10月6日にお住まいで転倒し、右大腿骨の上部を骨折した上皇后・美智子さま。8日に手術が行われ、無事に終了したということです。医師によりますと大腿骨骨折は「骨粗しょう症」で起きやすいといいます。骨粗しょう症になりやすい人とは?予防するにはどうすればいいのか?辻外科リハビリテーション病院の理事・辻翔太郎医師に聞きました。
◎辻翔太郎医師:辻外科リハビリテーション病院・理事 関西各地で骨粗しょう症予防の啓発活動を行う
宮内庁によりますと上皇后・美智子さまは10月6日夕方、東京都港区の赤坂御用地にあるお住まいの仙洞御所で転倒し、強い痛みが続いたため、7日に東大病院で検査を受けられ、右大腿骨上部の骨折と診断されました。上皇后さまは東大病院で8日午前5時に手術室に入り、午前7時20分に病室に戻られたということです。手術は折れた骨と骨をつなげるものでリハビリの経過によりますが1~2週間入院される見込みだということです。上皇さまは手術が無事に終了したことを聞くと安心された様子だったということで、医師から今後の経過などについて説明を受けられるということです。
上皇后さまが骨折した大腿骨について、辻外科リハビリテーション病院の理事・辻翔太郎医師は、高齢女性に多い「骨粗しょう症」の患者が非常に骨折しやすい箇所だと言います。
折れやすいのは上腕部・背骨・大腿骨・手首…いつの間にか骨折も
「骨粗しょう症」は、患者数が推計1590万人、うち女性が1180万人で半数以上(骨粗鬆症財団・2022年)。
そもそも骨粗しょう症とは何なのか。辻医師によりますと「簡単に言うと骨がもろくなって骨折しやすい状態になってしまう病気」だということです。女性に多いのは、女性ホルモンが関係しているからだといいます。実は女性ホルモンが骨をつぶす細胞を抑える働きをしているため、閉経後に女性ホルモンが出にくくなることで、骨を潰す細胞が抑えられられなくなって発症する人が非常に多いということです。糖尿病の合併症で起きる場合などもあるようです。男性は加齢で発症する可能性があるということです。
厄介なのが、骨粗しょう症は症状がないため気づくのが難しく、転倒やけがをして初めて気づくことが多いそうです。そこで辻医師は骨密度の検査を推奨しています。
骨密度の調べ方は複数ありますが、折れたら寝たきりに近づいてしまいやすい大腿骨や腰椎を調べることが重要だといいます。骨密度を調べる装置はどこの病院でもあるわけではないため、病院のホームページなどを調べて受診してほしいということです。自治体で骨粗しょう症検診などをやっているところも多いため、そこで骨密度を調べてから精密検査に挑んでもいいかもしれません。
症状が進行すると、上腕部・背骨・大腿骨・手首が折れやすくなってしまいます。また、背骨では“いつの間にか骨折”という骨折もあるといいます。“いつの間にか骨折”の場合、痛みがなく徐々に骨がつぶれていって、「いつの間にか背が縮んでいるな」と病院に来て気づくケースが多いということです。
あなたはあてはまる?「骨粗しょう症になりやすい」チェック
骨粗しょう症になりやすい人とはどんな人なのか、辻医師が挙げるのは以下の4点です。
▼生活習慣が乱れている…タバコや酒を好む人など
▼体重が軽い
▼家族が骨粗しょう症…遺伝の要素もある
▼糖尿病や関節リウマチといった持病のある人
治療方法はサプリメントや薬があるということですが、辻医師は「再び骨折するケースもあるので注意が必要」と強調します。大腿骨が折れてしまった場合、体が前傾姿勢になって転びやすくなるほか、入院中に運動量が落ちてさらに骨密度が落ちてしまい、逆側の大腿骨や背骨が折れるリスクが増えてしまいます。そうした場合には薬物治療が重要だということです。
「食事」「運動」「日光浴」がポイント!
最後に、骨粗しょう症にならないために「骨を強くする」にはどうすればいいのか、ポイントは3つです。
1つ目は食事。カルシウム(例:牛乳・小松菜)や、カルシウムの吸収を高めるビタミンD(例:サケ)やビタミンK(例:納豆)をしっかりとりましょう。
2つ目は運動。スクワット・太極拳・ピラティスなど、体幹を鍛えることが大事です。また、立った状態でかかとを上げて地面にトンッと落とす「かかと落とし」も有効だといいます。骨が弱い高齢者などの場合はころぶリスクもあるので、手すりなどを持って行ってほしいとのことです。
そして3つ目は日光浴。日光浴をするとビタミンDが体内に作られるということです。日焼け止めによりビタミンD不足になる人も多いですが、最近はビタミンDを阻害しない少し弱めの日焼け止めも売っているといいます。また、サプリメントや薬で補う方法もあるということです。