こんにちは。気象予報士の辻村奈都子です。今日3月20日は春分の日。24節気の1つで、昼と夜の長さがほぼ同じになる日です。

 また、春分の日の前後3日間を含む合計7日間が「春の彼岸」です。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉通り、21日以降は気温が上向き、この週末は春の陽気を感じられそうです。

 春は散歩やお花見にはちょうど良い季節ですが、実は乾燥しやすい時期でもあります。気象予報士になる前に客室乗務員をしていた経験から、今回は「飛行機内が乾燥する理由とその対策」についてご紹介します。

タイトルなし.jpg(フラワーアレンジメント発祥の地といわれているイギリスでは、外観がお花で彩られているお店が多くみられます)

 皆さんは飛行機に乗っていて普段よりも乾燥していると感じた経験はありませんか。一般的に、晴れた日は昼過ぎに湿度が低くなりますがこの時期だと大体30%~40%くらいです。一方飛行機内は機材によっては湿度が5%くらいになることもあります。「砂漠のような環境」ともいわれていました。私の経験では、国際線で機内食と一緒に出したおしぼりが、食事を回収する頃にはカピカピに乾いてしまうほど客室内は乾燥していました。

飛行機内が乾燥するのはなぜ?

 機内の湿度が低いのは、「あえてそうしているから」です。その理由は、ずばり「結露」を防ぐためです。冬の寒い時期に結露で部屋の窓がびしょ濡れになったことはありませんか?

 飛行機は-50℃程度の上空を飛んでいるため、飛行機内の湿度を上げると結露が発生してしまうのです。一般的な飛行機は総重量の約70%がアルミニウム合金という金属でつくられています。結露によって出てきた水滴が機体の内部に溜まってしまうと、飛行機の金属部分が腐食し、サビが発生してしまうおそれがあります。金属が錆びると強度が弱まり、安全面での問題が生じてしまいます。そのため、飛行機の中はあえて湿度を低くしているのです。

 ただ実は、湿度をこれまでよりも高く保つことができる飛行機も出てきています。例えばボーイング787型機という機材は炭素繊維強化プラスチックという腐食やサビへの耐性が強い材料が使われているため、これまでよりも機内の湿度を上げることができるのです。それでも機内の湿度は20%程度と乾燥しています。

客室乗務員が行っている飛行機内での乾燥対策とは?

 客室乗務員は国際線の長距離便だと15時間ほど機内で業務にあたります。その間はメイクも落とせず、長時間のフライトでは乾燥で肌がカサカサになってしまいます。そのため化粧水のミストを持ち歩き、休憩時間などにシュッとひと吹きしていました。メイクの上から使えて、美容成分がしっかり入ったものが人気でしたね。

 あとはハンドクリームやリップクリーム、ネイルオイルなどはこまめに塗っていました。市販の濡れマスクも喉の乾燥を予防するのに有効です。そしてやはり水分をとることが大切です。先輩からは「喉が渇いていなくてもこまめにコップ1杯の水分をとりましょう」と、よく言われていました。

滞在先のホテルでの乾燥対策は?

 また客室乗務員は多い人で月に10泊以上ホテルに滞在します。そのため滞在先のホテルの部屋でも乾燥を防ぐためにさまざまなことを行っていました。特に海外のホテルには加湿器などが備え付けられていないことが多いため、ペットボトルサイズのポータブル加湿器を必ず持ち歩くようにしていました。加湿器が無い場合は、濡れたバスタオルを部屋に干す、バスタブのお湯を流さず、洗面所の扉を少しだけ開けておくといったこともおすすめです。ただ、ホテルの火災検知器は湯気でも反応することがあるのでぬるめのお湯にしてくださいね。あとは寝る時にはエアコンを弱め、口にいびき防止用のテープを貼って口呼吸で喉が乾燥しないように細心の注意を払っていました。

 今回ご紹介した乾燥対策は、飛行機内やホテルだけでなく日常生活でも活用できます。対策をしっかり行って乾燥の季節を乗り越えていきましょう。

◎辻村 奈都子:気象予報士 健康気象アドバイザー
奈良県出身。大学卒業後、航空会社に入社。客室乗務員として7年間国際線・国内線に乗務。総飛行時間は4500時間、地球195周分に及ぶ。