6月7日に行われた天皇杯サッカーの2回戦。セレッソ大阪の10代の選手たちが、まばゆいばかりの輝きを放った。

 この日の相手は、兵庫県の予選を勝ち抜いてきたCento Cuore HARIMA。「天皇杯の2回戦は、(J1のチームにとって)初戦ということもあり、波乱が起きやすい。相手は、関西学院大学や実力のあるチームを破ってこの舞台に進んできたチーム。リスペクトしたうえで、しっかりと準備して臨んだ」と語ったセレッソ大阪の小菊昭雄監督。自信をもって送り込んだメンバーに、FW・北野颯太選手(18)、中盤の攻撃的な位置に阪田澪哉選手(19)、右サイドバックのポジションに石渡ネルソン選手(18)、3人の10代の選手が先発で名を連ねた。

北野選手「世界で戦って、何もかも足りないことを痛感」

 その選手たちが、指揮官の期待に応えていく。ジャイアントキリングを狙って試合開始から激しくボールを奪いに来る相手のプレッシャーを落ち着いていなすと、前半7分、原川力選手の精度の高いCKに北野選手がニアーで合わせて先制のゴール。狙いどおりに、セットプレーのチャンスをものにして試合の流れを引き寄せる。

 北野選手は先日、グループリーグで敗退したU-20のワールドカップアルゼンチン大会から帰国したばかり。「世界で戦って、フィジカルもクイックネスも、何もかも足りないことを痛感した。このままでは、自分はダメになる。この試合が最後のチャンス。覚悟をもってこの試合に臨んだ」と語った北野選手。まずは、ゴールという結果で存在感を示した。

石渡選手「やっとめぐってきたチャンス。絶対に結果を残そうと」

 前半こそ、HARIMAの粘り強い戦いぶりに追加点を奪えなかったセレッソだが、後半、相手のプレッシャーが少し緩んでくると、一気に点差を広げていく。その勢いを呼び込んだのも、10代の若手選手。53分、またしても原川選手のCKから、今度はファーの位置にうまく入り込んだ阪田選手が、頭で合わせて2対0。さらに2分後、再び原川選手がゴール前に送り込んだボールに若き才能が呼応する。右サイドバックの位置から鋭いスピード飛び込んできた石渡選手が鮮やかな3点目。

 石渡選手は、この日が公式戦で初めてのスターティングメンバー。「本来やっているポジション(ボランチ)とは違ったが、やっとめぐってきたチャンス。絶対に結果を残そうと思っていた」と語ったように、ゲームの中での動きはもちろん、ゴールという結果でアピールに成功。ゴール前に陣取ったサポーターの目の前で期待に応えた。

 そして74分、ゴール前の混戦から北野選手が豪快に右足でけりこんで4点目。小菊監督が「(颯太は)練習から非常に高い意識をもって取り組んできた。全体練習が終わった後も黙々とシュート練習に取り組む姿があった。近いうちに必ず結果を出すと思っていた」と話したエースのゴールで試合を決定づけたセレッソ。この後さらに1点を追加し、難しいといわれる天皇杯の2回戦を5対0で快勝。3回戦進出を果たした。

阪田選手「結果を残せたのはよかったが、もっともっと成長が必要」

 セレッソの選手達は、若い世代から数字を残すこと、結果を残すことの大切さを徹底的に教え込まれる。プロになった以上、結果がすべて。数字を残したうえで出色のパーフォンスを発揮するのがプロの世界だと十分認識しているのだ。だからこそ、3人とも浮ついたところは一切ない。北野選手は「結果を残せたのは、ほっとしているが、これぐらいはできて当たり前。危機感しかない」と話し、阪田選手も「(プロ初ゴールという)結果を残せたのはよかったが、試合全体としては出来は今一つだった。もっともっと成長が必要」。石渡選手も「この試合は初ゴールも上げることができて自信にはなった。ただ、全然満足していない。ここから継続して頑張っていきたい」と、三者三様に自らの課題を口にした。

 この姿勢があるからからこそ、試合後の小菊監督の言葉が響いてくる。「きょう結果を残してくれた選手も含めて、チーム内の競争はますます激しくなる。週末の神戸戦に向けても勢いをつけてくれる勝利だった。セレッソの未来は明るいことを証明してくれた」

 クラブに培われた、結果にこだわり、成長を加速する姿勢。激しい競争の中で、全員が高い意識をもって、集中力の高いトレーニング、ゲームができているセレッソ大阪。週末に待ち受けているヴィッセル神戸との上位対決がますます楽しみになってきた。


MBSスポーツ解説委員 宮前徳弘