韓国の尹大統領は26日、アメリカのバイデン大統領と首脳会談。韓国は、かつて経済的な結びつきが強かった中国との関係を改めて『アメリカシフト』を加速。龍谷大学 李相哲教授は「北の核に対し『アメリカが核で報復』という安全保障環境を強化しようとしている」といいます。さらに韓国は日本を「輸出優遇対象国」に復帰させました。李教授は「日韓が協力し中国・ロシアと向き合ってほしいというアメリカの後押しが背景にある」と解説します。
(2023年4月26日MBSテレビ「よんチャンTV」より)

米韓の希望…韓国「北への核報復」×アメリカ「大口径砲弾をウクライナへ供与」

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---龍谷大学の李相哲先生に教えていただきます。アメリカと韓国で米韓首脳会談がアメリカで行われます。バイデン大統領と韓国の尹錫悦大統領。会談で北朝鮮・ロシア・ウクライナ・中国・日本各国を巻き込む様々な問題が議論される中で、共同声明も出される方向です。まずは北朝鮮問題について米韓首脳会談でどんな話がされているのか。尹大統領はバイデン大統領に求めていると思われることは、北朝鮮が核を使用した場合、アメリカが北朝鮮に核で報復することを約束してほしい。それを文書、共同声明にまとめたいんじゃないかと李氏は見てらっしゃるんですね?

(李相哲氏)表現をどうするかはわかりませんが、確実に北朝鮮が核を使った場合は、アメリカは何らかの核で対処するということを約束してほしいんですよね。今回の首脳会談の最大の課題は核運用をどうするのか。北朝鮮の核脅威がどんどん増していますのでね。最近は韓国を攻撃するとかいろんなこと言ってるので、早く対象の仕方を決めておかないと駄目なんですね。

---これに対してアメリカはどういうふうに返事するんでしょうね?

(李相哲氏)今アメリカは、NATO核共有の協定があるんですね。しかし、NATOが仮にロシアから攻撃された場合に、最終的にロシアに核で報復するかしないかを決めるのはアメリカなんですよ。それでは困ると。だから尹大統領はNATO以上の約束してほしいんですよね。必ず報告してほしい。あるいは、核の企画とか運用実施まで、その過程に韓国が関与できるようにしてほしいとようなことを求めてるようです。

---首脳会談後に韓国型核共有を文書にまとめるという情報もあります。核使用の意思決定に韓国が関与運用するための協議体の設置など、割と踏み込んだことも考えているということです。では韓国単独の核保有というのはあるんでしょうか?尹大統領は言及しているようですが?

(李相哲氏)ないですね、当面は。ないから約束してほしいんですね。逆に韓国が核を持とうとすれば、NPT体制、非拡散条約から脱退しなければならない。そうすれば、世界の非拡散体制が崩れてしまう。しかも韓国が核を持つことになれば、日本もやっぱり考えなければならない。台湾も持とうとする。そこで核のドミノ現象が起こるので、アメリカは絶対やって欲しくない。その代わりに「私達が今まで核傘だけで我慢しろ」と言われてきたけれど、それではちょっと不安だと。踏み込んだ何かの約束をしてほしい」というのが今回の要求ですね。

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(REINAさん)韓国の国民は核保有っていうのは望んでいるんですか?

(李相哲氏)核保有を求める声がかなり高まっています。もう北朝鮮が散々実験をやったりとか、実戦配備をしたというふうに脅していますから。アメリカが自分の国を危険にさらしてまで韓国を守ってくれるかっていうことには懐疑的な人たちが多くなって、やっぱり私達が核を持つべきだって人が増えてる状況ですね。

---今度はウクライナ問題について。バイデン大統領が尹大統領に求めていると思われることは、「武器供与を渋らず、積極的に関与してほしい」ということ。韓国は大口径砲弾をたくさん持っている。世界最多とも言われているので協力してくださいよということですか?

(李相哲氏)そうですね。今、韓国は生産能力でも大口径砲弾を世界で一番多くを持ってる状況です。ただ紛争地域には韓国は武器を提供しないという方針を持っている。でもアメリカからすると、韓国は余分に武器を持ってるんだから、何らかの形でちょっと支援してほしいと。アメリカの能力ではまかなえないんです。だから、尹大統領は前提条件をつけて、そういうこともありうるようなことを言ってしまったんですね。

---ロイター通信に対して今後条件付きで軍事支援の可能性を示唆したということですね?

