タレントの中居正広さんと女性とのトラブルに“フジテレビ社員が関わっていた”などと一部週刊誌が報じたことをめぐり、1月17日、フジテレビの港浩一社長が会見を開きました。この中で港社長は「発端となった事案について直後に認識していた」「女性が私たちの思いとは別の受け止め方をされているという年末からの一部報道があり、今となっては対応が適切だったのかどうかと思うところもある」とコメントしました。
今回の会見で明らかになったことについて、長井健一弁護士の見解も交えてお伝えします。
◎長井健一:弁護士 アディーレ法律事務所 大阪弁護士会所属 取り扱う分野は労働問題やインターネット問題など多岐にわたる
中居さんのトラブルは2023年6月に把握
まず、今回の会見は、参加できる記者が限定され、テレビカメラでの撮影禁止という中で行われました。会見で港社長は中居さんのトラブルについて、2023年6月の初旬、発端となった事案直後にフジテレビとしては認識していた、とコメント。当事者2人の間で起きたセンシティブな問題で、当時の判断は事案を公にせず、女性の意思を尊重し心身の回復とプライバシー保護を優先させた、としています。
港社長「事実関係については第三者による調査委員会で」
そして、社内調査や社員の関与について「事実関係については第三者による調査委員会に行ってもらう」「(トラブルで)中居氏と女性以外の第三者が関与していたかについても調査委員会に委ねたい」と述べました。
港社長は“第三者による調査委員会”を立ち上げることを明らかにしましたが、『第三者委員会』には、日本弁護士連合会が策定した、以下のような内容のガイドラインがあります。
▼委員数は3人以上が原則 企業と利害関係を有する者は就任できない
▼企業等が所有するあらゆる資料、情報、社員へのアクセスを保障すること
▼ステークホルダー(利害関係者)に対する説明責任を果たす目的で設置
ただ、会見で港社長は、ガイドラインに沿った第三者委員会を設置しますとは明言しませんでした。その理由について、長井健一弁護士は次のように考えます。
「第三者委員会が行う内容は特殊な内容になってくるため、それができる法律事務所はどうしても限られてきます。フジテレビのような大企業では取引先も含めると関係する会社が莫大な数になり、そこと利害関係がない、つまり取引がない、顧問関係や依頼がないという事務所を探そうとすると、そこのところがかなり難しい。何らかの関連があるというところに行かざるを得ない部分がどうしてもあるんじゃないかと思います。弁護士を選ぶ中で、関係ないところを選ぶのが難しいため、はっきりそこは明言できなかったのかなと推測します」
なお、長井弁護士によりますと、第三者委員会の委員はすべて弁護士にしなければならないわけではなく、企業の監査の専門家や、会計に関係する事案であれば公認会計士など、事案によって適切な専門家を入れて設置するということです。
スポンサーにも報告しなかった理由は…
中居さんとトラブルになった女性への対応について、会見で港社長は「女性が私たちの思いとは別の受け止め方をされているという報道があり、今となっては対応が適切だったのかどうかと思うことがある」とコメント。また、トラブル報道がなければスポンサーへの報告はなかったのかという質問に対しては「極めて秘匿性の高い事案として判断。女性の人権やプライバシーなどを総合的にみてスポンサーにも伝えなかった」としています。
こうしたフジテレビの判断について、長井弁護士は次のような見解を示しています。
「スポンサーはステークホルダー(利害関係者)と言われる方たちなので、当然何らかの説明をしなければいけないでしょうが、フジテレビ側から考えれば、秘匿性がすごく高い、プライバシーにかなり影響する話ということになるのため、こちらの方からそういった話を出すのは控えるべきだということで判断をしたと。ただ、今回報道が出てしまった以上は、報道されている中であればすでに公開されている情報なので、そこについては話すことはできるだろうということで話をしたんです、というような説明になるのではないかと思います」
女性のことを考えて公にせず、スポンサーにも報告しなかったというフジテレビ。長井弁護士は「一応、説明としては通りますが、真実はどうなのかという部分は、これまでの対応を見ていくとやはり疑わしい部分は出てくるかな、というところです」と述べています。