結婚した夫婦の3組に1組が離婚する現代。中でも『熟年離婚』の割合が過去最高を記録しています。結婚20年以上、そして、子育てが落ち着いた夫婦の離婚が増えているようです。熟年離婚を決めた理由は?お金の問題はどうなる?離婚カウンセラーの岡野あつこさんへの取材などをもとに情報をまとめました。
結婚20年以上『熟年離婚』の割合が過去最高に
はじめに、離婚件数についてのデータ(厚生労働省より)を見ていきましょう。実は、離婚の“総数”は2002年をピークに減少しています。非婚化・晩婚化の流れもあり、婚姻件数が大幅に減っているからです。ただ、3組に1組が離婚しているという状況はここ20年以上続いていて、2002年で約38%、2022年で約35%となっています。
そうした中、同居期間20年以上の夫婦の『熟年離婚』の割合は増えています。1990年頃には15%以下でしたが、2022年は23.5%と過去最高値でした。
50歳以上限定マッチングアプリが盛況 『熟年離婚』の背景とは…
離婚カウンセラーの岡野あつこさんによると、今の熟年離婚の7~8割は女性から言い出すとのこと。主な理由は『態度』『浮気』『お金』で、昔は当たり前だったような“モラハラ”や“退職金の使い道”などで揉めるようです。また、男性側が離婚に抵抗して話し合いが長期化する傾向があり、このとき、「お金を渡したくない」など、お金の問題が出てくるそうです。その他にも様々な理由があります。
▼『長寿化』で夫婦で暮らす時間が長くなった
寿命が延びた現代では「あと30年も我慢するのか…」などと離婚に踏み切る人が増えた。
▼女性の『社会進出』の増加
女性が社会的に自立し、使えるお金が増えた。
▼『震災・コロナ』の影響で結婚も増えたが離婚も増えた
災害などを経験し、「寂しい」という思いが生まれる一方、「この人と一緒に居ていいのか」と思った人も。
▼『裁判所』がスピーディーに対応
離婚件数が多くなり、裁判所は1件1件に時間をかけられなくなったため、対応が迅速になった。
▼『出会い』が増えた
50歳以上限定のマッチングアプリが増えており、毎月1000人ずつ登録者が増えているサービスも。
▼『義理の親』と離れたい
夫・妻との関係はもちろん、相手の親との関係が我慢できない。
▼『介護』をしたくない
「人でなし」と言われないよう、介護が必要になる前(50代くらい)に別れる人も。
▼『子ども』の後押し
子どもがある程度の年齢になると、「親の幸せを考えると…」と後押ししてくれる。
▼人々の『意識』の変化
“世間体”が気にならなくなった。
▼妻が『家事・育児』を経験して強くなる
かつては夫に従っていた人も、夫と張り合うようになった。
岡野さんによると、近年熟年離婚が増えている大きな理由は『マッチングアプリ』で、出会いのチャンスが増えると「もっといい人がいるはず」と考えるようになるということです。
愛情よりお金!?リアルすぎる『熟年離婚』エピソード3選
次に、『熟年離婚』のリアルなエピソードを見てみましょう。こんなケースがあるようです。
▼恐るべし“妻の復しゅう心”
離婚を考えてからも、妻は夫に笑顔で尽くして、最後に「今までお世話になりました」と置き手紙をして突然いなくなる。夫はその後「どこに何があるか分からない」状態で、元気がなくなってしまう。
▼「お金がない」と言い張る夫
株・不動産・保険・貯金など、夫の資産を離婚前に確認したが、夫が「お金がない」と言い張り、財産分与を支払ってもらえない。
▼お小遣いをもらって離婚が立ち消えに
離婚すれば妻は5000万円以上もらえる予定で話が進んでいたが、ちょうど夫に退職金が入り、その一部“500万円”をお小遣いとして渡してくれた。妻は大喜びで、「旦那はやっぱりいい人だった」と、離婚の話が立ち消えになった。
つまり、熟年離婚後の幸せの度合いは“お金”に比例するということが見えてきます。“愛情”などではなく、“お金”というのが現実のようです。
独り身の高齢者問題・価値観の変化…『熟年離婚』の課題と未来
最後に、熟年離婚の課題と未来についてです。離婚カウンセラーの岡野さんのモットーは「離婚はしないにこしたことはない」ですが、「幸せになるなら離婚もアリ」だということです。ただ、熟年離婚には「経済的な不安」のほか「寂しい」というデメリットもあり、もう1度結婚したいと思う人も多いとのこと。
また、熟年離婚後に再婚しない場合、生活保護の増加・介護問題・認知症・孤独死といった「独り身の高齢者問題」に直面する恐れもあります。熟年離婚した人たちを社会がどのようにサポートしていくのか、その点も同時に考えていく必要があるかもしれません。
現在、熟年離婚を考える夫婦が結婚したのは昭和時代です。当時は働く女性も少なく、「妻は夫についていく」という“男性優位”の価値観が主流でした。現在の“男女平等”の価値観に適応できなかった人が別れるケースが多いのかもしれません。
結婚が多様化している現代では、『事実婚』『別居婚』だけでなく、一緒に暮らすが干渉しない『卒婚』や、お互いに『セカンドパートナー』を許容するなど、結婚にも様々な形が出てきています。現在は過渡期なのかもしれません。