GWを前にお出かけムードが高まっていますが、やや気になるのが新型コロナ「第9波」の勢いとその規模。4月に入って感染者はじわじわと増加傾向にありますが、新型コロナ訪問診療チーム「KISA2隊」の小林正宜医師は「発熱やのどの痛みを訴える患者はじわじわ増えている実感。第9波が起こる可能性は十分考えられる」と話します。そして5月8日から新型コロナは5類に引き下げられて、医療費がかかることになり、受診控えが起きるだろうということです。(2023年4月20日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

小林正宜医師(2021年2月に京都で発足された訪問治療チーム「KISA2隊」の医師)

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---葛西医院の小林院長です。専門家コロナ対策を政府に助言する専門家組織で20日、第9波が起きる可能性が高いことと。第9波は第8波より大規模な流行の可能性があるという見解を示ししました。第8波を振り返ると、全国新規感染者数は1月6日がピークでした。そのときは24万6751人。第9波がこの数に迫る勢いなのかが気になるところです。現在は下げ止まりが続いているものの、緩やかな増加傾向もあるということです。そこで今後は、ゴールデンウィーク明けに感染拡大し、その後いったん減少するのですが、夏に向けてもう一度感染拡大するんじゃないかという見解をアドバイザリーボードは示しています。現在の状況は、新規感染者数の前週比ですが、全国は1.06で大阪は1.14、京都は1.24と全国に比べると若干多くなっています。ここのところ新規感染者数は低く推移していますが、現場での実感はどうでしょう?

(小林正宜医師)最近はすごく穏やかな日常というような感じですが、やはり少し増えてきているというような状況があります。連日、発熱外来で患者さんがいらっしゃって検査しても、陰性だということがほとんどなんですけども、本日も朝1人いらっしゃったり、往診の依頼があったりということでじわっと増えてきている印象があります。症状は以前と変わらずに「喉が痛い」「発熱がある」「咳がある」という一般的にコロナで言われているような症状。時々、味覚の異常や、嗅覚の異常があったりと、あまり大きくは変わっていません。

---第9波については診察していてどんなことを感じますか。

(小林正宜医師)もしかしたらじわっと増えてきているのに従って、第9波と言われる波が来るかもしれませんけれども、5月8日以降、5類以降はですね、全数把握がなくなりますので、基本的には数がわからなくなってしまいますので、波っていうのはもう周りの発熱患者さんやコロナ患者がどれぐらいいってるかって実感でしかないんですけれども、今後9波が起こってくる可能性は十分あると思っています。

5月8日以降5類へ移行すると、医療費は4000円程度の自己負担へ

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---感染症法上の分類で2類相当なんですけども5類になるこれどうなるか。何が変わるのかと言いますと、現在、検査や外来での医療費は無料になっているんですが、5類引き下げの5月8日以降は自己負担になります。3割負担の人の場合、4000円程度の負担になる見通しです。ただ、高額なコロナ治療薬は当面無料になっています。5月8日月曜日からということなんですがこの5類へ移行したら実際どうなっていくのか、小林医師からお考えを教えていただきました。まず、一般外来に関しては、医療費がかかることで受診控え、感染が拡大するんじゃないか。やはりお金がかかってくるというところが一つポイントになる。

(小林正宜医師)やはり心理的に、症状が軽ければお金を出して受診をするということはされないと思います。そうすると診断がされないまま人にうつす可能性が出てくるんではないかなというふうに思っています。病院内の感染対策もこれが重要になってくる。5月8日以降はですね、しっかり外来で患者さんを受け入れないといけないという体制になりますが、今まで発熱外来をやってこなかった病院に関しては、これから病院の中の構造であったり、対策であったりをしっかりしないといけないここができないと、新たに発熱患者さんを受け入れる体制が作れていかないということになります。

---小林医師の病院はずっと受け入れていましたけれど、お仲間のクリニックの皆さんは、こういったことに関してはどういうふうにおっしゃっていますか?

