1か月後の2月14日はバレンタインデー!ですが…最近、カカオ豆の取引価格が高騰する「カカオショック」の影響でチョコレートが値上がりしているといいます。バレンタイン商戦に向け、百貨店などでは価格を抑える創意工夫に追われています。
今、カカオ豆の生産国で何が起きているのか?チョコレートの未来はどうなっていくのか?チョコレート研究の第一人者、広島大学・佐藤清隆名誉教授への取材などをもとに情報をまとめました。
カカオ豆の価格が2年で4倍に…百貨店や菓子店はバレンタインに向け“創意工夫”
チョコレートの値上がりの原因となっているのが、カカオ豆の国際的な取引価格の高騰=カカオショックです。ここ2年ほどの価格変動を見ると、おととしと比べて「約4倍」になっています。
▼2023年はじめ:1kg=約2.5ドル
▼2024年4月 :1kg=約10ドル
▼2024年12月:1kg=10ドル以上
※国際ココア機関による月平均価格
去年4月ごろから一旦下降傾向になったものの、クリスマスやバレンタインなどのイベントが近づくにつれて再び価格は上昇傾向となっています。
これを受け、対応に追われているのは、催事を控えた百貨店です。チョコレート以外の味を展開する、チョコレートそのものではなくチョコレートを使った「チョコ菓子」(クッキーなど)に注力するなど、各社の工夫が見られます。
▼あべのハルカス近鉄本店「バレンタイン ショコラ コレクション2025」1月17日(金)~
→チョコ菓子の割合増 目標は全体の売り上げの17%(2022年は5.9%)
▼阪急うめだ本店「阪急バレンタインチョコレート博覧会2025」1月20日(月)~
→去年までのチョコレートのソフトクリームに加えて、アイスクリームを50種類展開(チョコ以外の味も)
大阪市内のチョコレート専門店でも、キャラメルやレーズンなどを使いチョコレートの割合を減らすなど、“技術力”でカカオショックを乗り切ろうという取り組みもみられます。
異常気象と病気で「カカオの木」が消えた!?
なぜ、カカオショックが起きているのか。実は、カカオ豆の生産国で“ある異変”が起きているのです。世界全体のカカオ豆生産量は560万t(※農林水産省資料より 2021年のデータ)で、そのうち220万tが生産量世界1位のコートジボワール。2位が80万tを生産するガーナです。西アフリカの2か国で世界全体の半分以上を生産していることになります。
この2国が生産している計300万tのうち、30%が“消えている”ということです。その原因は、大雨が降った後に干ばつが起きるという「異常気象」。これによりカカオの木が弱ってしまい、さらにウイルスによる病気が蔓延しています。
ウイルスは“変異”するため非常に厄介なのですが、ウイルスを媒介する虫「カイガラムシ(の一種)」を駆除するのが難しいということです。というのも、カカオの木にはこのカイガラムシとアリが共生していて、アリが外敵をやっつけるため、結果的にカイガラムシが守られてしまっているのです。
実はこのウイルスは約90年前に発見されていて、世界各国で研究されてきましたが、今のところ解決策は「病気の木を燃やすしかない」ということです。ただ、新しい木を植えて実がなるまでに4~6年がかかるので、影響は長引くことが予想されます。
世界的に大きな問題となっているカカオショック。そうした中の“カカオ争奪戦”に日本は苦戦を強いられています。というのも、カカオ豆生産量で世界1位のコートジボワールと2位のガーナは、元宗主国のフランスやイギリスに優先的に売っていて、日本に入りづらい状況になっているということです。
さらに、日本人がチョコレートを“本格的に”食べられるようになったのは約50年前からとされ、比較的遅かったようです。現在も1人あたりの年間消費量(※日本チョコレート・ココア協会 2021年のデータより)は2.15kgで、スイス(9.6kg)やドイツ(9.2kg)などと比べると圧倒的に少なく、供給が「後回し」になってしまうのです。最近では、中国や東南アジアでも消費が拡大していて、供給が追いついていない状況です。
カカオショック時代の新標準!?「プレミアム準チョコ」
今後、チョコレートはどうなっていくのでしょうか。そもそもチョコレートというのは、カカオ豆を砕いた「カカオマス」から作られる「ココアパウダー」と「ココアバター」を主な原料としています。
▼茶色いチョコレート:ココアパウダー+ココアバター+砂糖など
▼ホワイトチョコレート:ココアバター+砂糖など
実は、このココアバターは「植物油脂」に代替可能なため、カカオの割合を減らしてチョコレートを作ることができるのです。私たちが普段食べているチョコレートにも、植物油脂が入っているものが多くあります。
そして業界では今、「プレミアム準チョコ」というものが注目されています。チョコレートというのは、ココアバターの含まれる割合などによって、「チョコレート」と「準チョコレート」に規格が分かれていますが、この「プレミアム準チョコ」は、準チョコレートの規格でありながら高品質を実現したものだということです。製品を手がける不二製油によりますと、口に入れたときの溶け具合(口どけ)がココアバターとほぼ同じで、「これまで『チョコレート』規格にこだわっていたお客様からも引き合いがあります」とのこと。試食した前田春香アナウンサーは「全く違いが分からない」と感想を述べています。
今回のカカオショックについて、広島大学の佐藤名誉教授は「生産国の貧困対策や生産技術の向上などを考慮すると、カカオ豆の国際価格は多少上がっていく方が望ましい」と話します。チョコレート好きにとっては厳しいカカオショック。まだしばらく続きそうです。