8月5日、日経平均株価(終値)がたった1日で4451円も下がり、史上最大の下げ幅となりました。一方で6日は前日と打って変わり、一時3400円以上という過去最大の上昇幅を記録しました。この乱高下の原因、キーワードは「アメリカ」だということです。では、次に株価が大きく変わりそうなXデーは?私たちの生活はどうなる?専門家への取材などをもとに情報をまとめました。

日経平均株価 8月5日に歴代最大の下げ幅を記録

 今年1月に新NISAがスタートしてから日経平均株価は上昇していて7月11日にはバブル期を超える史上最高値4万2224円という数字もありました。しかし8月5日に過去最大の下げ幅で3万1458円になりました。
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 下落幅(終値比)をランキングで見てみると…

①今年8月5日:ー4451.28円
②1987年10月20日:ー3836.48円
③今年8月2日:ー2216.63円
④1990年4月2日:-1978.38円 
⑤1990年2月26日:-1569.10円

 ②はブラックマンデーの影響を受けて一気に下がりました。③は8月5日と同じ理由だと捉えられます。④と⑤とは1990年のバブル崩壊の時期でした。今回、8月5日の下落はこうした歴史的な出来事のとき以上ということになります。

 そもそも日経平均株価は日本の大企業225社の平均株価ですが、平均的な値動き(今年1月~7月)は1日240円程度です。

株価大暴落の主な要因① 利上げ

 なぜこのような状態になったのか、考えられるいくつかの理由を、りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員に教えてもらいました。株価大暴落の主な要因には「利上げ」「円高」「アメリカ」「マネーゲーム」の4つがあると言います。
 
 日本では金利を上げたり下げたりということを日本銀行がコントロールしています。これを簡単に説明すると、金利を上げると経済にブレーキをかける効果があります。景気も良くなればそれで良い気もしますが、景気が良くなりすぎると良くないそうです。例えば物価が上がりすぎるとスーパーインフレ、ハイパーインフレなどと言われ、上がり過ぎないように…というときには利上げを行います。

 逆に日本は冷え込む消費にアクセル、景気を後押しするために利下げを行いましょうということで、ゼロ金利を行ってきました。

 そうした中で7月31日、翌日の8月1日から政策金利を0.25%に引き上げる、つまりブレーキをかけると日銀の植田総裁が宣言しました。物価高にブレーキをかけようとしているわけなので、株価は下がることになりました。こうした効果もあって今回株価が下がったのではないかと言われています。
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 ではなぜ今、この利上げをしたのか?はっきりとした理由ははわかりませんが、「円安をどうにかしたい」ということが挙げられています。ただこの円高・円安が株にも関わってきます。

株価大暴落の主な要因② 円高

 日本の金利とアメリカの金利の差は大きく、日本の金利は上限0.25%に対し、アメリカの金利は上限5.5%になっています。仮に銀行にお金を預けた場合、アメリカでは5.5%利息が付きますが、日本はほとんど増えません。つまり、日米の金利差があればあるほど円が売られて米ドルが買われる円安になるということになります。これを何とか直すためには、この金利差を縮める必要があり、日本は金利を上げました。それにより、ようやく円高に進むのではないかということです。

株価大暴落の主な要因③ アメリカ

 株価大暴落の要因の1つであるアメリカ。専門家に言わせても、「アメリカ経済がよくわからん」状態だったと言います。
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 アメリカは日本と違い、物価も上昇していて景気が良さそうだとずっと言われてきました。日本の物価上昇は原材料費が上がっているだけで健全な物価上昇ではありませんが、アメリカはIT産業も活気があり健全に物価が上昇しています。物価が上がりすぎると生活しづらくなるので、ブレーキをかけるために高い金利である5.5%にしています。通常なら物価上昇率が収まるはずでしたが、なかなかこの物価上昇率が収まらないので、“よくわからない”状態になっているということです。ただ、金利を上げてブレーキかけているため「いつか失速するはず!」ということです。
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 しかしそんな中、日本時間の2日午後9時半に「アメリカの雇用状況が良くない」という統計が発表され、いよいよアメリカ景気が減速し始めるのではないかということです。「利上げ」「円高」に「アメリカの減速」が加わり、日本で大暴落が起きたのではないかと今のところ見られています。アメリカの減速が大不況、ひいては世界の不況に繋がるのか、もしくはソフトランディング(軟着陸)で良い頃合いに落ち着けるかは今後注目されます。

株価大暴落の主な要因④ “マネーゲーム”

 そうはいっても、日経平均株価の8月5日の下がり方、6日の上がり方は異常です。もう1つ要因があるんです。
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 8月5日の日経平均株価の動きは、午前の始まりとともに一気に2000円くらい下がりましたが、その後は小幅な高下を繰り返しています。その後の午後1時半過ぎからまた一気に下落し、最終的に4500円ほど下がることになりました。

 昼休みの間に何か発表があったわけではないのに、なぜ午後に一気に下がったのか。その要因は「マネーゲーム」。いわゆる投資家の人たちが“ここで下がるならもっと下がることを予想した取引をしておけば、結果的に後で儲かるのではないか”など思惑があって実際の出来事以上に株価が下がったのではないかと見られています。6日は一転して一気に上がりましたが、元財務官僚である慶応大学大学院の小幡績教授は「5日の午後はマネーゲームで下がったが、6日の取引で戻ったのはマネーゲームで下がった分ではないか」と分析しています。

円高・株安で私たちへの生活への影響はどうなる?

 では私たちの生活どんな影響があるのか、りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員と慶応大学大学院の小幡績教授の2人に聞きました。小幡教授は、物価は今後安くなる可能性があり、旅行も円高になることで行きやすくなるといいます。そして、NISAをやっていない大勢の人に影響が出ることはないのではないかということです。

 荒木さんは、訪日観光客が減少する可能性があるため、オーバーツーリズム問題が解消され国内旅行もしやすくなるかもしれないといいます。一方で、観光業や百貨店は減速するかもしれないという見解を示しました。

次に株価が変動するXデーは15日?20日?

 そして、次に株価が大きく変わりそうな日が2つあります。

 1つ目は8月15日。日本時間の14日午後9時半にアメリカの消費者物価指数が発表されます。6月の物価上昇率(前年同月比)は3.0%で5月よりも落ち着いたと発表されましたが、次に2%台になるか、また上がるのか。これによってアメリカが本格的な不況に入っていくのかどうか、この指標で日経平均株価は変わってくるということです。

 そして2つ目が8月20日。アメリカは大統領選があり、現地時間19日に民主党の全国党大会があります。短期的にはトランプ前大統領の共和党政権がアメリカ景気を良くすると言われていますが、民主党のカマラ・ハリス副大統領がどんな経済政策を出してくるのかによって、株価が変わってくると見られています。