中居正広氏と元女性アナウンサーのトラブルに端を発した一連のフジテレビ問題。第三者委員会が調査報告書を公表し、第三者委とフジテレビが連続で記者会見を行いました。

 報告書は「業務上の延長で発生した性暴力」と認定し、フジテレビに「全社的にハラスメントが蔓延していた」とも評価しています。「スイートルームの会」など新たな類似事案も判明、調査報告書の重要な部分を読み解いていきます。

時系列でみる 直前に中居氏マンションで「BBQの会」

 400ページ近い量のある報告書。元アナウンサーが中居氏の部屋に入ってから退出するまでに起きたことは守秘義務となっています。今回、守秘義務を解除してお互いにヒアリングしようとし、女性は応じましたが、中居氏が守秘義務を解除しない判断のため、中でのことに関しては公表されません。それでも他の材料から性暴力が認定されました。

 時系列で見ますと、トラブルがあったのは2023年6月2日です。遡るとふたりは21年12月の「スイートルームの会」、フジテレビの忘年会、23年5月の「BBQの会」でも同席していて、本事案はBBQの会の2日後だということです。

 BBQの会には、中居氏のほか著名男性タレント2人、フジ社員B氏、元アナウンサー(Aさん)、ほかのアナウンサーとスタッフ。TBS社員も参加していたということです。フジテレビの社員B氏は、中居氏とコンタクトをよく取っている社員です。

ゴルフ予定だったタレント3人は、天候が悪かったため、中居氏の所有するマンションでバーベキューをしようという話になり、フジテレビ社員のBさんに連絡をします。これはショートメールのやり取りの一部です。

 中居氏「男同士じゃつまらんね。女性いるかなね。一般はさすがにね。となり、フシアア誰か来れるかなぁ。(原文ママ)」
 社員B氏「アナウンサー調整してみます」
 中居氏「自分が知ってる、アナ、誰だろね。」
 B氏「(元アナウンサーの名前)に声かけてみようかなと思います。」
 中居氏「はい、知ってる笑。」

 元アナウンサーとは忘年会やスイートルームの会で一緒になっているので、その人でお願いしますということが読み取れます。バーベキューは午後8時に散会、タレントが先に帰ったりしたようですが、この続きがありました。

 お腹がまだいっぱいになってないから、誰かお寿司屋さんに行こうという中居氏からの提案があり、元アナと、社員B氏と3人で行くことになった。店内ではB氏の「2人付き合っちゃえばいい」というような発言があったり、B氏がいない間に中居氏から連絡先の交換を提案され、元アナウンサーは連絡先を教えたということです。元アナウンサーは、「自分の親とも近いような年齢にあたる中居さんなので、そんな変なことになることはないだろうと、不安感なく連絡先を交換した」ということも調査でわかっています。この2日後が本事案の日です。

中居氏は「誰にも声をかけていなかった」

 お昼に「今晩ご飯どうですか」と直接中居氏方から誘いがったようです。これに対し元アナは「午後7時に六本木で仕事が終わる予定」とし、中居氏は「はい。メンバーの声かけてます。また、連絡します(原文ママ)。」と連絡しています。

 ただ、ヒアリングにたいする中居氏の答えは、『この日大雨だったそうで声かけても集まらなそうということもあって、実際には誰にも声をかけていなかった』。けれども、女性にはこう伝えている。

 中居氏「雨のせいか、メンバーが歯切れわるくいないです。飲みたいですけど、さすがに2人だけだとね。どうしましょ。」「隠れ家的な、お店。自信はありませんが探してみますね」

 ただ、こちらもヒアリングに対して中居氏は、『実際にはお店に電話をかけるなどしていない』ということを明言していますので、結果嘘をついていたと読み解けるのかなと思います。そして中居氏は「(仕事)終わりました。メンバー見つからずです~。どうしよかね。2人だけじゃ気になるよね。せっかくだから飲みたいけど。」と。

 元アナウンサーはヒアリングに対し、「今晩は空いていると、既に伝えてしまっている。」「2人だけは嫌だからやめたいとは立場上言えない、上司にあたるB氏が中居さんにペコペコしている様子も見ているので断ることはできない」「飲食店での食事であると思った」と話したといい、『2人でも良い』という旨の返信をします。
10.jpg
◆元アナウンサー「断ったりしたら仕事に影響が出るのではないか」

 中居氏は、「お店のレパートリーが情けないですが乏しく…笑。どうしよかね。(BBQを開催したマンション)で飲みますか。この間の。なら、安心かもです」と。

 元アナウンサーは、「ここで断ったりしたら仕事に影響が出るのではないか」「Bさんに伝わって、番組に呼ばれなくなるのではないか」という不安もあって、大丈夫という旨の返信をしたということです。
11.jpg
 女性は本事案のあと、「そのときに見た鍋の食材が食べられなくなった」「仕事中手が震える」「眠れなくなる」「歩くのもふらつく」といった症状を呈し、調査に対して「前の自分に戻れない。」さらには、「私が死ねばよかったんだ」というような証言もしていたといい、かなり追い詰められていたことがわかります。

