日本中でカメムシが大量発生しています。一体どんな影響が出ているのでしょうか。また、カメムシとはそもそもどんな虫なのか、なぜ急増したのかを専門家に聞きました。
関西各地でカメムシ急増中!農作物に影響与えることも
福岡県内で撮影された街灯に集まる大量の緑の虫。カメムシです。
佐賀県武雄市のホームセンターの照明にもたくさんのカメムシが。農林水産省は9月13日、カメムシが今後一部地域で多く発生すると発表。こうした状況は関西各地でも確認されています。
JR西日本の新三田駅にはこんな掲示がありました。
『只今、カメムシが大量発生しております。強烈な悪臭を放つため、足元の注意と、列車内への侵入防止に皆様のご協力をお願い致します』
大阪市北区にある毎日放送本社周辺でも、河田直也アナウンサーが見て回るとたくさんのカメムシを発見しました。
(河田アナウンサー)「大阪市でもカメムシがけっこういるんですよ。私の足元にもいます。死んでしまっていますけども。ここにもいる。ここにも、ここは重なるように2匹のカメムシですね」
さらに生きているカメムシの匂いをかいでみると…。
(河田アナウンサー)「くさっくさっくさっ!やっぱりくさいです」
人に害を与えることはないものの不快に思う人が多いカメムシ。カメムシの調査をしている京都府病害虫防除所でも、農家への注意喚起を行うため、京都府内3か所(京田辺市・亀岡市・京丹後市)に「カメムシの調査箱」を設置していますが、9月26日に取れたのは…。
(京都府病害虫防除所 浅井信一さん)「今回問題となっているのがこのツヤアオカメムシ。これがチャバネアオカメムシ。チャバネアオカメムシが20匹くらい、ツヤアオカメムシは数匹。だいたい5日分のデータとなります」
京都府では、箱に入っている数でカメムシの発生状況を確認していますが、最近になって急激にその数が増え、都心部でも問い合わせが増えているといいます。
(浅井信一さん)「先週ごろから、住宅を管理されている方から『住民から街灯に緑のカメムシがいっぱいいるけどこれは何ですか、どうしたらいいですか』という相談はよくありました」
このカメムシは農作物には大きな影響を与えるといいます。
(浅井信一さん)「果実に針をさして中の汁を吸う。すると果実がだんだんと茶色く変色したりへこんできたりして、売り物にならなくなるという被害があります」
カメムシ専用の殺虫剤が売り切れ状態に
カメムシ大量発生の影響はこんなところにも。カインズ東大阪店で殺虫剤の売り場に案内してもらうと…。
(カインズ東大阪店 小林真優さん)「カメムシの殺虫剤は問い合わせが先週ごろから殺到しておりまして今は売り切れている状態となっております。この近隣でカメムシが大量発生しているということで、先週の1.5倍ほどは売れておりまして、電話でのお問い合わせもすごく増えております。(Q1日何件くらい?)先週の日曜日は10件~20件ほど」
こちらのホームセンターではカメムシ専用の殺虫剤は完売状態。取材中も駆除グッズを求める客の姿がありました。
(客)「最近カメムシとかいっぱいいるのでどうしようかなと」
(客)「おとといくらいからマンションの前にずらーっと。息子も『家に入れない』と言うくらい」
カメムシがくさい理由とは そのにおいでカメムシ自身が死ぬことも!?
カメムシが急増しているのは一体なぜなのか?また、カメムシを見つけた時にどう対処すればいいのか、害虫防除技術研究所・所長の白井良和さんに話を聞きました。
―――そもそもの話なのですが、カメムシはなぜあんなにくさいんですか?
