コロナ禍で広がったと言われている「オンラインカジノ」。タレントだけではなく、プロ野球選手も利用していたとして活動自粛が発表されました。専門家によりますと、オンラインカジノは他のギャンブルと比べ依存症に陥るリスクが高く、その人の人生狂わせてしまう恐れもあるといいます。そしてこのオンラインカジノの入口の1つとされるのが「ネット依存」です。どのように対策するべきなのか、3人の専門家に取材した内容をもとにまとめました。※『日本ではオンラインカジノによる賭博は違法』です。

◎医学的なことについて:昭和大学医学部 常岡俊昭准教授
◎ネットとの関係について:兵庫県立大学 竹内和雄教授
◎相談支援について:ワンネス財団 公認心理師 真篠剛氏

違法だけど…国内利用者は推計346万人

 まず、日本ではオンラインカジノでの賭博は違法です。国際カジノ研究所の調査によりますと、オンラインカジノの国内利用者は推計で346万人(2023~2024年の1年間)。利用者の多くは20代・30代男性のほか、定年を迎えて時間に余裕がある高齢者だということです。

 昭和大学の常岡俊昭准教授は、オンラインカジノで「ギャンブル依存症」で病院に来る人は増えている印象があるといいます。さらに依存症になったあとの破綻が早いということです。

 ギャンブル依存症で生活が破綻する実情を、競馬・競輪・競艇などの公営ギャンブルとオンラインカジノで比較して見てみます。

 ■公営ギャンブル
 賭けるタイミング:「1日何レース」など“休み”がある
 賭けるお金:リアルなお金
 破綻まで期間:年単位

 ■オンラインカジノ
 賭けるタイミング:24時間365日
 賭けるお金:ゲーム内のお金
 破綻まで期間:4か月

ギャンブル依存症は『病気』ギャンブルしか考えられなくなる?

 ギャンブル依存症になると、脳が「それだけ」になってしまうため、歯を磨かなくなる人が多いそうです。入浴や睡眠もおろそかになります。「意志が弱い」「自業自得」などと思われがちですが、ギャンブル依存症は『病気』であるため意志の弱さは関係なく『病気』であると認識することが大切です。
4.jpg
 ギャンブル依存症が病気であることは科学的にも説明されています。脳の神経回路には『報酬系』呼ばれる回路があり、寝る・食べるなど人間が生きる上で必要な行為を行うとそこが刺激され、「幸せホルモン」のドーパミンが分泌されます。強い刺激を脳が素早く学習し、本人の意志とは関係なく反復するクセがつきます。

 しかし、依存症になってしまうとギャンブル以外でドーパミンが出なくなってしまい、ギャンブルにのめり込んでしまうということです。この脳内メカニズムは、アルコール依存症・薬物依存症でも同じです。

 ギャンブル依存症になりやすい人の特徴は分かっておらず、アレルギーのように個人差があるということですが、注意点として、ギャンブルを楽しむためではなく、苦しさ・つらさから逃れるためにやっている人は依存症になるリスクが大きいということです。

 また、ギャンブル依存症になってしまう脳のメカニズムは「うつ病」と似ていると言います。常岡俊昭准教授によりますと、「うつ病」もドーパミン不足が関係していて「ギャンブル依存症」と合併しやすく、自殺のリスクも跳ね上がるということです。

誰もが利用するネットが「オンラインカジノ」の入り口に

 次に、オンラインカジノの入り口の1つと言われているインターネットとの関係を見ていきます。オンラインカジノはパソコンやスマホを使いネットでプレーします。ネット上にはゲーム・動画・SNSなど様々なコンテンツがありますが、実はこれらが依存症のリスクをはらんでいます。

 ネットの利用が増加した理由としては、主に「コロナ禍」「利用の低年齢化」「アルゴリズム」の3つが挙げられています。なかでも「利用の低年齢化」について、子どものインターネット利用率はなんと2歳で50%を超えます(内閣府調べ)。

 【インターネット利用率】
 1歳 28.6%
 2歳 62.5%
 7歳 90.7%
 12歳 98.2% 
 15歳 98.9%。

 米・キンバリー・ヤング氏考案のネット依存の判定テスト(8問中5問該当で依存と判定)。このテストでネット依存が疑われた割合は以下のようになっています。

 【2018年 厚労省発表】
 中学生 12.4%
 高校生 16.0%

 【2023年 兵庫県立大学・竹内和雄教授の調査】
 中学生 24.1%
 高校生 26.9%
12.jpg
 インターネットのアルゴリズムは、依存症につながるかもしれない「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」を引き起こします。

 ▼フィルターバブル…知りたい情報だけ手元に届く
 ▼エコーチェンバー…SNSで似た声ばかり集まる→先鋭化しやすい

ギャンブル依存症にならないためのキーワード

 では、ギャンブル依存症にならないためにはどうすればいいのか?ワンネス財団・公認心理師の真篠剛氏は、“幸せ”を構成する要素の頭文字をとった「PERMA」というキーワードを挙げています。この5つを達成することで幸せを感じることにつながるといいます。

 Positive Emotion = 前向きな気持ち
 Engagement = 没頭できること
 Positive Relationship = 良好な人間関係
 Meaning = 人生の意味・意義
 Accomplishment = 達成する感覚

 また、話ができるコミュニティを最低3つ持つことが大事で、例えば職場・学校・家や、気持ちを共有できる人・場所をつくるのが良いということです。

 最後に3人の専門家にギャンブル依存症の対策を聞きました。

 ▼ワンネス財団公認心理師・真篠剛氏「依存症克服のためは怒らない仲間・成功体験が必要」「依存症は本人だけでなく家族へのサポートも重要」

 ▼昭和大学医学部・常岡俊昭准教授「予防策はないが早く病院に行けば治る」

 ▼兵庫県立大学・竹内和雄教授「教育とインターネットの『アルゴリズム』に対する法整備が必要」