岸田総理に爆発物を投げ込んだ木村隆二容疑者。「前足」=事件前の足取りとみられる時間帯に、近くの防犯カメラに木村容疑者とみられる人物が複数撮影されていました。白いマスクと黒いマスクを付け替えていたことや傘を手提げかばんに持ち替えたりという行動は何を意味するのか。犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「総理のスケジュールは前日に決まったものなので、木村容疑者は以前から爆発物を作っていたとみられる。ただマスクなどについては白いマスクの方が目立たないと思ったのでは、という程度で綿密な計画性に基づく行動ではないのではないか」と話します。(2023年4月18日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎小川泰平氏(元神奈川県警刑事 30年の勤務経験 第一線で数々の事件を解決)

「(爆発物を)投げられ時点で要人警護は失敗であるといえる」

―――木村容疑者は黙秘を続け、動機は明らかになっていません。一方で、選挙制度に強い不満があったとみられます。裁判も起こしています。これが直接の動機かどうかまだわかりませんが、選挙制度に対する不満、政治に対する不満ということが過去の言動から見てとれるということですね?

小川泰平氏: 家宅捜索等でそういった資料等が見つかったのではないかなと思います。というのは、本人まだ逮捕されて以降黙秘を続けているということで、どういった理由、明確な動機というのは本人の口からはまだ発せられていません。ですから選挙制度云々というのも、あくまでも「そうではないか」ということだと言えますね。

―――警備態勢に関しては今後考えていかなければならないということでしょうか?
(小川泰平氏)おっしゃる通り。現職の議員の中で一番大勢のSPがついているというのが総理大臣です。安倍元総理のときは、元総理ということでSPは1名ですが、和歌山県警の幹部も話していますけども、「ものを投げられた時点で要人警護っていうのは失敗」であるということが言えると思います。

―――今後の捜査はどうなっていくのか。小川氏は「容疑者が話さないからこそ、徹底した捜査になるだろう」ということです。犯行前の足取り(=前足)や、お金の流れ、どうやって生活をしていたのか、何を買っていたかなどの捜査で動機を解明していくだろうと。

小川泰平氏: 黙秘しているからこそ、本人が何を考えていたのか。動機が一番大きいんですけども、本人のスマートフォンだとか、パソコンといった通信機器でどういったものを検索していたかの履歴とかです。あとどういったSNSに参加をしてコメントを書いていたとか、捜査していく必要があると思います。

犯行前の「前足」の映像比較…「傘→カバン」「白マスク→黒マスク」

20230418_ogawa_masuku.jpg―――ここまででわかってきていることを見ていきます。事件の1時間ほど前、南海電鉄和歌山市駅の改札や、駅近くのスーパーに木村容疑者とみられる姿が確認されていて、その後、事件現場まではバスで移動したとみられています。漁港近くで現場へ向かう姿も映像に残っています。その際に、刃渡りおよそ13センチの果物ナイフが入っていたとされる手提げカバンを持っている。もし全てが同一人物であった場合、マスクの色などに違いが見られるということです。持っているものが違っていたりとかいろいろな情報上がってきていますけど、こういったものは捜査に影響を与えるんでしょうか?

小川泰平氏: 当然ですけども本人がどこまで計画していたか。ただ今回は雑賀崎漁港に岸田総理が行くというのは直前に決まったことなので、それ以前に下見できるわけではない。ただ、決まってから爆弾を作ったわけではないので、元々爆弾は、爆発物は作っていたんだろう。ですから岸田総理の動きによって、自分が一番近寄れるときはいつかというと、やはり応援演説とか選挙のときに一番可能性があるというふうに本人考えていたと思います。

ただ、マスクは「黒いマスクは目立ってしまうから白いマスクに変えよう」というのは事前に白いマスクを用意しててもいいんですけど、直前に考えている、そういったところから、「計画性はあったにせよ、綿密な計画とはちょっと違うのかな」というふうに思えたりもします。威力業務妨害で逮捕はしましたが、当然ですが爆発物取締法とか火薬取締法違反はつきますし、爆発物の威力がどのぐらいのものがあるのかっていうことをこれから検証していきますが、それによっては起訴の時点で、威力業務妨害って3年以下の懲役と低い。ただ、本人が殺害する意識がなくても未必の行為で、こういったものを爆発させれば破片等によってけが人が出る、もしくは最悪の事態が想定されるということで、私は殺人未遂は、大いにあり得るというふうに思っています。

―――和歌山県警は、爆発した部品が残っていないか、爆発現場そばの海中を捜索しています。そして爆発した筒ともう1本、現場に残されていた筒、この両方の殺傷能力などについて調べているとみられています。火薬の量がそれほど多くなかったんじゃないか?殺傷能力はそれほど高くなかったんじゃないか?という指摘もあったんですが、小川さんはどう見ますか?
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(小川泰平氏)火薬の量というのは、もう一つ押収しているものがありますから、それと実際に投げたものが全く一緒かどうかわかりませんけども、火薬の量とかそういったことは当然調べることができます。ただ実際に飛んでいるものの中にナットとかボルトとかが入っているわけですね。そういうのを入れている、もしくはこのパイプ爆弾の周りにつけていたんじゃないかといったようなことがあるということは、当然人に危害を及ぶことを想定してやっている。「そんな大きなけが人を出そうと思ってなかったんじゃないか」という方もいますけど、私は逆で、200人も集まっているところで爆発させたら、けが人が出ない方が不思議だというふうに思います。(ネットやSNSで爆発物の製造方法が出ていることについて)今年の3月から、そういったものを削除できるようになりました。ただ私も取材を続けていくと、それは日本国内の法律で日本国内のSNSとかインターネット記事であって。海外の記事を見ると、手榴弾的なものが市販されてもいます。そういった改良型は日本語ではないですけど、ある程度語学さえわかれば、他国のサイトで見ることは可能です。

「威力があると思わなかった」は、本人がそう思うだけであって、本人が思わなければ何をやっても罪にならないわけでも何でもない。やはり一番は目的ですよね、動機です。岸田総理に何か危害を加えてやろうと思ったのか、それとも岸田総理がいるようなところでこういった大きいことを起こせば、自分が主張したい、例えば選挙に関することをみんなに知ってもらえるからやろうとしたのか、というようなところが明らかになるはずですが、本人がいかんせん今のところ黙秘ですから・・・。そこやっぱり信頼関係を作って、取り調べにおいて本人に供述させる必要があるのかなと思います。