セブン&アイHDの株主総会が開催され、米投資ファンド「バリューアクト・キャピタル」が、井阪隆一社長ら4人の取締役を外すことを求めた株主提案は否決されました。コンビニ事業への経営集中を求めたファンド側に対し、セブン側の「イトーヨーカ堂」の食品開発力を生かしたシナジー効果の訴えが株主に認められた形。岩井コスモ証券の有沢正一氏は「しかし、このままでは終わらない。セブン側はイトーヨーカ堂を持つ強みをもっと示していかないといけない」と話します。(2023年5月25日MBSテレビ「よんチャンTV」より)

アメリカ式経営「コンビニ事業を切り離してどんどん成長させていけばいい」  

---岩井コスモ証券の投資調査部長の有沢正一さんの解説です。セブン&アイ・ホールディングスの営業利益の構造は、国内と国外のコンビニがおよそ9割、スーパーは2%にとどまります。これに対し、物言う株主で知られるアメリカのバリューアクト・キャピタルが、低迷するスーパーの再建に力を注ぐよりも、コンビニ事業を独立させて経営資源を集中させるべきと主張していた。これに対して有沢さんは、「アメリカと日本の経営思想の違いでは」と。バリューアクトキャピタルはアメリカの会社、日米の考え方の違いというのはあるんですか?

(有沢正一氏)それもあると思いますね。アメリカの企業は、あまり一つの企業がいろんなことやらないんですよ。日本は結構、いろいろするじゃないですか。アメリカの企業の場合は、一つのものがどんどん伸びてきたら、もう会社から出て新しい会社で独立するっていうやり方が多いです。だからこのファンドの人たちから見ると、セブンアンドアイに関していうと「もうコンビニ事業を切り離してどんどん成長させていけばいいんじゃないか」という考え方になったのかなと思います。

(ジャーナリスト立岩陽一郎氏)(イトーヨーカドーは)よく使います。コンビニも使うけれど、やっぱりいいものを買う、例えば生鮮食料なんか買おうと思ったら、コンビニ行きますか?いかないですよね。特に関西はあまりイトーヨーカ堂はないですけど。阿倍野にありますから、うちの家族はよく行きます。やっぱり魚なんか買うのはイトーヨーカ堂です。

---儲かっている事業をより伸ばすべきとするバリューアクト・キャピタルは「物言う株主」としても知られているんですが、有沢さんは「物言う株主」というと厄介者のイメージがあるんだけども、今はそうでもないと。

バリュー社の企業価値向上の実績「マイクロソフト7倍、オリンパス3倍」  

(有沢正一氏)「物言う株主」というのは、聞こえがちょっと悪い気はしますね。彼らが目指しているのは企業価値の向上です。今の経営陣も企業価値の向上を目指しているわけでしょ。ゴールは一緒なんですよね。進め方の違い。こっちの方がいいんじゃないかっていうことを言ってるだけであって、「厄介者」とか「うるさいな」というのはやめてあげた方がいい。真摯に彼らの言っていることも聞いて、自分たちの経営の中に取り入れていけばいいんじゃないかなと思います。

---実績もあります。過去の事例で、例えばマイクロソフトに取締役を送って、株価が7倍以上に上がった。すごいですね。日本の企業オリンパスにも取締役を送って株価が3倍になった。投資動向に注目が集まっているという企業でもあります。バリューアクトと時間をかけてしっかりと調整を進めてきていたということなんですよね?

(有沢正一氏)ただ結果として社長の退任を求めるなんていう提案を出してるわけですから、必ずしも話し合いは建設的には進んでなかったんじゃないかなと思います。

---今日のセブン&アイ・ホールディングスの株主総会では、投資会社バリューアクトの提案「井坂社長の退任」は否決されました。コンビニ事業の独立も拒否されましたが、一方で、イトーヨーカ堂の不採算店舗を閉鎖するという改善策は明らかにしました。バリューアクトはかねてから、同社の戦略ミスの責任は社長にあると非難しており、今後も火種を残している。今後どうなりそうですかね?

(有沢正一氏)「もう私達の提案は諦めます」とはならないでしょ。これからもう話し合いというか、いろいろ声をかけていくと思いますし、イトーヨーカ堂の不採算店舗を閉鎖するって言っていますけどね、改善を進める方針を示していますけど、これでは彼らは満足しませんよ。これぐらいのことだったらすぐできますもん。彼らが求めているのはもっと変革的なことですから。(セブン側)会社側が言っているのは、コンビニもこの状態で成長が続くとは思えないんですよ。ある程度飽和しているんで。で、コンビニが厳しくなったときに強みを発揮できるのは食品分野だとそのときにイトーヨーカ堂の力が発揮できるって言っているんですよね。だから、その姿っていうのをもっともっと具体的に出していかないと、こういう形でこうなったらイトーヨーカ堂と一緒にいることが、役に立ちます。立ちますよっていうようなことを丁寧に具体的にいろいろ説明していくべきじゃないかなと思いますね。

◎有沢正一氏(岩井コスモス証券 投資調査部長 関西の企業調査やマクロ経済の分析に注力)