岸田文雄総理の演説前に爆発物が投げ込まれた事件は何が目的だったのか。銃器に詳しいジャーナリスト津田哲也氏は「今回の手製パイプ爆弾には威力を高めるような鋲や針が入っていなかった。殺傷能力が低く、本人もわかっていたはず」と話し、犯行は総理を殺害する目的ではなかったとの見方を示しました。(2023年4月17日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎津田哲也氏(銃器評論家 映画やドラマ、漫画等の監修も手掛ける 著書「銃社会ニッポン」など)

木村容疑者の犯行は「殺人目的ではなく、騒ぎを起こしたかったのでは?」

---事件に使われましたこの爆発物が一体どういうものなのか、銃器評論家の津田哲也さんに解説をしてもらいます。津田さんの見方は、木村容疑者は殺人が主目的ではなかったのではないか。騒ぎを起こして注目されたかったのではないかと?

(津田哲也氏)私はそのように見立てています。この爆弾の爆発力と殺傷力の問題ですね。単純に爆弾というのは火薬の量を増やしていけば威力は増すわけです。今回見て見ても煙の量だとか、爆発音だとか、周囲の被害の状況をみましても、それほど大した威力はなかったように思われます。

---このパイプ爆弾と呼ばれる筒状のもの。パイプの中に火薬を入れて密封し爆発させるというものです。パイプ爆弾でも威力の高いものは作れるんだけども、彼はこの爆弾は威力が低いとわかっていたはずだと自分でわかるものなのですか?調整したらどれぐらいの威力になるかみたいなことは?

(津田哲也氏)今回のパイプ爆弾は、手製のものに関しては水準高い方だと思うんですよ。完成度はそこそこ高かったかと。で一番簡単なのは、通常の容器に介護を詰めて導火線を入れた、要は爆竹を大きくしたようなものでいいわけなんですそれは簡単です今回の場合は、ひょっとしたら電気発火式のね、装置をつけて使った可能性もありますし、非常にあの外観も凝った形してますよね。そこに相当こだわりがあったかと。そういう知識とスキルがあったらですね、どの程度の爆発力で殺傷を持つかっていうことぐらいは判断できたとかね。

---投げてから52秒後に爆発したということですけども、52秒というのは、計算された52秒なんでしょうか?

(津田哲也氏)その辺は本人の意図はわかりにくいところですが、仮に計算していて52秒経ったとした場合、リモートコントロールで操作して自分の狙ったタイミングで発火させようという意図があったかもわかりませんそれがどういう意図かというと、結局爆弾らしきものが投げ込まれた。皆さんが避難できる時間の猶予を与えて、なるべく死傷者を出さないように配慮した可能性もあるかもしれないと私は思っている。

---今回の爆弾は殺傷能力が高いものではなかった。その理由は、煙の量とか爆発音、それほど大きくなく火薬の量が少なかったのではないかと?

(津田哲也氏)今回使われた火薬がおそらく黒色火薬だと思います。黒色火薬っていうのは白煙が上がりやすい煙の量が多い。このぐらいの煙だったら、大量の火薬がなくても出ると思います。
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---そして殺傷能力がそれほど高くなかったのではないか?理由は殺傷能力を高めるために釘ですとか鋲を中に入れていたら、負傷者はもっと多くなっていたが、今回は釘とか鋲は入ってなかったんじゃないかと?
(津田哲也氏)被害の状況から、中には入ってなかったと思われます。爆風だとか、熱だとかで死傷者が出るのではなく、ショックで飛散した鋭利な破片が殺傷力を持つわけですからね。それをあえて入れてなかったっていう点からも、殺意はそれほどなかった。殺傷目的ではなかった可能性があるのではないか。

---警察官1人と一般人1人の2人が怪我をしたということです。そしてもう一つは銀色の筒なんですが、アルミなら鉄より威力が低い爆弾になるという。その素材が何だったかっていう話なんですね?

(津田哲也氏)鉄パイプ爆弾だと表現されている報道もありますけども、金属であることはほぼ間違いないと私も思いますが、ずっと比重が軽くて、柔弱なね、素材である例えばアルミニウムが使われた可能性です。鉄だとあの程度の火薬量だと破裂しない可能性もあったかなと思われます。

「二発目の爆発を考えると、スマホで撮影に行っている場合じゃない。すぐ逃げて」

---殺人が主目的ではなかったのではないか。では何のためにやったんだと。豊田さんそのあたりも非常に気になるところだなと。
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(豊田真由子氏)私も津田さんがおっしゃることに賛成で、わざと弱くして作ってると思うんですよ。それが承認欲求なんか目指したいのかっていうのはこれからだと思いますけど。ただね、このポイントは逆に考えれば、あれがものすごい殺傷能力高かったら、あそこにいた人は相当被害が出た可能性があるわけですよ。そうすっとね私が申し上げたいのは、皆さんとにかくああいうときは逃げてくださいっていうことで、あの、2発目が爆発するというのはよくあることで、アメリカでも大きな音がしたら、もうとにかく一目散に逆方向に逃げろと教わっていたので、今回たまたま不幸中の幸いだっただけなので、皆さんの意識もそういうふうに変わっていかないといけないというふうに思う。

---確かにあの男が取り押さえられた後、爆発した後にまだ周りに大勢の人がいるようにみえた。

(豊田真由子氏)撮影しに行っている場合じゃない。もう逃げる。

(津田哲也氏)現にこの容疑者は複数の爆弾を所持しておりましたからね。一発目が始発と思ったのか2発目を準備して、またそれにね、さらに点火なり、なんなりっていうに動作を見せてますんでね。やはりその場はすぐに逃げるべきですよね。

---安倍元総理銃撃事件のときは手製の銃を作った。そして今回は爆発物。相次ぐ自作の武器による事件です。木村容疑者の自宅の家宅捜査で、パイプですとか工具類などに加えてパソコンとかタブレットなども押収されました。爆弾の作り方をもしかしたら調べていたかも知れません。気になるのは今、ネットで何でも調べられる時代なんですけども、ネット上の情報を規制すれば、武器の作り方を公開させないように規制すれば、防げるんでしょうか?

(津田哲也氏)いやあ、これは使用する材料もう規制できないようなものですし、それを悪用するか否かっていうのは個人の考え方次第で、それを法的にネット上で規制するっていうのはちょっと難しいのではないかと例えば銃については、ある程度の規制は考えられても、この爆弾となりますと、単なる花火と同じ原理ですから、それを規制するという、作り方をね規制するのはなかなか難しいかなと思いますね。個人レベルで少量で作っているっていうのは捜査機関だってマークしようがありませんしね。何か問題がある人とかねでない限りは、だからやっぱり周囲の人たちの目ですね。何かちょっと怪しいなことしているんじゃないかっていうのがあれば、ちょっと用心をしていただけたらと思います。