫は、FB久保田創大選手がPGをきめて3点を先制します。しかし、キャプテンの高比良恭介選手をはじめ、数多くの高校日本代表候補の選手を有する東福岡は、ここから持ち味を発揮して反撃に転じます。筑紫の執拗なタックルに苦しみながらも1人1人が縦への強さを見せて確実にボールをつないでくと、前半7分、最後はウイングの西浦岳優選手がディフェンスのギャップをうまくついてトライ。5対3と逆転します。逆転して落ち着きを取り戻した東福岡。この後、効果的なキックを使ってうまくエリアを進めると、FW陣が力強さを見せつけて、次々とトライを重ねていきます。前半だけで5つのトライを奪って33対3と大きくリード。

 後半に入っても、東福岡の勢いは止まりません。スクラム、モールといったFW周辺のプレーで筑紫を圧倒し、トライにつなげていきます。終盤、筑紫も必死の反撃を試みますが、東福岡は昨年度のチーム同様、鍛え上げてきたディフェンスで筑紫に得点を許しません。1人1人が攻守にわたって力強さと巧みさを見せた東福岡。62対3、筑紫をノートライに抑えて、24大会連続34回目の花園出場を決めました。高比良主将が「また、この福岡に花園の大優勝旗を持って帰れるよう、この1か月間しっかり練習していく」と語った東福岡。8回目の優勝を目指して、聖地に乗り込みます。

【福島県】学法福島は3年ぶり3回目の花園へ

 11日に行われたそのほかの決勝戦。福島県大会では、FW陣の団結が持ち味の学法福島とBK陣のスピードある攻撃が自慢の磐城が対戦。前半から学法福島が得意のモールからの攻撃で磐城を圧倒します。前半4分にモールを押し込んだあと、CTB渡辺大和選手が先制トライを奪うと、その後もモールからの攻撃でトライを積み重ねていきます。この1年間、先輩からの助言に自分たちでも創意工夫を凝らして強化してきたモールを軸に、終始FW戦で優位に立った学法福島。2年前、同じ決勝で敗れた磐城に50対12で雪辱を果たし、見事3年ぶり3回目の花園への出場を決めました。

【群馬県】明和県央はライバルとの試合を制す

 3年連続の同じ顔合わせとなった群馬県大会の決勝では、明和県央がライバルの桐生第一を相手に攻守とも力強さを見せました。前半4分、ラインアウトからのモールをFW陣が一気に押し込んで先制のトライを奪うと、その後も、 丸山貞選手、関口敬人選手がランニングスキルを発揮してトライにつなげます。前半だけで24対0とリード。後半、桐生第一も反撃を試みますが、明和県央が今度は的確なタックルとカバーリングで桐生第一に得点を許しません。苦しい時間帯をしのいで、終了間際にも1トライを加えた明和県央が、31対0で桐生第一を下し、2年連続10回目の花園への切符を手にしました。

【山梨県】県大会17連覇中の相手に勝利した山梨学院

 12日も行われた地区大会の決勝戦では、アップセットが最も難しい競技といわれるラグビーで、厚い壁を破って山梨の山梨学院と大阪(第1地区)の関大北陽が悲願の初出場を決めました。大会17連覇中の日川と対戦した山梨学院。立ち上がりから体格で勝るFWを生かして優位に試合を進めます。前半5分、ウイングの矢野悠斗選手が先制トライ、16分にもヘンダーソン・リアム・ジョセフ選手がインゴールに飛び込んで前半で2つのトライを奪います。しかし日川もPGのチャンスを確実に決めて食い下がります。後半4分には、佐藤瑛斗選手がこの日3本目のPGに成功し、10対9と1点差に迫ります。直後の7分、再び山梨学院がトライを奪いますが、14分にはまたしても佐藤選手がPGに成功。15対12、ワンチャンスで勝ち負けが入れ替わる緊迫した場面が続きます。この緊迫した展開の中で勝負強さを見せたのは、山梨学院でした。20分、モールを押し込んで日川のゴールラインに迫ると、小俣颯舞選手がこの日2本目のトライ。ゴールも決め、22対12として日川の反撃ムードを断ち切りました。最後まで自分たちの強みを出し続けた山梨学院。ついに日川の壁を破って、うれしい花園初出場です。

【大阪府】関大北陽は大阪第1地区のAシード校として決勝戦に

 同じ12日、激戦区大阪で悲願の初出場を決めたのが関大北陽です。東海大大阪仰星、常翔学園、大阪桐蔭、大阪朝鮮高と全国大会でも優勝やベスト4進出の経験もある強豪校の壁に阻まれてきた関大北陽ですが、長年の強化が実って、今年度は春からチーム力が充実。大阪第1地区のAシード校として、同じく初出場を狙う大産大付を迎え撃ちました。鍛え上げてきたFWが自慢の関大北陽、前半は、大産大付の激しいプレッシャーに攻め込みながらもなかなか得点に結びつけられない展開。15分にようやくモールから先制トライを奪うと、19分にも平野聖明選手がトライ。10対0とリードします。しかし直後の21分、大産大付のセンター中西明輝選手のアングルをつけたランニングに、一発でディフェンスラインが崩されて10対7。わずか3点のリードで前半を折り返します。それでも、チームを率いる梶村真也監督が「今の3年生は3年連続で大阪大会の決勝戦を経験しているメンバー。自分たちに矢印を向けるという意味で、その経験は大きかった」と話したように、関大北陽の選手たちは落ち着いていました。後半に入ると、自分たちの強みである縦への推進力を生かしてどんどん仕掛けていきます。開始直後にSO羽根田陸選手のトライで突き放すと、その後も冷静な試合運びで確実に得点を追加していきます。後半だけで5つのトライを奪って、41対7。さすが大阪の代表校という強さを見せつける戦いぶりで、全国大会初出場を決めました。
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天理と御所実業は29年連続で激突 18・19日も各地区大会で決勝戦

 続々と代表校が決定している全国高校ラグビー大会。11月18日(土)には、去年、ノーサイド直前の逆転ドラマが生まれた報徳学園と関西学院が対決する兵庫県大会をはじめ、埼玉、愛知、岡山、鹿児島で決勝戦が、19日(日)には、春の選抜大会王者・桐蔭学園が去年の地区大会決勝で敗れた東海大相模と対戦する神奈川や、天理と御所実業が29年連続で激突する奈良、そのほか広島、山口、徳島、熊本で花園への出場をかけた熱い戦いが繰り広げられます。


【高校ラグビー各地区大会決勝】
・11月18日(土)
〈埼玉〉 川越東 対 昌平
〈愛知〉 中部大春日丘 対 名古屋
〈兵庫〉 関西学院 対 報徳学園
〈岡山〉 倉敷 対 玉島
〈鹿児島〉 鹿児島実業 対 鹿児島工業

・11月19日(日)
〈神奈川〉 桐蔭学園 対 東海大相模
〈奈良〉 御所実業 対 天理
〈広島〉 尾道 対 崇徳
〈山口〉 高川学園 対 大津緑洋
〈徳島〉 城東 対 つるぎ
〈熊本〉 九州学院 対 熊本工業


(MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘)