日銀の新総裁に植田和男(71)氏が就任したことで私たちの生活はどう変わるのでしょうか?気になる質問に住宅ローンアナリストの塩澤崇氏が答えてくれました。塩澤さんは気になる住宅ローン金利について<フラット35>の金利は現在1.76%が1.5%程度の下がるのではと話しました。また、昨今の物価上昇については「海外の資源高による一時的なもの」としたうえで「需要の高まりによる2%の物価上昇が重要」と話します。
(2023年4月11日MBSテレビ「よんチャンTV」より)

植田和男新総裁は「こちらが心配になるくらい、頭のいい子でした」

ーー日銀の総裁の政策次第では、身近な物価とかお給料って変わってくると言っていいです?

(塩澤崇氏)「そうですね。日銀は金利を上げたり下げたりすることで、お金の量を調整するんですね。例えば金利を低くすると、皆さん借りやすくなるので、消費や投資に回りやすくなる。そして景気が良くなるという効果が見込まれますので、今必死に、日銀は金利を低く抑えることで景気を何とか上げようとしているというそういった状況です」

ーー新総裁の植田和男さんはどんな人物なのか少しまとめています。お酒好きで、ヤクルトファン、野球好きだということです。東京大学を卒業し、マサチューセッツ工科大学の博士課程を修了しています。日銀総裁として戦後初の学者出身者だということです。先日の植田さんの会見はどんな印象を受けましたか?

「非常に謙虚な方だと印象がありましたね。具体的には、質問で「学者等、政策担当者より日銀総裁これの違いは何か」という質問受けたんですけれども、学者としての変に高いプライドがにじみ出ることはなかったと、本当に淡々粛々と回答されていたというところが非常に印象的でした」

ーー今後、植田新総裁に期待するのはどんなところですか?
「やはり政治経済とのしがらみがない人ですので、正論でモノが言えるといったところに期待したいですね。あと学者出身というところで、データを見ながら客観的に分析して判断できるといったところも、強みかなと思いますので、期待したいです」

ーー学者出身ということですが、逆に課題は何かありますか?
「裏を返せば、政治に対して強い味方がいないんですよね。黒田総裁のときは安倍さんという強い支援者がいたんですけども、植田さんの場合は、そこまで政治に強い味方がいないと。今は日銀植田総裁に対して非常に高い期待値があるんですけれども、万が一逆風が吹いたときにどううまく立ち回るかというところ、これが次の焦点になるんじゃないかなと思いますね」

ーー植田新総裁は会見で、黒田前総裁の路線の継続と金融緩和を続けることが適切と繰り返し発言をしました。これがキーメッセージなんじゃないかというのが塩澤さんの見立てということでしょうか?

「黒田さんから植田さんになるというところで、政策に違いが出るんじゃないかという懸念点があったんですが、それを丁寧に繰り返して黒田路線の継続だというところを答えていたのが非常に印象的でした。やはり市場との対話を重視するというふうに、以前から話していた方なのでその通りの会見、安全運転な感じといった印象ですね」

ーー黒田前総裁は10年間で経済を立て直すまでは行かなかったということだそうですけども、その方針を継続するのはどういうことなんですか?
「やはり日本経済がまだ十分に立ち直ってないっていうこと故に、金融緩和、低金利にしてお金を借りやすくする必要性、があるということなんですね。金利を逆に上げるということは、経済にブレーキをかける。そういった意味合いが出てしまいますので、まだ日本の経済が強くない中、利上げは適切でないと。金利を低くすることが重要じゃないかというふうに考えていると」

ーー会見では物価上昇率2%を目指すと新総裁は話しました。では消費者物価指数どうなっているのか。日銀の資料から見ていくと、2017年度ぐらいからずっと1%満たないくらいを過ごしていたと。2022年ぐらいはコロナ禍で低迷し、2021年、2022年度くらいからぐっと上がっているこれはウクライナ侵攻などの外的要因が大きかったのではないかという見立てもありますがいかがでしょうか?また、日銀の資料によりますと、グラフだけ見るともう物価上昇率が2%前後には来ているのかなというふうに思うんですが2%がちょうどいいということなんですか?
「世界各国で、やっぱり2%ぐらいが程よいインフレ、経済が良くなっている状況というふうに考えられておりますので、それに日本も合わせたというところなのかなと思います」

