アメリカの名門スタンフォード大学などが“44歳と60歳で急激に老化する”という研究結果を発表しました。この2つの年齢のとき、私たちの体で一体何が起きているのか?そしてすぐにでも実践できる老化の予防法とは?アンチエイジングの専門医であるお茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二院長に聞きました。
44歳・60歳前後で“老化の加速”にアクセル!?
人間にとって避けられない「老化」、あなたは何歳のときに強く感じましたか?MBSテレビのLINE公式アカウントで調査したところ(※1万404人が回答)、一番多かった回答は「50歳」でした。
8月14日、アメリカのスタンフォード大学が老化についての研究結果を発表。アメリカ在住の男女108人(25~75歳)を対象に、3か月~6か月ごとに血液や皮膚などのサンプルを採取したところ、44歳・60歳前後で急激な老化が見られたということです。
お茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二院長によりますと、この研究結果からは、44歳・60歳前後でアクセルを踏み込んだように老化の加速度が大きくなることがわかるということです。また、生活習慣の変化に体がついていけていないのではないかといいます。日本の社会でいえば、例えば会社員の場合、44歳前後は管理職に就く、60歳前後は定年を迎える、など生活リズムががらりと変わったり、以前とは違うストレスを感じたりする年齢です。
44歳 脂質やアルコールの代謝に大きな変化
では、このとき体で何が起きているのか…。白澤院長によりますと、44歳前後では、脂質の代謝に大きな変化が訪れるということです。今回の研究結果では、44歳くらいで体内の脂質の量が多くなっている人が多くいました。これは動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中と関係してきます。
さらに、アルコールの代謝も大きく変化するようです。アルコールの代謝に変化が訪れると、脳細胞にダメージを与える可能性があるということです。
白澤院長は、この調査には生活習慣の結果も表れているといいます。おそらく44歳くらいは、会社での立ち位置が変わり、付き合いが増えるなどして飲酒量が増える人が多いのではないかということです。飲み会で脂っこいものを食べたり普段から脂の多い加工食品を食べたりしている人は、44歳という年齢を一つの目安にしてこれまで以上に控えることを考えてもいいタイミングかもしれません。
60歳 炭水化物の代謝に大きな変化
次に、60歳前後では、炭水化物の代謝に大きな変化が表れるということです。炭水化物を摂取すると、それを体内で燃やすときに活性酸素が増えます。活性酸素が増えると、「酸化ストレス」が発生します。この酸化ストレスは、酸化反応により引き起こされる体への有害な反応のことだということです。その結果、細胞の老化が促進されます。また、免疫力にも影響が出ます。酸化ストレスは免疫細胞も刺激し、免疫力が下がるため、感染症のリスクが高まるということです。
白澤院長によりますと、現代社会は炭水化物が多すぎるということです。朝に食パンや白ご飯、昼はラーメンやパスタ、夜にも白ご飯を食べるという生活の人は、朝はサラダと卵にして炭水化物は我慢するなど、どこか一つ炭水化物をなくしてみてもいいかもしれません。
運動量の違いなどもあるため人によりますが、全体的に炭水化物が多い人はそれぞれの体のバランスを考えて少なくしてみてはいかがでしょうか。機会があれば栄養士や主治医に相談してみるのもいいでしょう。
ただ、白澤院長は今回のデータの“限界”というのもあると強調しています。これはあくまでもカリフォルニアのデータで、人種構成も肥満度も日本とは違うため、同じ研究をぜひ日本でもやってほしいと話していました。また、調査の対象は25~75歳ですが、老化の加速度にもっと大きな差が出てくるのは70歳・80歳・90歳になった頃だと指摘しています。目安として44歳や60歳で、脂質・アルコール・炭水化物などの量を立ち止まって考えてほしいということです。
「スムージー」が老化予防にオススメ!
では、老いに備えるために今からできることは?
日本もアメリカ同様、炭水化物が多い食生活です。白澤院長によりますと、炭水化物をとりすぎないために、そして抗酸化作用の観点から、例えば朝ごはんを「スムージー」にするのもいい方法だということです。
白澤院長のオススメは、りんごと小松菜のスムージーです。分量や使う材料を自分でアレンジしてもOK。全てミキサーにかけるだけなので、事前に材料をカットしておけば、時間のない朝でもすぐにできて簡単です。
【材料】
・りんご(皮付き) 1/2個
・小松菜 20g
・豆乳か牛乳 60cc
・水 60cc
・はちみつ 10g
小松菜やりんごをそのまま食べるのももちろん体にいいですが、スムージーにすることで食材の細胞壁が壊れるため、栄養成分が外に出てきて吸収されやすくなります。
また、色とりどりのサラダが抗酸化力の期待大ということです。例えば、夏野菜は強い紫外線をたくさん浴びているため抗酸化力が非常に高いそうです。白澤院長はレインボーフーズという7色の野菜「ブロッコリー」「かぼちゃ」「カリフラワー」「赤パプリカ」「ブドウ」「椎茸」「黒ゴマ」を紹介しています。色の濃い野菜をしっかりとることで抗酸化力は相乗的に上がっていくということなので、サラダや温野菜などでとるとアンチエイジングが期待できるということです。
そしてもう一つのポイントです。よく適度な運動がいいと言われますが、白澤院長によりますと、激しい運動をすると逆に活性酸素が出てしまうということです。そのため、アスリートなどではない一般の人へのオススメは、例えばエスカレーターやエレベーターを使わず階段の上り下りをすること。日常の中で軽い運動をするライフスタイル作りが大事だということです。