第95回センバツ高校野球大会。3月31日に行われた準決勝の戦いを振り返ります。

 第1試合は、秋の関東王者で1回戦から危なげなく勝ち進んできた山梨学院(山梨)と、大阪桐蔭に敗れた神宮大会決勝を除いて練習試合も含めてすべての試合を勝利してきた広陵(広島)の対戦。
 
 先制したのは、広陵。1回裏、先頭の田上夏衣選手がライトへのツーベースヒットで出塁すると、1アウト3塁1塁のチャンスに、4番の小林隼翔選手がきっちりとライトへの犠牲フライ。最初のチャンスを得点に結びつけます。
 
 一方の山梨学院も直後の2回表、先頭の高橋海翔選手がセンター前へのヒットで出塁すると、1アウト3塁とチャンスを広げて、キャプテンの進藤天選手がセンターへの犠牲フライ。こちらも最初のチャンスを確実に得点に結びつけて、1対1の同点に追いつきます。
 
 その後は、山梨学院・林謙吾投手、広陵・高尾響投手の両エースが好投。がっぷり四つに組んだ白熱の展開となります。林投手は、ランナーを背負いながら要所、要所で粘り強いピッチング。3回には、1アウト3塁1塁のピンチに、今大会注目のスラッガー3番真鍋慧選手、4番小林選手から連続奪三振。その後も毎回のようにスコアリングポジションにランナーを背負いますが、抜群の集中力で得点を許しません。一方の高尾投手は力強いピッチング。140キロを超えるストレートと、低めにコントロールされた変化球で、今大会好調の山梨学院打線を抑えていきます。
 
 試合が動きだしたのは終盤の7回。山梨学院は、2アウトから進藤選手がツーベースで出塁。ここでバッターは、7番の大森燦選手。1ボール2ストライクからの4球目をとらえた打球はセンター前に抜けていきます。勝ち越しかと思いましたが、センターの田上選手が好返球。きわどいタイミングも、間一髪ホームタッチアウト。ぎりぎりのところで広陵が勝ち越しを許しません。

 逆に広陵は、8回裏、2アウト1塁2塁のチャンスをつくり、7番の松下水音選手。カウント3ボール2ストライクからの6球目、自信をもって見送りましたが、判定はストライク。絶好のチャンスをものにできません。

 試合は、1対1のまま9回へ。山梨学院は、先頭の星野泰輝選手が粘って6球目をレフト前へ。1アウト2塁のチャンスを作って、4番の高橋海翔選手につなぎます。マウンド上の高尾投手と高橋選手の息詰まる攻防。1ボール2ストライクと追い込んだ高尾投手は、渾身のストレートを投げ込みます。しかし、わずかにはずれて、2ボール2ストライク。続く7球目、高橋選手は低めの変化球をバットの先で上手く拾ってセンター前へ。セカンドランナーが戻って2対1。山梨学院がついに勝ち越します。さらに、続く佐仲大輝選手の当たりはライト線へ。ライトの金山涼矢選手も懸命に飛び込みますが、あと一歩及ばず、貴重なライトへのタイムリースリーベースヒットになります。さらに、気落ちした高尾投手から進藤選手がレフトオーバーのタイムリーツーベースヒット。結局この回、打者一巡の猛攻で一挙5点を奪った山梨学院が6対1で逆転勝ち。山梨県勢として春・夏を通じて初めての決勝進出を果たしました。

 続く第2試合は、優勝候補、史上初めての春2回目の連覇を狙う大阪桐蔭(大阪)と、2試合連続のサヨナラ勝ちで勢いにのる報徳学園(兵庫画)の対戦。この試合も終盤まで結末のわからない展開となります。

 先にペースをつかんだのは、大阪桐蔭。3回表、報徳の先発・盛田智矢投手を攻めて2アウト2塁3塁のチャンスを作ると、3番の徳丸快晴選手がレフト前へタイムリーヒット。さらにチャンスを広げると、報徳の2人目、間木歩投手から、長澤元選手、村本勇海選手のタイムリーなどで一挙5点、大きくリードを奪います。

 しかし、報徳もすぐさま反撃、その裏、大阪桐蔭の先発・南恒誠投手から2点を返して、試合の流れを引き戻します。さらに、4回以降は間木投手が好投。テンポのいい投球で大阪桐蔭に追加点を許しません。

 そして7回、ここで大阪桐蔭に手痛いミスが出ます。先頭の辻田選手の当たりをショートが悪送球し、内野安打にしてしまいます。さらに6番の西村大和選手にヒットを許し1塁2塁とされると、今度は南投手がワイルドピッチ。ノーアウト2塁3塁。大声援を背に、畳みかけるように仕掛けてくる報徳の前に、あっという間にピンチを広げられてしまいます。ここで7番の林純司選手がレフトへの2点タイムリーツーベース。これで5対4と1点差。こうなると報徳の勢いは止まりません。続く竹内颯平選手にはセーフティーバンドを決められて、なおもノーアウト1塁3塁。ここで大阪桐蔭はたまらず大黒柱のエース・前田悠伍投手を投入しますが、勢いは止まりません。報徳は、代打の宮本青空選手が初球をたたいて、レフト前へ。ついに5対5の同点に追いつきます。

 この後のピンチは、何とかしのいだ前田投手。しかし8回、球場全体を味方につけて迫力をます報徳の攻撃が、前田投手を飲み込んでいきます。1アウト1塁のチャンスに、4番の石野蓮授選手。ヒットエンドランのサインに迷わず振り抜いた打球は「快心の一撃。芯でとらえた感触だった」と語ったタイムリースリーベースヒット。報徳が主砲の一打でついに逆転。この後、6番の西村選手にもタイムリーが飛び出し、7対5と試合をひっくり返します。

 そして9回、報徳3人目の今朝丸裕喜投手が落ち着いた投球で大阪桐蔭を0に抑え、ゲームセット。去年、近畿大会の決勝で敗れた悔しさをばねに成長してきた報徳学園が見事にリベンジを果たし、21年ぶり3回目の決勝進出です。

 山梨県勢初の甲子園制覇か、あるいは、報徳学園3度目のセンバツ優勝か。決勝戦は、4月1日午後0時30分プレイボールです。