この夏、兵庫の地で琉球の風を吹かせる――。神戸国際大付の注目の2年生ピッチャー・津嘉山憲志郎。生まれも育ちも沖縄県。中学時代に県内外約20の強豪校から誘いを受けた逸材だ。その中でも神戸国際大付を選ぶ決め手となったのが、甲子園で生観戦した2021年センバツの開幕戦。神戸国際大付が北海(北海道)に逆転でサヨナラ勝ちをおさめた一戦に胸を打たれ、沖縄から海を渡り名門の門を叩いた。

 鳴り物入りで入学した右腕は、すぐに頭角を現した。昨夏の兵庫大会では、1年生ながら7試合に登板。社との決勝戦では2-2の6回からマウンドにあがり、延長12回までノーヒットの好投。その後、タイブレークに突入し延長14回で力尽きたが、1年生とは思えない堂々たるピッチングを魅せた。

 夏にあと一歩届かなった甲子園。2度目のチャンスとなったのが、昨秋の近畿大会。勝てばセンバツ出場が大きく近づく大阪桐蔭との大事な一戦に先発を任された。しかし、津嘉山は初回にいきなりピンチを迎える。2アウト満塁で大阪桐蔭の6番・村本勇海に甘く入った球をライトスタンドに運ばれ4失点。これが決勝点となった。「自分の体をしっかり調整できずに試合に臨んでしまった」秋の悔しさを胸に、冬場は下半身を重点的に鍛えながら、秋に102kgあった体重を91kgまで減らした。体が動きやすくなり、ストレートのコントロールも向上した。

 一冬越えて迎えた春の県大会で、すぐその成果が現れた。準決勝で対戦した報徳学園はこの春のセンバツで準優勝した強豪。先発した津嘉山は、全国トップレベルの打線相手に9回を4安打・自責点1の好投。チームは延長10回の末、サヨナラで敗れたが、「そこまで差はないと感じた。夏はレベルアップして圧倒的な力で勝ちたい」と確かな手ごたえをつかんだ。
tsukayama02.jpg
 7月13日に夏の県大会初戦を迎える神戸国際大付。兵庫は報徳学園を筆頭に、センバツに出場した社やプロ注目右腕・坂井陽翔擁する滝川第二など強豪ひしめく全国屈指の激戦区。熾烈な戦いに臨むなかで支えとなる言葉がある。

『今日もチバルヨー!!ピンチなんてなんくるないさ~(今日も頑張るよー!!ピンチなんてなんとかなる)』

 高校進学前、中学時代にバッテリーを組んでいたチームメイトが帽子のツバに書いてくれた沖縄方言。「夏の大会もピンチのときには、この言葉を見ながら、ゆっくり自分のペースでいこうと思う」と、沖縄仕込みのおっとりとした雰囲気で話す津嘉山。だが、胸の内は熱き闘志を燃やす。「今はとにかくワクワクしている。兵庫県では圧倒的な力で勝ち進んで“やっぱり夏は国際だな”って言われるような夏にしたい」甲子園切符をかけた3度目の挑戦。なんくるないさーの精神で兵庫の頂点を狙う。

◎津嘉山憲志郎(つかやま・けんしろう)/ 神戸国際大付・2年
沖縄県沖縄市出身 178cm・91kg 右投右打 MAX148キロ
球種:ストレート、カーブ、スライダー、カットボール、ツーシーム、チェンジアップ
好きな食べ物:“お母さんが作る”沖縄そばとゴーヤーチャンプルー
「年末年始の帰省の際に、1年間のご褒美として食べる沖縄そばとゴーヤーチャンプルーが1番おいしい。そのために1年間頑張れます!」


(MBSスポーツ局 上原桐子)