17週連続の値上がりで、過去最高値を更新しているスーパーでのコメの平均販売価格。これまでに3回、備蓄米が放出されましたが、小売店に届いた量は少ないのが現状です。なぜ備蓄米の流通が滞っている?いつ消費者の手元に届く?流通経済研究所・折笠俊輔主席研究員の見解も含めてまとめました。
「備蓄米」小売店に届いたのは全体の1.4%
5月9日現在、備蓄米の入札条件は次の通り。今後この条件が緩和されるかもしれないということです。
(1)「年間の仕入れ量が5000t以上の集荷業者」
(2)「放出したコメと同量を1年以内に政府が買い戻す」
この備蓄米は一体どこにあるのでしょうか。農水省のデータ(4月13日までの状況)によりますと、これまでに3回、入札・放出が行われました。初回が14万t(JAが9割落札)、2回目が7万t(JAが9割落札)、3回目が10万tです。この備蓄米は「JAなどの集荷業者」→「卸売業者」→「小売店」というルートで流通しますが、最後の「小売店」にはわずか3018t、全体の1.4%しか届いていないということです。
“契約”に時間がかかっている?
なぜ備蓄米は出回らないのか…。これまで大規模災害時に2度放出されたことがある備蓄米ですが、流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員によりますと、「“流通円滑化”による放出は今回が初めてで、契約に2~3週間かかっていると思われる」ということです。この契約は、『政府と集荷業者(JAなど)』『集荷業者と卸売業者』『卸売業者とスーパーなど』の間でそれぞれ交わされるため、最大でも2か月近くかかる計算になるとしています。また、折笠氏は「従来のコメの流通+備蓄米放出で流通がパンクしている」とみていて、「卸売業者の精米・袋詰めなどにも時間がかかる」と言います。
ただ、折笠氏は「現状のシステムの中では、今の流通方法が一番早い」と指摘。日本に数百ある卸売業者に、政府から直接流すと「さばけない」そうです。また、精米や袋詰めは卸売業者が行っているため、小売店では対応が難しいのではないか、という見解です。
消費者の手元には「5月中旬~下旬ごろ」届く?
では、いつ備蓄米が私たちの元に届くのでしょうか。折笠氏によりますと、「どんなに頑張っても2か月ほどかかる」と指摘。「1回目の入札分(3月10日~12日)14万tは5月中旬~下旬ごろではないか」ということです。
こうした中、政府が備蓄米の入札条件緩和を検討か、という話が出ています。条件緩和のメリット・デメリットは次の通り。
▼メリット:扱える業者が増え、消費者の手元に行くまでが早くなる
▼デメリット:入札業者が増えると、入札価格が上がる可能性も
折笠氏は「入札緩和は流通の活性化になるが、コメ価格はすぐには下がらないのでは」と見ています。今後、政府が備蓄米の入札条件緩和を検討するかどうか、注目されます。