4月13日に開催する大阪・関西万博。そもそも万博はなんのために開かれるのでしょうか?かつては各国が国力・技術力を競い合う場で、あのディズニーランドも万博に由来する部分があるようです。

 開幕直前、今回の万博で見るべきポイントはどこにある?万博に詳しい大阪国際大学・五月女賢司准教授、関西大学・岡田朋之教授への見解を交え解説します。

国力アピールで始まった万博 金・銀・銅の格付けも万博発祥!?

 約170年の歴史がある万博。1851年にロンドンではじまり、ガラス張りのクリスタル・パレスという建物や蒸気機関車を発明したことを世界に知らしめました。

 フランスではそれより前に万博のようなものが始まっていましたが、イギリスは参加させてもらえず、その後、ロンドンで参加国を絞らずオープンで行ったという経緯があります。

 万博では、“未来では日常”となるものが登場していきます。1862年のロンドン万博では洗濯機の原型やパノラマレンズと三脚カメラが登場。1893年のシカゴ万博では観覧車の原型が展示されました。1876年のフィラデルフィア万博では水圧式エレベーター、1900年のパリ万博では電話機が発表されています。

 実は、オリンピックなどでの金メダル・銀メダル・銅メダルというランク付けも万博で始まっていて、エルメス、ルイ・ヴィトン、バカラなどのブランド品の格付けに使われました。

ディズニーの人気アトラクションも実は万博のパビリオンだった

 さまざまなものが登場した万博。開催の狙いとして4つが挙げられます。

 1つ目の目的は、テレビやネットがない時代の“発表会”として、貿易のきっかけ作りのために自国の技術力を売ることです。1873年のウィーン万博に日本が参加したときには全国の工芸品を集めて展示を行いました。
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 2つ目は外交のため。渋沢栄一が参加した1867年のパリ万博は、幕府の使節団が戊辰戦争に備えフランスから資金提供を受ける目的で参加しました。しかし、この時は薩摩藩や佐賀藩も参加し、幕府側は結局資金提供を受けることはできませんした。

 負の側面として、1958年のブリュッセル万博までは「人間展示」というものもありました。例えば、ベルギーの植民地支配を正当化するため、当時支配していたコンゴの村の一部を再現し住民ごと展示していました。
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 3つ目の目的は開催国の街の発展。1889年のパリ万博では、今やパリのシンボルとなっているエッフェル塔を建設。1970年の大阪万博では、千里ニュータウン、大阪モノレール、北大阪急行、中央環状線などが開発されました。

 商業主義が台頭した1900年代半ばからは、ビジネスの目的も加わります。1970年大阪万博では企業パビリオンが22館登場(2025年大阪・関西万博は13館)。

 ちなみにディズニーランドも万博と深い関わりがあります。米・フロリダにあるディズニーワールドにはいろいろなテーマパークが集まっていて、その一つ「エプコット(センター)」は“常設の万博”と呼ばれるくらい世界各国のパビリオンがあり、いつでも万博を楽しめるコンセプトになっています。

 ディズニーの人気アトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」も1964年に非公認で行われたニューヨーク万博のパビリオンを移設したものです。
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 また、1970年の大阪万博では、アメリカ館ではアポロ12号が持ち帰った月の石が展示されましたが、同じように盛り上がりを見せたのがソ連館の宇宙船ソユーズの展示でした。冷戦時代に宇宙技術を万博でも牽制しあっていたのです。

空白期間を経てテーマ性を持った万博 開催国の本音も見え隠れ

 さまざまな目的で開催された万博ですが、大成功をおさめた1970年大阪万博の後、実は1992年のセビリア万博まで22年間開催されませんでした。その背景には、1970年代からカラーテレビが普及したことにより、万博よりオリンピックが人気になったことが挙げられます。

 その後、1994年の博覧会国際事務局の決議で「すべての万博はテーマ性をもって地球規模の人類的課題を解決」を掲げ大きな方針転換を実施。この決議を初めて実践した万博が2005年の愛・地球博。これ以降の万博では開催のテーマが設定されています。
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 ■2005年 愛・地球博 燃料電池・太陽光発電を活用した循環型社会など
 ■2010年 上海万博 都市と農村のバランスのとれた発展など  
 ■2015年 ミラノ万博 食糧問題、人口増加など
 ■2021年 ドバイ万博 持続可能性など

 その一方で、専門家によりますと、テーマとは“別の狙い”もあり、開催国の本音が見え隠れしているといいます。
 
 ■2010年 上海万博 “発展した中国”のアピール  
 ■2015年 ミラノ万博 ほぼすべてのパビリオンで「食」をPR
 ■2021年 ドバイ万博 ビジネスのハブ(経由地)に
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 今回の大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ですが、関西大学・岡田朋之教授は、開催後どうしたいのか“ホンネ”が見えてこないと指摘しています。2021年に万博が行われたドバイは会場の80%を残して副都心にしていますが、大阪・関西万博のその後をどうするかが見えてこない点は課題だとしたうえで、負の遺産にならないようしないといけないと言及しています。

過去に金賞をとった国のパビリオンは大阪・関西万博でも見どころ?

 大阪・関西万博の見どころを専門家に聞きました。

 万博をきっかけに始まった金・銀・銅のランク付けは1958年のブリュッセル万博で廃止になりましたが、2005年の愛・地球博でパビリオンの評価に対して復活しています。過去の万博で金賞を取っている国のパビリオンは見どころのヒントになるのではないでしょうか。

 「展示デザイン」「テーマ」「建築」の3部門で、万博が決めたパビリオンの金は以下の通り。

 【2015年 ミラノ万博】
 展示デザイン:日本
 テーマ:ドイツ
 建築:フランス

 【2021年 ドバイ万博】
 展示デザイン:日本
 テーマ:ドイツ
 建築:サウジアラビア

 万博の目的の変化や歴史を知った上で、13日(日)に開幕する大阪・関西万博を楽しんでみてはどうでしょうか。