岸田文雄総理の演説前に爆発物が投げ込まれた事件で警備に問題はなかったのか。警視庁特殊部隊の元隊員で危機管理アドバイザーの伊藤鋼一氏は「SPの行動に問題はなかった」としながら、「総理の背後への目線がなかった」「リュックを背負った木村隆二容疑者(24)は動向を注視すべき人物ではなかったのか」といった警備の問題点を指摘しました。(2023年4月17日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎伊藤鋼一氏(元警視庁警備部特殊部隊(SAT)隊員 歴代総理やアメリカ大統領を警護)

総理の警護は適切だった。ただ背後の目線が必要だった

---警備体制どうだったのか、元警視庁警備部特殊部隊SATの隊員の伊藤晃一さんです。とっさに対応したというこのSPの動きについて伊藤さんに解説をしていただきたいと思います。当時の瞬間の画像で振り返っていきますと、後ろを向いている岸田総理に対して何かが投げつけられました。そのときに投げ込まれたものに即座に反応するSPが防犯防弾カバンを使って投げ込まれたものを排除払うように総理から遠ざけるという動作がありました。その後、防弾カバンを使って、総理をすぐに避難させるシーンがありました。伊藤さん一連のこのSPAの動きどういうふうに見ますか。

(伊東鋼一氏)SPというのは三つのグループにわかれますが、身辺警護の方なんですね。身辺警護っていうのはあくまでも警護対象者岸田首相を守るのだということで私は適切であるし、行動も速やかで良かっと思います。

---防弾カバンというのはどういうものなんですか。

(伊東鋼一氏)中にはケブラ繊維と特殊鋼板が入ってます。重さは結構ありますが、銃弾とか、襲ってきた者に対する警棒のような形で使ったり。結構広げると長いものですから、威力の少ない、小さな爆発物であれば対応できるものになっています。

---防弾カバンを広げて使って総理を避難させた動きというのは適切だったのでしょうか?

(伊東鋼一氏)私は適切だし、訓練の賜物だというふうに感じました。

---最初の動きで、SPの隊員が防弾カバンを使って払うような動きが見えましたけども、これも使い方としては合ってるんですか?

(伊東鋼一氏)合ってますし、瞬時の対応として私は合ってると思うただ残念なのは、目線が本来であれば、首相の背後にいるわけですから、背後を守らなきゃいけないわけですから、本来であれば、背後の方を目線として見ているっていうのは必要だと思うんですね。

---防弾カバンで払ったときに筒状のものが聴衆の方に転がっていったのですが、そのあたりはどうなんでしょうか?

(伊東鋼一氏)本来は直近の警護をしている者については、身を挺してでも、首相を守るんだっていうものを持っていますので、それは周りの警察官が対応すべきものなんですね。役割が違いますから、あくまでも首相を守っていくんだということですので、私は適切だったと。

---ご覧のような警護体制がとられていました。岸田総理の演説予定の場所には岸田総理の近くには計5人がいた。そして聴衆側には6人の警護人がいて、うち2人は聴衆の中にいたということです。この配置はどう見たらいいんですか?
20230417_itou_gyou.jpg(伊東鋼一氏)現場に着いたときの第1印象は非常にコントロールしやすい場所だっていうことで、適正な人数だと思いました。狭い地域の中で、当時雨降ってましたので、家の屋根のあるスペースの中でそれを囲む形で警察官が配置されてますので、非常に動きも見やすい。それぞれの聴衆の顔も見えるっていう状況がありますので、非常にコントロールしやすい場所だというふうに感じました。

---聴衆がおよそ200人に対して、岸田総理の立ち位置と、そしてSP・警護の位置は適切だったというふうに見てらっしゃるということですね。はい、はいでは、その当日の現場での岸田総理の動きを見ていきます。車から降りた後、緑色のいけすの横にお刺身を食べる試食のブースといいますか、スペースがあり、そこで試食をした後、また聴衆の場所に戻るような形で演説予定の場所に戻った。その際に投げつけられたということなんですね。総理が動いている最中に聴衆と非常に近い距離で言葉をかけたり、握手もしていたのかな。この辺りの距離感に関してはどう思われますか。

