旧統一教会の韓鶴子総裁が幹部らを前に「岸田をここに呼びつけ教育を受けさせなさい」「日本は滅ぶしかない」と日本政府を批判した音声が明らかになっています。この音声について旧統一教会を取材している鈴木エイト氏は「安倍元総理の銃撃以降、日本からの送金がなされておらず、教団は財政難にある」とし、また「戦犯国の日本は賠償すべき」といった発言については「日本からの献金を正当化しようとしている」と話します。(2023年7月5日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎鈴木エイト氏(ジャーナリスト、旧統一教会を約20年取材、政治家との関係について鋭く追及)

教団の財政難は「粉飾の発覚」「訴訟で700億円くらいの賠償金」

―韓鶴子総裁がこう話しています。「岸田をここに呼びつけて教育を受けさせなさい。日本は第二次世界大戦の戦犯国。ならば賠償すべきでしょう。被害を与えた国に」。この会合は6月28日に日本の幹部ら約1200人を集めて話したということですけども、その1200人の幹部たちがこれを聞いて、ワーッと声を上げ拍手する音声も入っていました。あれはどういうふうに見たらいいんでしょうか。

鈴木エイト氏: あの状況で韓鶴子総裁の発言に逆らうってことはありえなくて。これをウラ読みすると、献金を集めることを正当化している発言にほかならないです。「過去の戦争の経緯を踏まえて賠償すべき」というのは、日本のお金を統一教会に賠償する必要は何もないはずなんですけど、そこをうまくすり替えて、信者に対しても、そういうことをこれまでもずっと刷り込んできているんですよね。

―エイトさんは、「教会内部はいま、粉飾発覚や金銭トラブルで財政難。事件後、日本からの送金も滞っている」とみています。

鈴木エイト氏: 教団のナンバー2が追放されて、その人が韓鶴子総裁にうその報告ばっかりしていたようなんですよ。教団の財政がかなり悪化してるってことを初めて韓鶴子総裁が5月に知り、さらに分派である三男派との訴訟に敗れた件とかで、700億円ぐらいの賠償金を払わなくてはならなくなっています。昨年の安倍晋三元首相銃撃事件以降、日本から韓国に送金がなされていないとそういう中で、お金に困っている中で、こういう発言が出るのはある程度当然なのかなと思います。

―以前、専門家の方に教えてもらったんですけども、旧統一教会は世界各国に教会があって、ただその資金源というのはほとんどが日本だということですね?

鈴木エイト氏: 教会だけでなく関連会社であるとか、いろんな経済団体もあってですね、そういうところにもほとんど全て採算が悪いところは日本からのお金が充当されているってことを言われています。

「旧統一教会問題、一段落ついたような空気を作りたがってる人たちがいる」

―そういう意味では、教会自体は非常に金銭的に経済的には厳しい状況に陥っていると?

鈴木エイト氏: 韓国国内の優良な不動産を売りに出していたりとかいう情報もあるんですよね。

―振り返ります。安倍元総理銃撃事件を機に表面化した旧統一教会問題。高額献金とか、霊感商法とか、2世信者とか、そして政治と旧統一教会、様々なことが浮き彫りになってきた。

REINAさん: 事件後に自民党の中でも党内調査したりとか、昨年末には被害者を救済する目的の新しい法律が作られたり、すごい早いペースでいろいろ進んだと思いつつも、「あれなんかちょっと終わったかな」っていう感じもちょっと漂っているというのが、ちょっと心配ですよね。

鈴木エイト氏: そこが狙いなんでしょうね。自民党の内部点検なんて実は本当にゆるいもので、最初から枠も決められていて、組織性があることは書けないような内容だったんですよね。形だけ点検しましたと。被害者救済法と不当寄付勧誘防止法も一応成立したんですけれども実効性も薄い。ただそんな中で、年をまたいだことによって何か一段落ついてしまったような空気を作りたがってる人たちが、追及されたくない政治家がいるんだなって感じはしますよね。

豊田真由子氏: 私は全然関係はなかったんですけど、やっぱり政治家の人って、自分の身に、まずいものから、サーっと逃げていく習性があるので、気持ちとしては皆さんもう関わりたくないっていうふうに思っていると思います。これだけ言われたら、自分にとってマイナスしかないと思うから、そういう意味の「手のひら返し」はものすごい皆さん得意なので。

鈴木エイト氏: 今後また選挙があると、そこでどう動いてくるかわからないですよね。これまで統一教会のおかげで当選したような政治家。運動員を無尽蔵に供給してくれますので、そういう感じで選挙が成り立つかっていう問題もあるし、教団側から何かしらの証拠を押さえられているような政治家は、やっぱりそこの綱引きをしながら、教団の顔色を伺いながらやらざるを得ない。

豊田真由子氏: 確かに関わり方がどういう選挙形態かによっても違っていて、多分衆議院の小選挙区の人っていうのはそんなに影響がないんですけど、参議院の全国区で団体票として、その旧統一教会の票で当選されたような方にとっては、やっぱり影響がすごく大きいので、これまでの関わり方によってどういうふうに対応をするかは、それは違うと思う。

鈴木エイト氏: 票数はたいしたことないのでやっぱりそのマンパワーですよね。

この1年、教会内部の変化に気づいたこと

―この1年で教団の内部を取材していて、何か変化を感じますか?