ーー今後は、もう物価の上昇は収まっていくというのが見通しだと?
「今4%と非常に高い状況なんですが、海外の資源高、原油とか、そういったところが高くなってるがゆえに物価が上がってるんですね。なのでこれは日銀が目指す物価上昇の姿ではないんですよ。『コストプッシュ』という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、単に輸入物価の値段が上がってるから、販売価格も上がっているっていうのは、あまりいい経済のサイクルじゃないんですよね。目指すサイクルは、いわゆるの需要が増えているっていうことなんです。需要、物を買いたいという気持ちが高まって、みんなが物を取り合って、物の取り合いするから物価がどんどん上がっていくっていう、これなんですよね。最終的に安定的に2%上昇になっているかどうかっていうところがポイントなので、23年度24年度が2%近いよねっていうふうにおっしゃっていただきましたけれども、そのメカニズム、仕組みがコストプッシュなのか、需要が牽引するかっていうところをしっかりと見極める必要はあるかなと思います」

住宅ローン<フラット35>は1.76%→1.5%程度へ、理由はアメリカの不景気

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ーーそして金利は今後どうなっていくのか、塩澤さんの見立てで住宅ローンはこう変わります。まずは固定金利「フラット35」。現在は1.76%の金利なんですが今後1.5%程度まで下がる可能性もありますよと。変動金利に関しては、当面低いままを推移する。マイナス金利の解除などがない限りは当面低いままなのではということです。塩沢さんこの間まで固定金利はもしかしたらちょっと上がるんじゃないかっていう話あったと思うんですけども、今度は下がる可能性があるということなんですね?

(塩澤崇氏)シリコンバレー銀行の経営破綻とか、クレディスイスの経営不安とか、欧米の銀行のいろんな金融危機っぽいことがあったかと思うんですが、あれがいわゆる欧米経済の不景気の入口のシグナルですよね。今、結構景気は欧米強いんですけれども、徐々に不景気に入りつつあるんですよ。そうなると、欧米の中央銀行どうするかというと、今すごく利上げしてるんですけども、これは打って変わってどんどん利下げという形で金利を下げるようにしていきます。そうなると日本の長期金利、これはアメリカと日本というのは本当に経済が表裏一体というか連動していますので、アメリカの金利が下がれば、今、日本低く抑えられていますけれども、より低く下がるっていう形になりますので、そうなると、日本の住宅の固定金利は長期金利と連動していますので、金利がどんどん下がっていくと、固定金利も1.5%ぐらいまで下がる可能性というのは十分あるかなと考えられます」

ーーでは、給料はどうなるのか。会見で植田新総裁は『春闘が喜ばしい動きになっている』と話しました。しかし『金融政策だけで成長率を上げるのは難しい』とも話しています。塩澤さんによりますと「企業個人がお金を借りやすい金融緩和策はしばらく継続するであろう」。一方で、給料の上昇というのは、岸田総理の仕事と考えると話します。春闘では大企業中心に賃上げがっというのは大きなニュースになりましたけども、中小企業には及ばなかったということなんですよね?

「春闘ですと連合という大きな労働組合が集計結果を発表して、どれぐらい賃上げされたかってなっているんすけども、連合の団体というのが大体140万人ぐらいいらっしゃるのですよね。参加団体として日本の就労者って大体7000万人いらっしゃるんですよ。なので賃上げされたと言ってもたった2%の結果なので、98%の残りがですねどれぐらい賃金上がっているかってまだ不透明な状況ですよね」

ーーニュースで大きくよく聞く企業の名前ばっかりなので取り上げられちゃうんだけども、実際どこまでかっていうところは、まだわからないということですね。上田新総裁は『学者と違うのは、出した結論に責任を取らなくてはならない』とも語っています。これから新総裁としてのお仕事を期待したいと思います。