(伊東鋼一氏)選挙期間中ということと応援で入っている総理の立場として地元の方もお願いをしている部分があるんだと思うんですね。それとローカルで非常にのどなか漁港ですので、警察もコントロールしやすくて、不審者も見つけやすいっていう安易な考え方を持ってしまったんではないかなと私は印象として持ちました。

---例えばなんですけどもこれ入口を設けて要するに聴衆を全部チェックするですとか、例えば持ち物検査をするとかは可能なんでしょうか?伊藤さんどう思われますかこれが会場になってますけども、例えばここに柵を設けるとか?

(伊東鋼一氏)ローカルな本当にのどかな漁港なんですね。そこまでを想定をして、持ち物検査をするっていうことはやっぱり考えなかったんだと思うんですね。漁港の関係者の方も、ある程度コントロールできると。
漁師の方々も、普段から顔見知りの人が多い、ということがあったもんですから、やってなかったんではないかなと。非常に残念ですけども。

「和歌山県警には申し訳ないが、もっと警備の底上げが必要かと」

---伊藤さんが違和感を覚えたのが、木村容疑者が投げたとき。投てきがなぜ許されたのかというところ。年齢や服装、そしてリュックを背負っていたところからも、動向確認のために注視・把握をすべき人ではなかったのかということを違和感覚えたと。事前に木村容疑者のことをキャッチできなかったというところですね?
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(伊東鋼一氏)地元の和歌山県警の方には厳しいかもわからないですが、もっとした警備の底上げをして、警備についている警察官に、朝でも構いませんので、それを指示徹底して、現場には幹部警察官も入って、それぞれ現場を見て、把握すべきだったと思うんですよね。

---木村容疑者に気付くことができたかどうか、その辺りの感触ってどうですか。

(前田春香MBSアナ)地元の漁師の方にお話聞いたんですけれども、やはり当日は地元の方がとにかく多く訪れていたので、事前に選挙事務所から漁業関係者の方に普段見かけない顔があったら気にかけておくようにという通達があったそうなんですね。また別の漁業関係者の話では、この辺りは普段荷物を持って出かける地域の方だったり、漁師の方が少ないそうなんです。当日もあまり大きな荷物を持っている人がそんなに多く見かけなかったそうなので、手荷物検査をしておけば、防げたのではないかなという声もありました。

(伊東鋼一氏)あとはこの会場の近くでやるんではなくて、近場の道路のところで検問か何かを警察官を探しておけば、もっと違った対応ができたんじゃないかなという思いますね。

---豊田さんは今回のこの事件に関してはどういうふうに守ってますか。

(豊田真由子氏)私も見方を変えた方が多分いいと思ってて、確かもうちょっと事前に不審者チェックとか、いくつかあるかもしれないんですけど、問題は多分そこではなくて、もうこういう方法で不特定多数の人が荷物検査もなしに総理に近づけるっていう選挙演説に行くことやってる限り、これを防ぐこと私は無理だと思うんですよ。
それはもうやり方を変えるっていうことしか多分なくて、だから翌日の大分老田なんかは、囲いを作って、荷物検査をして入口を制限してやってるんですけど、それを衆議院総選挙とかって全部でやっていくってなると、また大変なので屋内にするかとか、本当に考え直すときだと思いますよね。

---選挙ってなるとやっぱり政治家、やっぱり有権者に近いところに行きたくなるんでしょうね?

(豊田真由子氏)そうです。やっぱり身近に親近感を持って、総理が来てくれて握手してくれたってことで、距離を縮めたいってこと。大事なのが、漁協の場合は別ですけど、駅前とかでやる場合って、支持者だけじゃなくて、集まった人とか通りかかった人が盛り上がりを見て、それで投票行動に影響を与えるのがあるから、みんなに見てもらうっていうことの効果をすごく期待しているので、そういう二つの意味があると。