(李相哲氏)そうです。例えばそのロシア軍が民間人を大量に虐殺したりとか。人道に反する何か行為を行った場合は、我々は今までの方針を変えることもありうるというふうに尹大統が言ったんですね。

---それに対してロシアのペスコフ大統領報道官は、「武器供与すれば、間接的に紛争に関与することになるんだ」と釘を刺すような発言。

(李相哲氏)韓国からすると、ロシアを敵に回せば、ロシアがまた北朝鮮に技術を供与したりとかすると厄介ですよ。北朝鮮ともっと密接に協力することになりますから。判断は非常に難しいんですが、今の尹大統領の発言を見る限り、ウクライナに武器を提供する方法を探っている。今回の米韓首脳会談の次の大きな課題ですね。

---もう一つは中国との関係についても話し合われるのではないかと。韓国はこれまで、安保はアメリカ、経済は中国という方針でした。しかし尹大統領は経済・先端技術でアメリカと関係を強化したいというふうに考えていると。なぜ韓国は今、中国から離れようとしているのかは気になるところです。

(李相哲氏)中国は韓国と経済関係は深いんだけれども、大事な場面で、必ず北朝鮮の肩を持つんですね。北朝鮮が核実験とかほのめかしたりとか、ミサイル実験をやったときに、国連で基調声明で非難しようとしても、中国は反対するのですよ。だから中国は韓国を友好国と言っていりけど、実は敵の北朝鮮の味方だっていうこともあります。ただ今までこの「安米・経中」という都合のいい政策は通用しないくなっている。立場を明確にする必要があります。中国と経済を切れば少し損害はありますけれど、思い切って決断してアメリカと一緒になるという方向へと今行っていると。

豊田真由子氏「韓国は覚悟を決めて欧米、日豪の方へシフトしている。」

---豊田さん、こうなると、アメリカも韓国とはうまいことやっていきたいというふうに考えてるんでしょうね?

(豊田真由子氏)もちろん。だから韓国は覚悟を決めて、アメリカ、ヨーロッパ、また日本とかオーストラリアとかの方にシフトしてるってことだと思います。安全保障上の理由と、経済で見ても今まで韓国の一番の輸出先って中国だったんです。でも中国経済が発展して、物を作るようになったので、今までお客さんだったのが、競合相手になっちゃうんですね。輸出も減ってきているので、経済的に見ても、もうこっちじゃなくてこっちだっていうふうにシフトして。いろんな条件が重なってるってことと、本当に危機が高まっている中ではどっちつかずじゃ駄目ってことですね。ちゃんと敵・味方分けて、こっちでいくんだっていうふうに決めているってことだと。

---これからはアメリカと一緒に行きますよという意思表示であるわけですね?

(李相哲氏)そうですね。バイデン政権は昔から韓国に対して「中国に半導体を売るな」「技術を提供するな」と要望をしていますが、韓国からすると今、サムソンは中国・西安に100億ドル以上の工場を持ってるんですよね。一気に関係を切ったりとかすると、大変経済にダメージが大きいので、衝撃を柔らかくしながら。徐々にアメリカにシフトしていくとしている状態ですね。

---もう一つは台湾問題でこんな攻防もありました。尹大統領はロイター通信に対して「力による現状変更には反対する立場だ」と明言しました。それに対して中国・外務省は「台湾問題は中国の内政。他人は口を挟むな」というふうに非常に強い態度でした。

(李相哲氏)台湾問題と北朝鮮問題は実は連動しているんですよね。尹大統領もこの話をしたときに、台湾問題と北朝鮮問題は世界的な問題なんだと。つまり「台湾問題は中国だけの問題ではない」と言ったら、中国は猛烈に怒っているんですよね。これはもう、我が国の問題だと。そこで尹大統領は「(中国が)力で現状変更してしまったり、、戦争が起こるんじゃないか」ってみんな危惧している中で、台湾有事が起こった場合は、北朝鮮が何をしてくるかもしれない。尹大統領からすると、台湾問題を中国だけで勝手にやったら困るという。そういう思いもあってアメリカと一緒に対処しようということだと。

---そして日本との関係の話はどうなのか。バイデン大統領が尹大統領に求めていると思われること、日米韓の協力関係をより確実にするため、日本との関係をさらに改善してほしいとバイデン大統領思っているんじゃないかということです。今年の3月に日韓首脳会談行われました。24日には、韓国が日本を輸出の優遇対象国へ復帰させました。そして日韓政策対話というのがありまして日本もホワイト国から韓国を排除していましたが、再指定に向けた動きがありますよと。日韓に関しては前に進んでいる?