(白井さん)「敵から身を守るために自分が助かるように、においを出すということです。威嚇しているということですね」
―――あのにおいは皆さんも一度はかいだことがあると思いますが、口の中が苦くなるような、とにかく不快になるにおいですよね。あとにおいがついてしまうとなかなか取れないのも難点です。日本ではたくさんの種類のカメムシが確認されているんですが、よく見られるカメムシというのがツヤアオカメムシ、緑色のものですね。そして茶色っぽいクサギカメムシ。どちらも体長15mmぐらいなんですが、もう1つ、体長が約5mmのマルカメムシというものもありまして、これは干してある洗濯物やお布団にくっついてるのを見たことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。種類にもよるんですが、おおむね卵から50日ほどで成虫になります。人間に対しては悪臭を発するということで不快な害虫として認識されています。ですが農作物に対して、稲・果物・豆などの汁を吸う農業害虫と指定されている。現時点で21府県で注意報が出ているということですから、農業への影響は心配ですよね?
(白井さん)「その通りですね。やはり少しでも汁を吸ったら見栄えが悪くなるということで、かなりの被害が心配です」
―――カメムシ対策というのは農業ではどのようにしているのですか?
(白井さん)「やはり農薬を使うんですけども、抵抗性があっても困りますから、なかなか苦労されているんじゃないかと思いますね。最近はカメムシに適した殺虫剤というものも市販されていますね」
―――あとはにおいがきついですが、毒などの害はないというふうに考えて大丈夫ですか?
(白井さん)「そうですね。毒があって何か起こったというのは聞いたことがないので、強烈なにおいが不快であるということですね」
―――ちなみにどれぐらい強力かと言いますと、カメムシ自身が自分が出したにおいで死ぬくらいだと言われているんですよね?
(白井さん)「そうなんですよね。換気されている状態だといいんですけど、密閉された入れ物とか、高濃度になると自分も死んでしまうということですね」
今年の夏は気温が高く成虫になる個体数が多かった
―――カメムシが今なぜ大量発生しているのかというのを見ていきます。白井所長によりますと、今年の夏は日本全国かなり気温が高かったことで、卵から順調に成長して成虫になる個体数というのがそもそも増えてしまったのではないかということなんですね?
(白井さん)「そうですね。昆虫全般に蚊やセミもそうなんですけど、すごく早くから出ていて個体数も多くなって、早めにいなくなってるんですけど、未だにたくさん増えているものもあるので注意が必要ということですね」
―――白井さんによりますと過去にもカメムシが大量発生した年があるとのことなのですが、やはりそういう年はその農業への影響なんかもあったんでしょうか?
(白井さん)「そうですね。やはり少なくとも果物の見栄えが悪くなって、やはり売れないっていうことで被害があったと考えられますね」
「越冬するカメムシが室内に入る可能性も」この冬は警戒を!
―――もし室内などでカメムシを見つけたらどう対処したらいいのかというところも見ていきます。カメムシは危険を感じるとくさいにおいを出すということです。なので室内でカメムシを見つけたらティッシュ・網・瓶などでそーっと捕獲して外に放すというのを心がけてください。素手では絶対に触らないようにということです。また殺虫剤などを使うのもおすすめということです。瓶が一番おすすめだという話もありました。そして、室内にそもそも入れないためには、窓や雨戸をしっかりと閉めましょう。あと洗濯物をしっかりチェックした上で中に取り込んでください。そしてカメムシへの警戒はいつまで続ければいいのか、越冬するカメムシの種類もありまして、そういったカメムシが冬を越すために暖かい室内に入ってくる可能性が今後あるそうなんです。なのでこの冬はできるだけ警戒を続けてほしいということです。そこでお聞きしたいのですが、カメムシが一番増える季節はいつなんですか?
(白井さん)「それは今の時期、夏とかなんですけども、やはりその成虫で越冬するやつっていうのは、集団で家の中に入ろうとしたりホテルとか旅館に入ろうとしたりするので、大量に見るっていうのは冬の方が種類によってはあるかもしれないですね。暖冬であってもカメムシにとってはちょっと寒いといいますか、ですから同じように室内に入るんじゃないかと思いますから、現在その個体数が増えている状態でクサギカメムシなどが越冬するということであれば、冬も多いことが心配されるということですね」
◎白井良和:元殺虫剤メーカー研究員 害虫・害獣駆除業務を経験 虫よけ等の害虫試験や動画投稿、Web記事監修を行う
(2023年9月26日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)