(小林正宜医師)私が関わってるクリニックに関しては、私の医院と同様、昔から発熱外来をやっていて、前までは例えばプレハブとかテントだとか、特別な体制を敷いてやっていたんです。もう今年に入ってからは、患者さんから事前の連絡なしに熱が出ましたよということで来られても、患者さんのスペースに余裕があったり、空き部屋があったらそこに誘導して待機していただくとか、プレハブや特別な体制じゃなくも発熱患者さんを診るということに移ってきています。

---入院病棟に関しては病床確保数が半減ということで、病床が減る可能性が非常に大きい。受け入れ体制をどう作るかですね?
(小林正宜医師)これは入院確保料というのは空床補償ということで、病院に補償のお金が入ってくるんですが、これが半減しますから、今まで空床をしっかり作っていた病院が、もしかしたら少なくなるんじゃないかなという懸念がありまして、ここの部分は不透明なところではあります。

---では診療所から見た5類以降の課題を見ていきます。小林医師によりますと、発熱外来の概念が薄れることで感染患者が一般外来に混ざってくるということ。発熱した場合はどういうふうにするのが一番いいんでしょうか?

(小林正宜医師)我々社会の目標としてインフルエンザのように普通に熱が出てしんどくなったら病院で受診したり診療所で受診したりというのができればいいんですが、移行期ですね。5類になって急にウイルスの特性が変わるわけではないので、ゆっくりそれに慣れていく期間があると。やはり一度、近所の診療所に電話していただいて、「熱があるんですけど、行っていいですか」と言っていただけると非常にありがたい。義務ではありませんので、それぞれにおまかせするしかないんですけども。そういった形で発熱患者さんが一般の患者さんと一緒になって診ていくことになると。(クリックの設備については)構造上の問題。かなり敷地面積が狭いとかいうことだと隔離ができないし、そうするとアクリル板を敷いてとか、工夫しないとクリニックによっては、なかなか患者さんを受け入れられないということも出てくると思います。

---これまでは病院の課題を見てきましたが、一般社会における懸念点を見ていきます。感染症の1から3類は法的に出勤停止させることができるんですが、5類はできません。それぞれの勤務先のルールに従うということになります。また、救急搬送システムにも懸念点があるということ。我々過去にも経験しておりますけども、救急車呼んでも来てくれない、来てもらっても搬送する病院が見つから。そういうことありましたものね。
(小林正宜医師)大きな違いはコロナ患者と診断されている方は今まで、現在もそうですけれども、一度搬送前に、保健所が判断をするフォローアップセンターが判断をして、搬送してくださいというふうになるんですけれども、5月8日以降は救急隊の判断によって病院を探していくということになり、現場判断、普通の疾患と同じように。救急搬送をされる患者さんの数が多くなるというふうに思います。そうすると今までのように患者さんが増えて、病院のベッドがなくなって搬送がパンクしてということも、第9波が来たら起こりうるんじゃないかなとは思っています。

---立岩さんはここまでの話、どのように聞かれましたか。

(立岩陽一郎氏)難しいのは、いずれにしても問題はあるんです。だってウイルスですから。2類って言ってもね2類相当ですよ。2類でもなければ、2類のルールを適用しましょうって言って、我々これだけ苦しんできたわけですから、5類にするっていう判断は正しいと思う。2類相当のときの一番の問題は、硬直化したんですよね。何があったって保健所の判断がなければ病院に行けないような、入院できないような状況だったけど、そうではなくて5類にするっていうことは、もうちょっと弾力的にね。特に自治体であれば県知事あるいは政府全体も状況に応じて、やっぱ弾力的に対応するっていうことを我々覚えたわけですから、それをやっていくということでしょうね。大事なことはやはり医療崩壊を避ける。もうその一点ですよ。

GW期間中は受診できないケースも…抗原検査キットや解熱剤の用意のススメ

---ゴールデンウィーク明け。第9波も言われていますけども、視聴者に何か伝えたいことがあれば教えてください。

(小林正宜医師)ゴールデンウィークに入ると、お休みの期間、医療機関でなかなか受診できないということもありますので、まずは例えば抗原検査キットを備蓄しておく、解熱薬を持っておく、周りにどんな医療機関があるかを調べておくといった準備が必要ではないかなというふうに思っています。