女子大学生に毒性のあるタリウムを摂取させて殺害したとして起訴された不動産会社元社長・宮本一希被告(37)が、2020年7月に叔母(61)をタリウムで殺害しようとしたとして再逮捕されました。病院に残された叔母の血液からタリウムが検出されたということです。その後の捜査で叔母から5000万円が引き出されているなど叔母の財産の流れと宮本容疑者の関連を警察が調べています。今後の捜査について元埼玉県警科捜研で現在は法科学研究センターの雨宮正欣所長は「タリウムの入手経路と摂取方法の解明が重要」と話します。(2023年5月24日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

雨宮正欣氏(法科学研究センター所長 元埼玉県警科学捜査研究所 乱用薬物科長 鑑定経験は23年間5000件以上 法廷での証人尋問も)

「劇物タリウムを入手するには三つの方法がある」

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---2020年の7月、容疑者の叔母が体調不良で病院を受診しました。自宅で療養していましたが、容体が急変し意識不明で、今も入院中です。そこから2年後の2022年10月15日、当時21歳だった濱野さんがタリウム中毒による急性呼吸窮迫症候群で死亡しました。事件当日、宮本容疑者のスマホには、タリウム関連の検索履歴が複数回残っていたということです。

2023年3月に宮本容疑者を濱野さんに対する殺人容疑で逮捕しました。また、叔母が意識不明になる1ヶ月前に宮本容疑者の父が孤独死していたということが確認されています。これらの関連はまだよくわかっていませんが、事実として父親が亡くなっています。そして今日、叔母にもタリウムを摂取させたかということで、宮本容疑者を殺人未遂の容疑で再逮捕しました。病院が保管していた叔母の血液からタリウムが検出されたことと、そして叔母が社長を務める不動産会社に関しては、入院の3ヶ月後に容疑者が社長になっていたということもわかっています。

---そもそもタリウムとは、どういうものなのでしょうか?

(雨宮正欣氏)一般的にはあまり流通していないような物質。以前は殺鼠剤といってネズミを駆除する薬とかで一部使われていました。ほとんど無味無臭で、普通の人が買うのもなかなか難しいです。劇物にも指定されていますので、買った以上は必ず記録が残るような物質ということになります。

---叔母が体調不良で意識不明現在も入院しています。意識不明に陥ったのが2020年7月、およそ3年前です。その叔母の血液からタリウムが検出されたということですが、病院は3年前の叔母の血液を採取して保管していたということなのでしょうか?

(雨宮正欣氏)一般的には、血液とか尿は保管していないのですが、担当の医師が何か不審に思われたということで、おそらく一部を採取して残したという形だと思います。

---タリウムがどういうものなのか、改めて見ていきます。劇物のタリウムは白い粉のような形状で、水に溶けやすく無味無臭、致死量はおよそ1g(=1円玉ほどの重さ)です。現在、毒物および劇物取締法で規制されています。販売するには各都道府県の知事に登録が必要で、18歳未満・氏名・職業・住所を確認できない人には販売できないので、購入も販売も手軽にできるものではないということです。

---手軽に入手することができないタリウムを、宮本容疑者はどうやって入手したと考えられますか?

(雨宮正欣氏)1つは正規なルートというか、研究室や実験室といった試薬レベルでしたら購入することは可能です。この場合、記録は当然残っております。2番目は、正規に入手したタリウムを、例えば盗んだとか、秘密裏に譲り受けたとかそういうことも考えられます。第3の方法は、可能性として低いのですが、昔使われていた殺鼠剤からタリウムを取り出すということです。こういうことをすればタリウムを得ることができますが、非常に含有量が少ないですから、殺鼠剤で人を殺めるということはなかなか難しいです。

---実験用であれば買おうと思えば買えるということなんですよね。

(雨宮正欣氏)試薬としてなら、合法的に買うことはできます。

---タリウムは、犯罪であまり使われず、判別しにくいというのはどういったポイントなんでしょうか?

(雨宮正欣氏)まずタリウム中毒の例が少ないので、お医者さんも実際にタリウム中毒の患者さんを診た経験が非常に少ないですね。初めに現れる症状というのは別にタリウム特有のいわゆる症状ではないんですね。時間が経つと、脱毛など典型的な症状がある程度出てきますが、初期の段階ではなかなか出てきません。そして、一般的な検査の初めの項目にタリウムという項目が入ってないということが多いでしょうから、初めに気づくのが難しいということになりますね。

宮本容疑者は、叔母の貸しビル会社への入社を断られ、そのあとに叔母は入院 今も意識不明

---今、黙秘を続ける宮本容疑者について、先ほど警察の発表で新しいことがわかってきました。

叔母の財産を得る目的等で殺害を考えたかという発表です。動機は財産目当てと見られるということです。叔母が営む貸しビル業の会社に入りたいと再三容疑者が申し込んでいましたが、叔母は拒否をしていたということです。叔母が入院した2020年7月から1年5ヶ月ほどで、合計5000万円が引き出されている、そのうち3000万円を引き出した口座のキャッシュカードは、容疑者が保持しているということです。今回、叔母の症状が筋肉痛やけん怠感、消化器の障害、脱毛を発症していた、これらがタリウムの摂取とみて捜査が開始されたということです。

---こういった症状はいわゆる典型的なタリウムの症状であるということは言えるわけですか。
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(雨宮正欣氏)全てが全て典型的というわけではなく、タリウムならばこういう症状が起きるということです。脱毛は結構典型的な症状だと思いますけども。

---今後の捜査のポイントは?

(雨宮正欣氏)タリウムの入手経路、それからどのように被害者にタリウムを使用したかということです。
それと、女子大生の事件と今回の事件の関連性です。残念ながらタリウム同士を比較して同じタリウムであるかどうかはわからない。ですからそれ以外の方法で何らかの関連性を捜査することは重要になってくると思います。