神戸のラーメン店で、店主である暴力団傘下組織の組長が死亡した事件。頭部に銃弾を受けたとみられる痕跡がCT画像で明らかに。犯罪ジャーナリスト小川泰平氏によると、殺害された余嶋学組長(57)は神戸で唯一の弘道会系の組織で、いわば「ひとり親方」。これで組は消滅することになるといいます。また頭部に銃弾が確認されたものの、外部に銃創が見つかっていないことから、犯人は余嶋組長の口の中に銃口を突っ込んで発砲した可能性を指摘します。その上で「余嶋組長に相当の恨みがある者の犯行」との見方を示します。(2023年4月24日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
小川泰平氏(元神奈川県警刑事 30年の勤務経験 第一線で数々の事件を解決)
余嶋組長の評判「子どもの運動会に顔をだして、声かけると答えてくれるような普通のお父さん」
---神戸市で、ラーメン店の店主が死亡しました。死亡したのは暴力団の組長だったということです。犯罪ジャーナリストの小川泰平さんに解説していただきますが、まずは、ラーメン店の前にいる前田春香アナウンサーに最新情報を伝えてもらいます。
(前田春香アナ)ラーメン店には現在もブルーシートが張られていて、警察の規制線が張られています。ラーメン店は、神戸市長田区の神戸市営地下鉄海岸線苅藻駅の出口から100m離れた場所にあります。ほぼ駅前にある店の前には大通りがあって、交通量、人通りが非常に多い場所です。午前中は大型トラックがよく通る場所で、町の工場が多く立ち並んでいて、昼時には作業服の方が通りに出てきて昼食をとる姿をよく見かけました。アパートの1階部分、ブルーシートの中にラーメン店があります。ほぼ目の前には大型スーパーがあって、この大通りを車で5分ほど行きますと、ノエビアスタジアム神戸があるという非常に人通りの多い場所です。22日(土)に六代目山口組系傘下組織の余嶋学組長が殺害されたのですが、周りの家に住む方にお話を聞いたところ、事件当時、物音や誰かが争うような声は聞こえなかったといいます。事件発生後、到着した消防車の音に気づいて外に出たところ、事件を知ったといいます。また近所の人に余嶋組長について話を聞きますと、暴力団関係者ということで有名だったということですが、まさかラーメン店の店主をしているとは思わなかったと。ニュースを見て初めて知って驚いたという声も非常に多く聞かれました。余嶋組長については、近くの飲食店で働く女性の方に話を聞いたのですが、近所づきあいはしていたと。会うと挨拶をしてくれて、気のいい普通のおじさんだったという印象だそうです。ラーメン店の休憩時間帯のときは、餃子をテイクアウトしていくこともあったということです。また、余嶋組長の子どもと同級生だったという女性の方は、暴力団関係者だということは有名だったので知っていたが、子どもの運動会には顔を出していて、声をかけると答えてくれるようなまさに普通のお父さんという印象だったと話していました。事件があったラーメン店は「牛テール」というメニューを主としていまして、この辺りでは珍しく、オリジナリティがある店だったということです。
---改めて事件を見ていきましょう。神戸市長田区のラーメン店「龍の髭」。その店主が暴力団組長だったということです。六代目山口組傘下にある三代目弘道会湊興業の「湊学」こと余嶋学組長が殺害されたという。暴力団関係者、組長だというところから組同士の抗争かなと心配してしまいますが?
非常に〝ラーメン愛〟が強い余嶋組長 かつては「イケイケの暴力団」
(小川泰平氏)抗争の可能性を否定する材料は今のところありません。殺害された方法等を見ると、ただ単に殺害するという意味だけではないような気がしています。私が思うのは、ラーメン店の店主が組長だったっというよりも、暴力団組長がラーメン店のオーナーだったというふうに考えています。暴力団の組長も自分名義ではない、いろんな仕事、飲食店を自分の妻とか、自分の彼女にやらせたりとか、自分の家族に飲食店をやらせたりっていうのはよくあることなので。しかも余嶋組長は今年の1月からです。それまで店長がいたんです。ただ何か事情があって辞めたらしくて、現在新しい店長を募集しています。その募集している合間に店長になる者がいない、作る者がいないから、この組長自らが厨房に立ってやっていたと。本人は非常にラーメン愛が強くて、ラーメンの研究・仕込み等は、去年からやっていたと。ただ、自分が店に立つことは去年はなかったんです。今年、店長が辞めてから店に出るようになったというのが、この出入り業者とか、近くの方から、私はきのう現場に行ってそういう話を聞いてきました。
---非常に大きな組の傘下ということですが、今後、何か影響は出そうですか?