鈴木エイト氏: 韓国でお家騒動とかいろいろあるんですけれども、外部に対しての攻撃性を増しているんです。スラップ訴訟であるとか、メディアを訴えたり、コメンテーター。直近であると弁護士団体の関連団体が訴訟を起こしたりしてるんですよね。やっぱり解散命令請求をされたくないであるとか、「うちの団体を扱うと面倒くさいぞ」っていうサインを出している。

特に報道被害によって「教団は正しいのに被害を受けている。迫害だ」というようなことを内部で言っているので、そういう感じで外部に対しての攻撃性というのはちょっと気になるとこですよね。

―エイトさんは20年以上追及しているわけじゃないですか。何か実害みたいなことは?

鈴木エイト氏: いろいろ怪文書まかれたりとか、不審者が自宅の周辺をうろついたりってことはあったんですけど、その程度なので、それよりは今後ちょっとまた違う方面から問題が出てくるかなと見ていますね。

―いっぽう、山上徹也被告について。エイトさんは、「山上被告がエイトさんの記事を読んでいたことを知る。犯行前の山上被告からDM=ダイレクトメッセージをもらっていた」ということなんですね。

鈴木エイト氏: それに気づいたのは今年1月なんですね。彼のアカウントが凍結されてしまったことによって、確認ができていなかった。事件の9日前に彼からメッセージが来ていて、やり取りをしていたんですね。当初は返事が来なかったって話を聞いていて、もしそこに事件を示唆する内容が書かれていたとしたら、自分が事件を止められる存在だったんじゃないかってことで、かなり落ち込んだんですけれど。

ただ実際のメッセージの内容は7月10日に教団イベントが行われると。そこにどういうゲストがくるか知りませんかって照会だったんです。ただそのメッセージの中で一番重要なのはそこではなくてですね、彼が僕の記事をこれまでずっと読んでいたという旨が書いてあったんですね。ということは彼が安倍晋三元首相を狙った動機面においてですね、安倍元首相を狙った動機面における担保、それの根拠が僕の記事だったってことになるので、記事の確度というものが問われる事態になるなっていうことになったんですよ。

その過程で、鈴木エイトが山上徹也被告をそそのかしたんじゃないかとか。鈴木エイトのいい加減な記事を読んで安倍さんが亡くなったんだ、みたいなことで、結構ネット上で攻撃はされています。当然僕はジャーナリストで事実を書いてきたので、全く引くことはないんですけど、ただそういうふうに曲解をして、攻撃を仕掛けたりしてくる人は今後現れうるなと思っています。

解散命令は…豊田氏「過去に比べハードル高い」鈴木氏「僕はちょっと意見が違う」

―旧統一教会の調査が長期化しています。文化庁による調査は継続中。質問権行使、今日までに6回質問権が行使されました。ここで違法性があれば、文科省が裁判所に解散命令を請求します。認められれば、宗教法人格を剥奪されるという流れになります。解散命令請求への判断が長期化している理由、松野官房長官は「客観的な事実を明らかにするため丁寧に進めている」といいますが、豊田さんはこの一連の流れに関してどういうふうに見ていますか?

豊田真由子氏: 私は時間もかかると以前から思っていて、多分文科省は請求を出したいんです。だって自分が責められるのはやっぱり嫌だから、だけど結局判断するのは裁判所なので、そうするとやっぱり宗教法人の解散命令ってものすごくハードルが高いと言われていて、これまでもオウム真理教と明覚寺の2件しかなく、それも条文でいうとただの違法性では駄目で、「公共の福祉を害すると明らかに認められる」というのがあって、過去の例と比べると、どれだけ同じぐらいのハードルを超える証拠が集まっているかっていうと、ちょっと今の状況ではそんなに簡単ではないのかなと思います。

―解散命令の請求を出すのが難しいんですか?

豊田真由子氏: 出すのはできるんですけど、裁判所の判断が難しい。明覚寺は霊感商法だったんですけど、もう本当に明らかに宗教活動のを装ったただの金集めだったというふうに認定されて、実際その教団の幹部が詐欺罪とかで実刑判決を受けている、っていうところまでちゃんと立件できた上で解散命令を出している。今の旧統一教会がやっていることには、いろんな問題がもちろんあるんですが、今の状況のその証拠という事実関係の認定で、裁判所が解散命令を出せるかっていうと、過去の例と比べるとちょっとハードルが高いのではないか。

鈴木エイト氏: いや、僕は意見が違っていて、解散命令請求の要件というのは、「組織性、悪質性、継続性」なんですね。それからいくと旧統一教会は、明覚寺の比にならないですよ。別に刑事事件に限られてるわけじゃないので、文化庁もかなり慎重に証拠を集めていて、証拠集めがかなり綿密に、あらゆる角度から検証しているので、これだけ時間がかかっている。状況からして6月いっぱいで証拠調べが終わって、次の段階に今進んでいる状況なので、そこからすると、この夏には解散命令請求は確実に出されると思います。

―ただし、エイトさんは「教会と関係の深い政治家が圧力をかけることを危惧」といいます、これが気になるんですけども。

鈴木エイト氏: 国が解散命令請求を出せば、ある程度通ると僕は思っていて、その証拠もかなりつめているんですけど、ただそこでもしひっくり返るとすれば、そこをさせない、教団から何かしら弱みを握られているような政治家がストップをかけるような動きが起こりうるので、そこは要注意で、よく監視をすべきだと思います。

―いずれにしてもエイトさんの取材によると、この夏に動きがあるんじゃないかと?

鈴木エイト氏:確実にあると思います。