3月29日に10日目を迎えた、第95回記念選抜高校野球大会、準々決勝第4試合。宮城の仙台育英と兵庫の報徳学園の対戦は、まさか、まさかの連続、“何が起こるかわからない”ゲームとなりました。昨年の夏の全国制覇のメンバーが多く残る宮城の仙台育英と、強豪校を次々と倒して勢いに乗る兵庫の報徳学園の対戦。試合前の予想通り、1点を争う白熱の展開となります。

先に流れをつかんだのは、報徳、1回裏ツーアウト満塁から6番・西村大和選手のタイムリーで2点を先制すると、2回にも1点を追加、3点のリードを奪います。

一方の仙台育英、報徳の先発・間木歩投手の緩急をつけたピッチングになかなか得点を奪うことが出来ません。それでも2回途中から登板したエース高橋煌稀投手、湯田統真投手、田中優飛投手とつないで報徳の追加点を防ぐと、粘り強く反撃の機会をうかがいます。6回に1点を返し、終盤には7回からマウンドに上がった報徳のエース盛田智矢投手の制球の乱れをついてチャンスを作ります。

しかし8回途中から登板した報徳の3人目・今朝丸裕喜投手の前にチャンスをものにできず、9回もツーアウトランナーなし。ここから信じられないドラマが起こります。

2番・橋本航河選手が3ボール2ストライクからのきわどいボールを選んで一塁に出塁すると、代打・永田一心選手の当たりはセンターへの浅いフライ。“これで万事休す”と思われましたが、この当たりをセンターの岩本聖冬生選手がまさかの落球。一塁ランナーが帰って3対2、なおもツーアウト2塁のチャンスが続きます。このチャンスにバッターボックスには4番の斎藤陽選手。1ボールからの2球目をレフトへのタイムリーヒット。仙台育英、王者の意地をみせて土壇場で同点に追いつきます。

試合はそのまま今大会3回目のタイブレークへ。10回表、仙台育英は1アウト2塁3塁のチャンスに6番・濱田大輔選手がライト前へのタイムリーヒット、4対3と逆転。この試合初めてリードを奪います。しかし、なおも続くピンチには今朝丸投手が渾身の投球で連続奪三振。最少失点でその裏の報徳の反撃につなげます。

その裏の報徳、ノーアウト1塁2塁からのタイブレーク。ここでも、またしても、まさかのプレーが。先頭の7番・竹内颯平選手は3塁前への送りバント。このバントを処理したのが途中からサードに入った登藤海優史選手。ボールが手について、うまくリリースできません。まさかの悪送球となって、2塁ランナーが一気に生還、これで4対4の同点。なおも、ノーアウト1塁3塁。仙台育英にとっては1点でも許せばサヨナラ負け。絶体絶命のピンチが訪れます。

しかし、ここから田中優飛投手がさすが仙台育英投手陣というピッチングで粘ります。続くバッターをサードゴロに打ち取ると、1アウト満塁とピンチが拡がった後も、リベンジに燃える1番の岩本選手から三振を奪って、2アウト満塁までこぎつけます。ここでバッターは2番の山増達也選手。「絶対打ってやる」と強い気持ちで入ったという打席は、2ボール2ストライクからの5球目をとらえて、サードの頭上を超えるレフトへのサヨナラタイムリーヒット。報徳学園が「大声援が後押ししてくれた」という一打で劇的な試合に終止符を打ちました。

昨年の夏、決勝戦で仙台育英が優勝するシーンを眼に焼き付けていたという報徳学園の選手たち。「憧れの相手に勝つ」という目標を叶えて、大阪桐蔭の待つ準決勝進出です。