G7広島サミットに“電撃参加”したゼレンスキー大統領。世界が注目したゼレンスキー大統領の会見について大和大学の佐々木正明教授は知人のウクライナ人に連絡したところ、「多くの人が生中継でみていた。歴史的なサミットだ」と絶賛。一方、ロシアでは「ゼレンスキー大統領の陰謀が始まった」と否定的な報道。実際の成果としてゼレンスキー大統領がグローバルサウス(第三国)の国々の首脳と直接対話して「ロシア寄りにならないよう釘を刺した」と佐々木教授は評価しています。(2023年5月22日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
―――ゼレンスキー大統領の会見を見てどのような印象を受けましたか。
やはり「言葉を大事にするリーダーだな」と。思い返してみると俳優でありコメディアン、カメラの前でどのように映されるかよくわかっている大統領のやり取りだったなと感じました。
―――ウクライナでは、ゼレンスキー大統領の広島訪問は、どういう伝わり方でしょうか。
ウクライナの多くの方に連絡しましたら、「生中継で見ている」と。大統領の会見は生中継されていたそうです。そして、何人かが「歴史的だ、これは歴史的なサミットだ」と言っていましたので、ウクライナの受け止めは、やはり広島から平和を導きたい、そのためにゼレンスキー大統領が多くのリーダーと会った。それは大きな転換点になりうるという期待感だと思います。
―――ロシアでは、G7は報じられてるんでしょうか。
ロシアでも報じられています。特派員が「ゼレンスキー大統領の陰謀が始まった」と報じていますので、全く否定的な全然違う見方をする報道。もちろんプロパガンダですんで、双方出ざるを得ないと思いますね。
ゼレンスキー大統領の訪日成果 三つのポイントから解説
―――まず一つ目として挙げた「G7との連携強化」はどう見ていますか。
大和大学 佐々木正明教授: 支援疲れ、ゼレンスキー疲れと揶揄する言葉もある中で、まだまだ戦争は続く。そしてG7から更なる支援を引き出した。そのうちの一つがF16戦闘機ですね。この戦闘機は、戦況におけるゲームチェンジャーとなりうる大きな武器です。
ただですね、反転攻勢が始まるとされる中で、F16戦闘機のパイロットの訓練が始まったばかりですので、戦場に投入されることはまだまだ先です。しかし、このパイロットが増えることによって、戦争後もF16戦闘機で空を守る、ロシアの脅威から抑止力になるような、ウクライナの安全保障になると思います。
実はウクライナのパイロットというのは、ロシア・旧ソ連製の戦闘機に慣れていますね。仕組みが違うんですね。やはり戦車と訳が違って、ちょっとしたミスで墜落する可能性もあるし、ミサイルの誤爆もあります。これは長期の支援が、訓練が必要だと思います。
―――二つ目「グローバルサウスとの話し合い」はどうでしょうか?
ゼレンスキー大統領は来日直後にインドのモディ首相と会ったんです。モディ首相は昨年9月にプーチン大統領と直接会って「今、戦争の場合ではない」と言ったリーダーなんですね。そしてG20の議長国でもあります。
インドが、ロシアの継戦能力の鍵を握るというのは、ロシアがインドに原油・ガスを売ったりダイヤモンドを売っているって話もあります。そこで資金を得て、今どんどん武器を供給している、とのことですから、インドが鍵を握る。まずそこに目をつけてゼレンスキー大統領が会いに行った。
そしてインドネシア、ジョコ大統領ですね。ゼレンスキー大統領が直接名前を出して「意義高いものだった」ということも言っています。この二国は人口も多く、グローバルサウスの国々でも影響力がありますので、二人の大統領に会ったのは大きいですね。
グローバルサウスが「一枚岩でない」こともサミットで明らかに
一方でブラジルのルラ大統領には会えなかったです。決してグローバルサウスが一枚岩じゃないということも、サミットで明らかになったということです。
―――インドのモディ首相はこう言いました。「経済や政治の問題だけでなく、私にとっては人類の問題である、インドは解決のためにできる限りのことをするつもりだ」と。これはどんなことが考えられますか。
インドも15億人の人口を抱えていて、もしロシアから石油・ガスが得られないと国民が困る。果たしてG7、もしくは対ロ制裁網に加わる国が、代わりとなるインドに対して経済的な援助ができるか、そこにかかっている、そこ次第で「解決のためにできる限りのことをする」は実効力を持つのかなというふうに思います。
―――三つ目のポイント「核抑止」はいかがでしょうか。
ウクライナ侵攻2年目にサミットが広島で開かれた。偶然の一致が核抑止に繋がるというのは、21世紀の平和に資するというふうに私は感じています。今後、反転攻勢が大きくなって、ウクライナがロシアの支配地域を奪還していく中で、プーチン大統領が核を使う可能性がある。
この抑止についても、G7だけではなくてインド、ブラジル、グローバルサウスの国々が、「してはいけないよ」と、ロシアとの関係を踏まえる中で、ここでも歯止めにかかる可能性がある。となりますと、ロシア側の包囲網の外堀が埋まった。三つのポイントによって、外堀が埋まった転換点ではないかと感じています。
―――日本は追加支援を表明しました。「トラックなど自衛隊車両100台規模で提供。非常用糧食3万食の提供、ウクライナの負傷兵を受け入れます」と、今後、日ロの関係はどうなっていくのか、気になるところです。
大和大学 佐々木正明教授: 今年5月9日の戦勝記念日のときにプーチン大統領は、わざわざ日本という国を出して批判的に表現をした。そして実はロシアから今でも日本は石油、ガス、天然資源を購入しております。そして日本からも、ロシアに衣料品だったり、中古車を輸出している状況にあります。
プーチン大統領は対ロ制裁に加わる国に1枚1枚カードを切って圧力をかけている今後、日本にもカードを切ってくる可能性があります。となりますと、我々の生活費、光熱費や食糧費が上がる可能性がある。ということなんですけども、広島から平和を呼び掛けましたので、ここは、我々が平和を導くという気概を持って、情勢を見てほしいと感じています。
―――佐々木教授の解説でした。プーチン大統領は、今回のG7に関して「経済・軍事・政治・情報など、全ての武器が我々に向けられている。極めて強力な反ロシアプロパガンダが繰り広げられている」と、強く批判しています。(2023年5月22日 MBS「よんチャンTV」より)