大阪市は市内で放置された自転車を条例で定められた7日間を経過せずに撤去するなどの対応で「14年で4万台の不適切な撤去」があったとする調査結果を公表し、謝罪しました。撤去を主導した職員の主張とは…。大阪市の放置自転車の実情と課題を含めてまとめました。
大阪市が“不適切撤去”で謝罪
大阪市で積年の課題となっている放置自転車。大阪市では、即時撤去されるエリアと、警告の札をしてから7日以上の放置で撤去されるエリアを設け、対策を行っています。
【自転車等放置禁止区域】
・鉄道駅周辺おおむね300mの範囲
・短時間であっても即時撤去(見つけてから30分)
【自転車等放置禁止区域外】
・警告の札をしてから7日以上の放置で撤去
しかしこの“7日ルール”のエリアをめぐり、2月25日、市は放置された自転車を条例で定められた7日間を経過せずに撤去していたとする報告書を公開し、謝罪しました。
職員「市民の要望に応えるため」
不適切に撤去された自転車は14年間で約4万台。このうち3万台は「日数のカウントミス」で、残る1万台は職員らが7日経過していないことを知りながら故意に撤去していた可能性があるということです。
規則を知った上で撤去を主導したとされる50代職員は、「早く撤去してほしい」という市民からの要望に応えるためだったと説明しています。また、撤去したのは主に劣化がひどい自転車で、持ち主が現れそうなキレイな自転車は即時撤去しなかったということです。
市は「市民の財産権を侵害した事実は重く受け止め、大阪市建設局としては二度とこのようなことが起こらないよう(放置自転車対策業務)マニュアルの大幅見直しを終え業務を進めている」とコメント。
今後、関わった職員らの処分を検討するとともに、2010年~2024年に自転車を不適切に撤去されたと心当たりがある市民には、撤去場所や日時などを確認したうえで2000円の賠償を行う方針です。
撤去後の自転車の保管と処分
そもそも、大阪市での放置自転車は、自転車等放置禁止区域外だけでも14年間で287万台(大阪市の人口は約280万人)。
撤去した自転車は20日間保管され、それでも引き取りに来なければ処分となります。
では、撤去された自転車が持ち主のもとに戻る割合はどれくらいなのか?自転車等放置禁止区域における返還率は60%ですが、自転車等放置禁止区域外ではわずか0.8%となっています。つまり、放置する人の中には最初から“捨てるつもり”の人もいるのかもしれません。
また、大阪市の放置自転車にかかった費用は、1年間(2023年)で少なくとも3億3000万円以上だということです。
専門家「安易な自転車利用を控えるべき」
こうした状況に、大阪公立大学の吉田長裕准教授は根本的な問題を指摘。自転車の需要が高まり続けており、駐輪場の拡大だけでは問題解決に至らないということです。
その上で、都市部では安易な自転車利用を控えるべきだといいます。シェアサイクルの活用など、乗る側の考え方を変えなければならないという見解を示しています。