(李相哲氏)アメリカが一番強く望んでいるところですね。アメリカは世界を全部カバーできないので、できれば東アジアは日本を軸にして韓国と協力して東アジアで中国・ロシアに対処してほしい。そこにアメリカが加わるということですが、日韓関係が悪ければ、日米韓の協力はできなくなる。障害になるので、今回日韓関係を改善した尹大統領に対して、アメリカとても好意的なんですね。評価が高い。

尹大統領「点数稼ぎの反日は政治的に利用できるけど、自分はしない」→豊田氏「日本も誠意で答えて前に進むべき」

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(豊田真由子氏)ワシントンポストのインタビューで尹大統領は「日本はもうその100年前に起こったことについて、ひざまずいて許しを請うべきだとは自分は思わない。つまり謝罪、謝罪っていう声があるけれども、自分はもう必要ないと思ってる」って言ってくれたんですよ。それでまた国内からすごく批判が殺到するんですが、ただ彼の姿勢は一貫していて「点数稼ぎに反日を使うことは政治的に利用できるけれども、自分はそういうことはしない」と。「本当の意味での韓国の国益を考えるんだ」っていう。私はすごく真摯な態度だと思うんですよ。実際やっているし、だから日本も「どうせまたちゃぶ台返しするんじゃないの」っていう意見も多くて、それも理解するんですが、やっぱりそこは誠意や誠意で応えて、日本の国益のためにも前に進むべきだと私は思うんですね。ただあんまりにも張り切りすぎて尹大統領が失脚させられたり、何か危害が及んだりとかして、続かなくなっちゃったりすると全部オジャンになっちゃうので、そのあたりもうまくやっていただいて、本当に日本も含めた安全保障と経済を前に進めてほしいと思います。

---尹大統領支持率低いんでしょう?

(李相哲氏)はい。低いけれども彼は支持率あんまり気にしないという。微妙ですけれども「やっぱり正しいことをやっていけばいいんだ」っていうふうな思いが強いんです。だからいい結果を生めばいいんですけどね。問題ないと思う

---最後に、アメリカのバイデン大統領。80歳。歴代最高齢ということで4年前と同じ4月25日に大統領選出馬を表明しました。アメリカのNBCニュースによりますと、世論調査でバイデン氏は次の大統領選に出馬すべき26%。出馬すべきでない70%。アメリカ出身のREINAさんはこの数字どう見ているんですか?

(REINAさん)結構、実績を残しているんですけどね。インフラ投資法だとか、失業率だったりとか。いろいろやってはいるんですけどやっぱりシンプルに年齢に対する不安。あと健康不安だと思いますね。2020年のときはやっぱりコロナ禍での選挙だったのであまりそこまで移動もなく、結構オンラインでの演説が多かったんですが、24年はもう全国に飛び回らなければいけないですし、80歳なのでやっぱり不安に思う人が多。あとはハリス副大統領の育成にちょっと失敗してしまったという面もあるかもしれないんです。本当は後継者としてハリス副大統領がセットで入っていたのに、なかなか自分のブランドを出すことができず、頼りにならなくなっちゃったので、バイデンさんがもう出馬するということになったんじゃないのかなと思います。

---豊田さんはアメリカの現職大統領は2期目に出馬するのが普通、バイデン大統領は2期目ということ。

(豊田真由子氏)そうですね。確かに年齢とか健康の不安はあるんですが、歴史を見ると基本的に2期やるっていうことを前提にみんな考えていて、戦後を見ると、2期目に出なかった大統領って2人しかいなくて。暗殺されたケネディー大統領の他は、トルーマン大統領とジョンソン大統領っていうちょっとベトナム戦争とか、中国との関係とかでよほど不人気になって、次は再選ないなっていうときは出ないんですけど。それ以外のときはみんな出てて、受かって二期目をやるか、譲るかっていうふうにそれがある意味セオリーみたいにはなっているので、REINAさんからお話あった通り、ものすごくね手堅くね、内政外交をこの人も40年間国会議員やっているので、ものすごくベテランで、実績はちゃんと残しているんですね。こないだの中間選挙も思ったよりも非常にいい成績を残したとか。あとやっぱり共和党でトランプさんが出るかもっていうのもあるので、そうなっていろいろ考えると、やっぱりバイデンさんという選択肢しかなかったんだと思いますね。