自民党・安倍派の政治資金パーティーをめぐるキックバック・裏金疑惑。安倍派の宮沢博行議員は、収支報告書への不記載は「派閥からの指示」だったと語り、裏金疑惑の発覚後に「かん口令」が敷かれたことも暴露しました。これについて政治ジャーナリストの武田一顕さんは12月14日の放送では「安倍派5人衆への不満を代弁して爆弾発言したという側面があるそうだ」と裏事情を明かしました。そして12月15日の放送でさらに、宮沢議員が活動する「日本を明るくする会」も背景の一つにあると解説。「日本を明るくする会」の名誉総裁は菅義偉さんだといい「菅さんは岸田政権に批判的だから、宮沢さんは菅さんに相談して、今なら言っちゃえとアドバイスを受けて、爆弾発言につながったようだ」と話しました。(2023年12月15日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎武田一顕:ジャーナリスト 元TBS記者 元JNN北京特派員 中国情勢に精通 小渕内閣以降の歴代政権を取材 愛称は「国会王子」

――連日報道されている「派閥」。そもそも議員は、派閥にどうやって入るのですか?

(政治ジャーナリスト武田一顕氏)派閥は、簡単に言えば自分たちのボスを自民党の総裁にして、総理大臣にしたい人たちの集まりです。最後は多数決なので、できるだけグループを広げたいわけです。そのために、初当選の前とか、初当選の直後ぐらいに今ある派閥が「唾をつけていく」わけです。うちの派閥に入らないか、と大学のサークルや運動部の勧誘と一緒で、入るといいことあるよ、など言って。

(武田氏)派閥ごとに少しずつ政治理念が違っていて、例えば安倍派はやや右寄り『タカ派』と言われますよね。岸田総理がいる「宏池会」は、リベラルと言われています。入る人は自分の理念と照らし合わせて、肌に合うかどうかを決めていきます。 

関西の安倍派議員の面々は…

(武田氏)派閥ごとに少しずつ政治理念が違っていて、例えば安倍派はやや右寄り『タカ派』と言われますよね。岸田総理がいる「宏池会」は、リベラルと言われています。入る人は自分の理念と照らし合わせて、肌に合うかどうかを決めていきます。

――安倍派に所属する関西の国会議員、事務所に取材しました。兵庫・加田裕之参議院議員の事務所は文書で、「刑事告発をされているので、慎重に事実関係を確認し、適切に対応してまいります。」というコメントが出ました。

――また、奈良・佐藤啓参議院議員の事務所で応対した方は、「すいませんが、私はそこまでお答えはできない」という返答で、関西で直接取材に答える人はいませんでした。一方で、堀井学前副大臣は、キックバックは5年間で1200万円あった、受け取り方法は、現金手渡しだったと話していて、認める人も出ています。

書かないから「他のところに使ってるんでしょ」と

(武田氏)政治資金規正法は、「お金はいくら集めてもいいです、使ってもいいです、ただし範囲内で必ず収入も支出も書いてください。」というもの、個人や企業がやっているのと同じことをやってください、っていうのが政治資金規正法なのに、それをやっていないというのが、キックバック問題の根深いところです。

堀井さんが言うように、本当に人件費などに使ってるんなら書けばいいじゃない、ということだから、「他のところに使ってるんでしょ」ってみんなが思うわけです。

(武田氏)例えば票の取りまとめ。地元の議員などに、票の取りまとめをお願いするときに現金渡しちゃってんじゃないか、っていうのがよくあるパターン。誰か票をまとめる人にまとめて渡すわけです。ポストに1万円とか2万円入れる、なんてのはできませんから、地元で票を持ってる有力者に現金を渡す。この数年、議員とか元議員が逮捕されるってのはそこですよね。

見た目が”明るい”面々「日本を明るくする会」名誉総裁は…

――宮沢博行前防衛副大臣の発言にも注目が集まっています。

(武田氏)いち早く暴露した。宮沢さんは政治家として、愚かな人じゃないでしょうから、次の選挙のことも当然考えているわけです。「今言った方がいい」という判断をしたのと、もう一つ宮沢さんに注目してほしいのは、今回のキーワードが「日本を明るくする会」という議員グループなんです。ヘアスタイルに注目してほしいんだけど、髪の薄い人たちが集まる議員グループなんです。

 2012年12月、「安倍チルドレン」の同期生がみんなで集まって、見た目明るいメンバーで作ったと。その名誉総裁になっているのが、菅義偉(前総理大臣)さんなんです。もちろん政策で明るくしようというのと、かけているわけですけど、宮沢前副大臣というのは、安倍派でありながら、実は「日本を明るくする会」というサークルみたいなものでは、菅さんと近い存在。で、菅さんは今の岸田政権に対しては、非常に批判的なんです。

(武田氏)どうも私が取材で聞いたところによると、宮沢さんは事前に菅さんと相談して、今だったら言っちゃえ、と。あんたの政治的な立場にとっても良いことだ、っていうので、アドバイスを受けて、宮沢さんの爆弾発言に繋がったと。

 安倍派が分裂って言われるんですけれど、私きょうも電話で何人か取材しましたけど、分裂という人は「ほとんどいない」んです。そうじゃなくて、1人ずつポロポロ抜けていっちゃうんです。それが少なければある程度塊で残るんだけど、本当にボロボロボロボロ抜けてっちゃえば、溶けていく状況になっちゃうから、そこに危機感を持っているっていうのが、今の安倍派の状況です。

――自白、暴露が得だと、そんなふうに考える人もいるかもしれないですね。

(武田氏)この先、検察の家宅捜索がやるかどうか、やるならいつか、それから議員の事情聴取、もしかしたらもうやっているかも知れない。これはホテルに呼ぶんです、ホテルの部屋なんかで話を聞くんです。最初に暴露して、こういう理由だ、派閥の指示だ、私は悪くない、などとできるだけ早く逃げきりたいってことですよね。特に若手の議員から、反乱というのか、暴露合戦が始まってくる可能性もあります。

――国民としては、本当に政治が良くなってほしいという気持ちを忘れずに捜査の行方に注目したいです。お金の問題をどうするのか、考えなければいけません。