大阪メトロなかもず駅にオープンした「ウォークスルーコンビニ」、JR大阪駅などで行われている「顔認証改札機」の実証実験…新たな『決済方法』が続々登場しています。未来にはどんな支払い方法が?現金はどうなる?第一生命経済研究所・柏村祐主席研究員への取材などをもとに情報をまとめました。
【ウォークスルー決済】商品をカバンに入れてもOK!レジ不要の自動決済
現金だけでなく電子マネー・交通系IC・クレジットカードなど、さまざまな決済方法が登場している昨今ですが、大阪メトロ御堂筋線なかもず駅(大阪府堺市)に『ウォークスルー決済』できるコンビニ「S Lawson Go OSLなかもず駅店」がオープンしました。利用方法は次の通りです。
(1)LINEでカード情報を登録しQRコード取得
(2)店の入り口でQRコードをかざして入店
(3)商品を選ぶ
(4)そのまま退店・自動決済
一度選んで手に取った商品を棚に戻した場合でも、自動決済システムは問題なく作動します。店内のカメラが客の動きを捕捉しているのと同時に、商品棚が商品の重さをはかっていて、どの商品が取られたかを把握しているからです(※元の場所に戻さないとエラーが出る)。また、店内で商品をそのままカバンに入れても問題ありません。
今のところ、レジ袋は販売されていません。理由は、“軽すぎる”ため。誰が何を取ったかを「商品の重さ」で把握しているため、現状ではレジ袋1枚分の重さを判断することはできないということです。ただ、今後の技術の発展によって、販売されるようになるかもしれません。
さらに、店内で混雑による“人違い”が起きることはないということです。入店できる人数に制限があり、上限に達すると入店用のゲートが開かない仕組みになっています(なかもず駅店の場合は6人)。なかもず駅店を取材した大吉洋平アナウンサーによりますと、朝のラッシュ時は入店後約30秒で退店する人が多く、店内に6人が入っていることは一度もなかったということです。
【ウォークスルー決済】メリットは?課題は?
この『ウォークスルー決済』には、どのようなメリット・課題があるのでしょうか。第一生命経済研究所・柏村祐主席研究員に聞きました。
<メリット>
▼客側:スピーディー・非接触
▼店側:人手不足に対応 行動データ活用
▼客側・店側:24時間営業しやすい
行動データ活用とは、性別・年齢・店・商品・購入時間といった客の購買情報をデータ化しマーケティングに活用することです。
<課題>
▼初期投資・システム維持費
▼商品の補充は人間が行う
▼酒などの年齢確認
柏村氏によりますと、新テクノロジーが登場した場合、最初は多くのお金がかかるもので、それが広がっていくとコストは削減されていき、広く使えるようになるということです。
【顔認証改札】“顔パス”で改札を通過する時代に!
駅の「顔認証改札」の技術も進んでいます。“顔パス”で改札を通過する時代が来るかもしれません。JR西日本では、大阪駅(うめきた地下口)と新大阪駅(東口)に顔認証改札を設置し、現在、モニターと社員による実証実験が大阪駅-新大阪駅の間で行われています。また、大阪メトロでも、今年度末の実用化を目指し、社員で実証実験中です。“1日乗り放題券”などから実用化が始まるのではとも言われています。
ちなみに、千葉県佐倉市の「山万ユーカリが丘線」では顔認証改札がすでに今年6月から実用化されています。6駅だけの路線で、一律200円(大人)で乗車できることから、導入しやすかったのかもしれません。担当者によりますと、「磁気切符だけだったので、切符をなくす心配がなくなった」など好評で、高齢者も積極的に利用していて“話のネタ”になっているそうです。
なお、柏村氏によりますと、日本の顔認証技術は非常に進んでいて、インド版のマイナンバー制度「アドハー」の顔認証にも日本の技術が使われています。ただ、日本人はプライバシーを気にする心理的ハードルが高いということです。
【未来の決済方法】スウェーデンでは「体内マイクロチップ」 インドでは「目の虹彩」を利用
未来の決済方法はどうなっていくのでしょうか。柏村氏によりますと、スウェーデンではすでに「体内マイクロチップ」が乗車券などで利用されています。また、インドのマイナンバーには、目の「虹彩」の情報も登録されています。
新しい決済方法が次々に登場していますが、柏村氏は「日本からは当面、現金はなくならない」とコメント。日本は現金を大事にする国で、今年は新札も発行されました。技術はあるが警戒心が強い国民性も影響しているようです。ただ、新しい支払方法は「万博」をきっかけに大きく広がる可能性があるとも指摘しています。
技術の進歩というのは“置いてけぼりの人”を生んでしまう危険性があるため、「選択の余地」を残すことが大事だと、柏村氏は強調します。現金で払いたい人や、店員さんとコミュニケーションを取りたい人が買い物に困らない社会が望まれます。