新年度がスタートした4月1日、大阪府では禁煙を強化。客席の面積が30平方メートルを超える飲食店はすべて、喫煙専用室を設置しない限り、屋内禁煙とする条例が施行されました。違反した店には罰則が課されることになります。飲食店・喫煙者・非喫煙者の3者に禁煙強化に対する思いを取材しました。
4月1日から大阪府内の飲食店で禁煙が厳格化
万博を見据え、大阪府では新たな条例が施行され、府内の飲食店で禁煙が拡大。タバコを吸える空間が今まで以上に減る見通しです。
3月31日までのルールは、以下の通りでした。
■客席面積が100平方メートル超:禁煙(喫煙室設置可)
■30平方メートル超・100平方メートル以下(約4000店):既存店は喫煙可
■30平方メートル以下(約1万5000店):既存店は喫煙可
4月1日からは次のようになります。
■客席面積が100平方メートル超:禁煙(喫煙室設置可)
■30平方メートル超・100平方メートル以下(約4000店):禁煙(喫煙室設置可)
■30平方メートル以下(約1万5000店):既存店は喫煙可
客席面積が30平方メートル超の飲食店はすべて、喫煙専用室を設置しない限り屋内禁煙となり、違反した場合、店は5万円以下、客は3万円以下の過料が科せられます。
2024年度までは、条件付きで喫煙室設置代の4分の3を国・府が補助(上限300万円)していましたが、これまでに申請があったのは317件だったということです。
飲食店には死活問題「お客さんは減ると思います」
飲食店を営む人は、新たな条例施行にどのような思いを抱いているのでしょうか。
阪急・大阪梅田駅近くにある飲食店「酉乃市」。炭火で焼き上げる焼き鳥が名物のお店ですが店内の面積が30平方メートルを超える約60平方メートルのため、4月1日から「店内禁煙」としました。大阪で新たに施行される条例にお店のオーナーは…
(焼き鳥店「酉乃市」・須賀井俊介オーナー)「戦々恐々というよりも死活問題です。お客さんは減ると思います。お客さんからも言われているので。『タバコ吸われへんなら来店数は減る』というのは直接聞いています。タバコを吸いながら(食事を)楽しんでいただいているので、きょうから別の世界になります」
店内に分煙室を設けない理由について聞くと…
(須賀井俊介オーナー)「お店自体がこれ以上客数を減らすわけにはいかない。(分煙室を設けるスペース分)客数が減ってしまうので。お店がそういうつくりじゃない」
タバコを吸う人たちは今回の条例についてどう思っているのでしょうか?
(喫煙者)「(Q飲食店でタバコが吸えなくなるのは?)めちゃめちゃイヤですね。(タバコを)吸えていたところが吸えなくなっちゃうのはしんどい」
(喫煙者)「私はタバコが吸える店しか選ばないです。めっちゃ美味しいお店でも(タバコが)吸えないと行かない。めっちゃつらい」
一方で、タバコを吸わない人たちに話を聞くと…
(非喫煙者)「原則禁煙はありがたいですね。副流煙とかを気にしますね」
(非喫煙者)「結構、副流煙を気にするので禁煙はありがたいですけど、喫煙者の方からするとちょっと厳しくなるかな。健康意識とかが上がってきて万博という機会に向けて変わるのはいいことだと思います」
(非喫煙者)「子どもをいろんなお店に連れていきやすくなります。やっぱり禁煙のお店とかを探していましたし、いいことだと思います。吸わない人からしたら」
立場によって見方は様々でした。
”タバコを制限するなら喫煙所整備もセット考えるべき”
4月1日から飲食店の禁煙が厳格化されましたが、今年1月からは大阪市内全域の路上喫煙も禁止になっています。大阪市は喫煙所を新たに179か所増やし合計350か所を設置していますが、それでも「喫煙所が足りない」という声が聞かれます。
近畿大学の村中洋介准教授は、飲食店の禁煙強化について「屋内での禁煙は受動喫煙のリスクが高く、世界的に禁煙の流れになっている」、また路上喫煙禁止に関して「街の景観を考えると理解できる」としつつ、道については公共のものという考え方があるといいます。
また、村中准教授は、タバコは全国どこでも手軽に買えるもので、その税収は大阪市だけで300億円もあるといいます。そのため「喫煙所の整備をセットで考えなければいけない。制限するのであれば『あそこで吸って』と言える場所を作るべき」と指摘しています。
喫煙者と非喫煙者が歩み寄れる“落としどころ”を見つけていくべきではないでしょうか。