(小川泰平氏)六代目山口組三代目弘道会というところの直参「湊興業」は、神戸唯一の弘道会系の暴力団です。神戸といえば神戸山口組という対立する組織がありますが、そこに唯一弘道会傘下というところで、常日頃から狙われているというか。常日頃から注目されている組ではある。ただ、湊興業というのは、この余嶋学組長の1人親方で、通常暴力団というとそこに頭(カシラ)がいたり本部長がいたりっていうような感じがするのですが、実は湊興業は今現在は組長1人の組です。もちろん昔は、イケイケの組だったのですが、今はもう1人親方ですね。そういう組も多いんですけども、1人親方の組です。(Q湊興業はこれで消滅?)そうですね。まぁ、元々いた者が戻ってきて、例えば二代目湊興業っていうものを作るかもわかりませんけど、現実的にはそれはないのかな。ですからこれで1つの組がなくなるということになると思います。
---では改めて当日の状況です。4月22日(土)の午前11時ごろ、余嶋組長が厨房で頭から血を流して倒れているのを従業員が見つけ通報。お昼すぎに死亡が確認されました。付近の防犯カメラには、通報の約20分前に男が店に入り、数分後に立ち去る様子が映っていました。また、遺体と現場の状況は、頭部に銃弾のようなものが残っていた。そして刺し傷、切り傷など大きな外傷は見当たらない。店に荒らされた形跡はなかったということです。
<泰平氏スジ読み>かつて「地下格闘家」で筋肉隆々の余嶋組長を押さえつけ、口に銃口を突っ込んで発砲できるのかはやや疑問。
(小川泰平氏)頭部に銃弾のようなものが残っていた。CT映像によってわかっているのですが、外傷がありません、周りに。にもかかわらず、頭部の中に銃弾が残っているということはですね、これ推測になるんですけれども、例えば、拳銃の銃口を口の中に入れてですね、それで弾いている。つまり防音効果も当然あります。口の中で発砲すればですね。ただ頭を貫通してないところを見ると、それほど大きな口径ではない。例えば38口径とか45口径とかではない、もう少し小さいものではないかなと思います。ただ、口の中に銃口を入れるってことは、そんな簡単にできません。先ほど余嶋組長の写真が出ていましたが、筋肉隆々ですよね。以前は、地下格闘技をしていたこともある、この業界ではめちゃくちゃ喧嘩が強いというふうに言われていたそうです。最近でもトレーニングはいつもやっているというような人を、防犯カメラには確かに1人しか映っていないのですが、1人で口の中に銃口を入れるってことが果たして可能かな。しかも店の中は物色されていません。例えば押さえつけられたらバタバタし、手も足もすごい力ですから、もっと乱雑になっているはずですが、そうなっていないっていうところが疑問には残ります。銃を口の中に入れるってことは、強い殺意はもちろん、非常に強い恨みが見えてくるなという感じを私はしています。
---では、現役の組長がラーメンの店主をできるのか。反社会的勢力排除の法務に詳しい坂東大介弁護士に聞いたところ、そもそも不動産の賃貸・売買の契約、銀行口座を作ることというのは暴力団関係者はできないということです。なので今回は他人の名義を利用していた可能性があるということです。一方で、食品衛生法上の営業許可は暴力団構成員でも取得ができるということですが、今回の店は別の人の名義で許可の取得をしていたことがわかっています。そしてラーメンを食べたお客さんは何か罪に問われるのかということも聞きました。組長と知らずに食べていた人は、問題はないですよと。組長と知っていて食べていた人は、兵庫県暴力団排除条例、これにあたる可能性があると。ただし、罰則はないということです。
(小川泰平氏)暴力団、しかも組長クラスの人間は、自分が仕事を直接やるわけじゃなくて自分の周りのもの、近いものに例えばお金を出してやらせるとか。特に飲食店等、夜のお店をやらしているといったようなことは、名義や名前は出てきませんけどあります。特に地方の方に行くと、こういう一般的な食堂だとかをやらしているところもあるので、今回が非常に珍しいというわけでもないと私は思います。