フジ批判はその後の対応も原因か 「色々たすかったよ。」

 フジテレビが批判されているのは、この後の対応も大きいんではないでしょうか。本事案後、中居氏から相談を受けて、結果B氏は、後輩のフジテレビの女性アナウンサー側でなく、中居氏側に立ったような行動をとっているということが今回の報告書でわかりました。

 例えばお見舞い金として100万円を渡そうとする。さらに、女性側の弁護士から中居氏に連絡が来たときに、B氏がフジテレビのバラエティー部門で付き合いのある弁護士を中居氏に紹介している。こういったことを見た女性側は、「会社が私ではなく、中居氏側についたと感じた」ということも報告書にあり、精神的なダメージ、2次加害に当たると報告書は指摘しました。

 さらに示談が成立して、Aさんはフジテレビを退職するんですが、このことを伝えると、中居氏がB氏に対し「了解、ありがとう。ひと段落ついた感じかな。色々たすかったよ。」と連絡したということです。
13.jpg
 女性はフジテレビ側に相談していたんですが、適切な対応をしてこなかったといい、その理由は、港社長ら幹部の認識は、ほぼ全員が「プライベートな問題」としたことです。報告書には「これまでもタレントとアナウンサーが交際したり、結婚したりしたので、本事案について人権侵害とはむすびつかなかった」と書かれていました。

第三者委の公表を受け 女性がコメント

 「ネット上などで事実でないことを言われたり、ひどい誹謗中傷をされたりすることが続いていたので、調査報告書が公表されてその見解が示され、ほっとしたというのが正直な気持ちです。私が受けた被害は一生消えることはなく失ったものが戻ってくることはありません。このようなことが、メディア・エンターテインメント業界だけでなく社会全体からなくなることを心から望みます。」

 今回の報告書では「全社的な人権意識が欠落している」ということも指摘されていました。さらに類似事案があったんです。

スイートルームの会とは

 「スイートルームの会」です。中居氏とタレントU氏、フジB氏と男性スタッフ2人、女性は元アナのほかアナ3人、スタッフ1人の男性5人女性5人のいわば飲み会です。タレントからの「飲みたいんだ」という誘いからB氏が動き、「やっぱり女性アナウンサー中心がいいよね」と言ったのは中居さんのようです。そうしてスタッフが飲み物などを配膳しながら会話に参加する形だったそうです。

 そして実は、徐々に何人か帰ることになっていく。このとき元アナウンサーのAさんは、「ノリが悪いから先に帰らされたのかな」という印象だそうで午後9時半ごろまでに退出したそうです。午後10時にも唐突に退出を働きかけたりして、中居氏とタレントU氏、女性アナウンサー2人を残して、B氏は近くの飲食店で待機する形だったようです。

 そしてスイートルームでは、「鎖骨付近にふれる、顔を近づけるなどセクハラがあった」と今回の公表報告書で、認定されました。その後2人が帰った後、近くで待機していたこのB氏がホテルの精算が必要ということで、片付けと会計を行い高額ですが番組のロケなど施設使用料名目で経費で処理されていたということも指摘されました。

 この会はAさんと中居さんがトラブルになったのと類似事案、背景にあるという認定されています。女性アナウンサー2人を置き去りにしたということも似ている状況です。もう一つあります。

社員も置いてけぼりで出演者と2人に…

 10年以上前ではありますがやはりB氏が絡んで、社員に声をかけて飲み会に誘った会がありました。この社員がトイレに立っている間に、他にいた人たちがいなくなっていた。そして有力出演者と、社員の2人になった、社員が取り残されたかたちです。場所を変えて飲みに行こう、となり、隠れ家的な地下の店に2人で行くことになるんですが、ここで飲み物が運ばれて店員さんが部屋からいなくなった個室で突如としてこの有力出演者(男性)が、ズボンと下着を脱ぎ下半身を露出した、と。これに対し社員は「私そういうの駄目なんで」と機嫌を損ねないように言って逃げ出したということがあったそうです。

 これも明らかに社員を利用するかのように置いていったというふうに見られます。フジの会見ではMBS山中真アナが清水社長に「B氏固有の問題なのか、B氏以外にもあるのか」と聞きました。清水社長は、「B氏が突出しているように感じるが、とはいえB氏だけの責任かというとそうではない」と認めていました。

ハラスメント事案 その後取締役へ

 ほかに重要なハラスメント事案も指摘されました。当時の秘書室長で、その後役員に進まれるような人がセクハラをしていた、女性スタッフの手を握ったり腰に手を回したりした事案。

 そしてキャスターも務め、その後取締役にもなった反町理氏が、当時の報道局の後輩女性社員に対し食事に誘ったり、1日拘束するデートのようなものを強要していたり、それを断ったりすると、急に叱責したりということもありました。そのため「企業風土に問題があったのではないか」と指摘されました。「何か問題があったとき上に報告をしたくないということが幹部にあった」ということも今回の報告書で指摘されています。
24.jpg
 では、フジテレビの法的な責任の可能性について川崎拓也弁護士に聞きました。川崎弁護士が挙げたのは、関係者間の損害賠償請求よりも、株主が旧経営陣に対しての責任を問う訴訟。明らかに損害が出て今回経営陣の責任がはっきりと示されていますので、出てきてもおかしくないと、その可能性を指摘しています。