オリックス・バファローズは、投打がっちりかみ合った内容で千葉ロッテに完勝。首位攻防の2連戦を、前日のサヨナラ勝ちに続く、勢いに乗る勝利で飾りました。「彼には、勝ち負けどうこうより、まずはいいピッチングをしてほしい。」オリックスの中島聡監督がこう言って、大事な試合の先発マウンドに送り込んだのは、背番号12、弱冠20歳の山下舜平大投手。序盤は制球が定まらず苦しいピッチング。立ち上がりの1回、いきなり1アウト満塁のピンチを背負います。

力でねじ伏せ カーブでほんろう

それでも動じないのが、さすがに大器。ピンチになると、思い切って力強い速球を投げ込んでいきます。相手バッターが待ち構えているところ、その予測を上回る190センチの長身から投げ下ろす150キロ台後半のストレート。まさに力でねじ伏せ、ピンチを逃れます。

2回も、ツーアウト1塁2塁とランナーを背負いますが、キャッチャー森友哉選手が好判断。セカンドランナーが飛び出したところを、見逃さず送球。堅い守備で試合の流れを渡しません。

試合が進むにつれ、修正力を見せていくのも一流投手の証。山下投手、3回からは速球に加えて、もう一つの武器、大きく変化する120キロ台のカーブを軸に、ピッチングを立て直していきます。3回、4回は1本のヒットも許しません。

 しかし5回、再び2アウト1塁、2塁のピンチを招き、迎えるバッターは千葉ロッテの4番・山口航輝選手。追い込んでからの変化球が甘く入りますが、山口選手のタイミングがわずかにずれて、レフト後方への大きなフライ。威力のあるストレートの残像が、わずかに山口選手のタイミングを狂わせました。

「しんどい場面ばかりだったが、0点で迎えられた」96球無失点

 その裏5回、山下投手の粘投に打線が応えます。わずか1安打に抑えられていたロッテ先発、小島和哉投手に対し頓宮裕真選手、杉本裕太郎選手の連続ヒットで、ノーアウト2塁3塁のチャンスをつくると、7番に入った、マーウィン・ゴンザレス選手が、初球の変化球に見事に反応します。

 「ストレートを待っていたが、抜けたフォークが真ん中にきたので、しっかりと打つことができた」と振り返ったレフト前へのタイムーヒット。3連打で、2点を先制します。

2点のリードをもらった山下投手は、一段とピッチングの迫力が増し、先頭の福田秀平選手から、この試合5つ目の三振を奪います。ロッテも、足を使って攻略しようとしますが、バッテリーが落ち着いた対応。最後は、ディレードスティールに山下投手が冷静に対応してスリーアウト。

「とにかく、ひとりひとり全力で迎えることだけを考えていた。しんどい場面ばかりだったが、0点で迎えられたのは、よかった」と語った山下舜平大投手。6回96球、5安打5奪三振、無失点の内容でマウンドを降りました。

それでもまだ2点差。勝利への執念を見せるロッテは7回から登板した阿部翔太投手を攻めてツーアウト2塁。ここで、2番・友杉篤輝選手が三遊間へ鋭い打球を放ち、サードの宗佑磨選手が飛び込んで好捕、間髪入れず一塁へ送球します。判定は…セーフ。

するとオリックス中島監督がすかさずリクエスト、リプレイ検証を要求しました。検証の結果、判定が翻ってアウト。立ち上がって満足な表情を見せた中島監督、ベンチのムードが一気に盛り上がります。

「190センチ104キロ ラオウが激走」

 直後の7回裏、先頭の森選手がピンチを逃れたあとの初球を狙った積極的なバッティング。ライトフェンス直撃のツーベースヒットで、球場の空気を一気にオリックスに引き寄せます。続く5番、頓宮選手のショートゴロを、ショートの友杉選手がファンブル。ノーアウト1塁3塁の舞台が整います。

打席には6番杉本裕太郎選手。粘って6球目を、レフトフェンス直撃のあわやスタンドインかという大きな当たり。レフトとセンターが、ボールの処理をもたつく間に、なんと杉本選手が一気にホームイン。

190センチ104キロ 巨体の「ラオウ」が走る、走る!「一周回って、しんどかった。自分(自身)は、足が速いと思っているので・・」と振り返った、激走のラン二ングホームランで、5対0と勝負の行方を決定づけ、終わってみれば、10対0で快勝しました。

絶対的エースの山本由伸投手。前日、佐々木朗希投手に投げ勝った宮城大弥投手に加えて、この日ハーラートップの7勝目をあげた山下舜平大投手がいる、安定した先発陣。8回、9回には、今シーズン出遅れていた、ワゲスパック投手、宇田川優希投手の救援陣が復調ぶりを示したオリックス。首位を堅持して、この後の快進撃を予感させる内容で、連勝を飾りました。

MBSスポーツ解説委員  宮前 徳弘