新年度を迎え、食料品を中心に物価高の影響が強まっています。4月4日に発表された2月の『家計調査』によると、『食料』への支出減少が顕著で、節約志向が続いているとみられます。

 そんな今、注目を集めているのが「プライベートブランド(PB)」。スーパーなどが自社で開発・販売している商品で、通常より安く購入できるものが多いということですが…その安さの秘密とは?専門家が推す“今こそ買うべきPB商品”は?経営評論家の坂口孝則氏、フードコンサルタントの池田恵里氏への取材内容などをまとめました。

PB商品を買うワケ第1位は「安さ」

 プライベートブランド(PB)とは、小売業者(コンビニ・スーパーなど)が企画しメーカーと一緒に作る自社専用の商品です(※メーカーが独自開発し小売店で販売する商品=ナショナルブランド(NB))。

 <スーパー・コンビニのPB>
 ▼イオン:トップバリュなど
 ▼セブン&アイHD:セブンプレミアムなど
 ▼西友:みなさまのお墨付き
 ▼ライフ:ライフプレミアムなど

 PB商品を扱うスーパーは全体の81.9%(スーパーマーケット年次統計調査による)となっていて、モニターに好評だったものを商品化した西友の「みなさまのお墨付き」や、オーガニック食品などを扱うライフの「BIO-RAL」など、さまざまなブランドが展開されています。

 日本国内でPBがいつ始まったのか、経営評論家の坂口孝則氏によると「諸説ある」そうですが、1960年代にダイエーがみかんなどを販売したのが始まりと言われているようです。ダイエーはその後、日用品を低価格で販売する「セービング」を展開しました。

 そして、実はあの「無印良品」も、元々は西友のPBとして1980年に誕生したのです(今は西友と別会社)。家庭用品9品目・食品31品目からスタートしましたが、包装を簡素化することで低コストを実現した点が画期的でした。
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 消費者がPB商品を買う理由は、1位「価格が安いから」72.2%、2位「メーカー商品に劣らない品質だから」26.9%、3位「おいしいから」25.3%(アイブリッジ「PB商品についての調査」より)。やはり価格の安さに魅力を感じている人が多いようです。

「包装を簡素に」「大量発注」安さの秘密を探る

 なぜPBブランドは低価格を実現できるのでしょうか?“安さ”にこだわるセブン&アイHDの「セブン・ザ・プライス」の新商品を例に取ると…

 <セブン・ザ・プライスの新商品>
 ▼「3種の割れせんべい」90g:105円(税込み)
 ▼「旨辛麺」:105円(税込み)
 ▼「だしの素」750g:645円(税込み)

 「3種の割れせんべい」は、製造過程における“割れてしまったせんべい”の選別工程を省略し、製造効率を向上させているそうです。また、若い世代に人気の即席麺「旨辛麺」は、あえて具材を最小限にすることで105円(税込み)という低価格を実現。さらに、粉末タイプの「だしの素」は包装デザインをシンプルにするという工夫がなされています。

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 さらに、メーカーから小売へ安く販売できる点にも秘密があるようです。例えば、大量発注することで1単位あたりのコストを抑えられるうえ、小売・メーカーが共同で商品をつくっているため在庫・返品のリスクはありません。また、宣伝広告費(通常10%程度)や開発費(通常数%程度)も抑えられるほか、中間業者が入らないためマージン(通常10~15%程度)をカットできるというメリットもあります。

PBの「マグネット商品化」狙うのは“ついで買い”

 なぜ小売店はPB商品を扱うのでしょうか?小売店はPB商品の「マグネット商品化」を狙っていると坂口氏は言います。PB商品は小売店が自ら企画・販売するため価格をコントロールしやすく、多少利益を犠牲にして価格を下げることができます。すると、物価高により節約志向が高まった消費者が安いPB商品を求めて来店し、そのとき他の商品を「ついで買い」してくれるのです。

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 また、昔はPBには「安かろう悪かろう」のイメージもあったようですが、現在は「安くて良質」な商品が増えてきていると坂口氏は指摘。さらに、自社の顧客に合う「ジャストミートする」商品も出てきていると言います。

高コスパ&専門店顔負け!プロが推すPB商品

 最後に、プロが推すPB商品をご紹介。スーパーマーケットに詳しいフードコンサルタントの池田恵里氏は、「PBは今や各スーパーの“個性”の出しどころ!」だと語ります。

<おすすめ1>
 ▼ライフ「信州あづみ野 おいしさ際立つ はちみつヨーグルト」
 400g 224円(税込み)※参考価格

 (池田恵里さん)「ライフプレミアムはライフの4つのPBの中でも“高級ライン”ですが、お値段以上のおいしさ!PBだから実現したコスパだと思います」

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<おすすめ2>
 ▼OK「オーケー特選 マイルドブレンド」
 粉500g 970円(税込み)
 ※4月22日ごろから順次価格改定
 新価格:380g 928円(税込み)

 (池田恵里さん)「コーヒー専門店に劣らないクオリティーでとてもおいしいです!専門店だと100g500円の価格も珍しくないので、十分割安感あり」

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 「こんなに安くてお得なら、スーパーの棚はPBばかりになっていくのでは!?」との疑問に対して坂口氏は「PBは伸びつつも両方のバランスを取っていくのでは」と指摘。その理由として「メーカーには小売店が想像もつかない新商品をつくり出す力がある」「いざというとき、メーカーからナショナルブランドを供給されないリスクがある」といった点を挙げています。