カンボジアを拠点にする特殊詐欺グループの19人が日本での逮捕に向けて移送されました。19人は特詐欺グループの一味で、いわゆる「かけ子」と呼ばれる電話詐欺の役割を果たしていたとみられます。ではなぜ、カンボジアなのか。犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「国内でかけ子を募集するとき、東南アジアのリゾート地だと観光客に紛れやすいし、あいてる時間にリゾートを楽しめるので勧誘しやすい」といいます。特殊詐欺グループが国内リスクを避けて東南アジアに拠点を移しているとも。
(2023年4月11日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎小川泰平氏(犯罪ジャーナリスト):元神奈川県警刑事 30年の勤務経験 第一線で数々の事件を解決

カンボジア~羽田 容疑者19人の移送にチャーター機代は約1000万円

---カンボジアを拠点としていました。特殊詐欺グループ19人の男、まもなく日本へということで先ほど空港に到着したということです。グループの拠点があったのは、南部のビーチリゾートシアヌークビルという場所です。ご覧のようにカンボジアの南部リゾート地ですね。近年は中国資本によるカジノ建設などが開発進んでいます。中国人らの詐欺事件などが多発しているということです。日本大使館によりますと、法制度が未発達で、汚職もまん延しているとされており、当局による取り締まりが十分でないというコメントをしています。

(小川泰平氏)東南アジアに特殊詐欺の拠点を設けるっていうのにはいくつか理由があります。まず一番大きい理由は海外に拠点を置くことによってこの「かけ子」のリクルートがしやすいと。日本でかけやらないかって言っても今はもうやる者がいません。海外だったら、「簡単には捕まらないよ」ということで、海外でかけ子をやるということでハードルが下がるということですね。あとは東南アジアだと、これまでで特殊詐欺の拠点になった場所が中国、タイ、フィリピンで、今回はカンボジアですが、いずれも2時間以内の時差です。生活で時差の関係を考えるとやりやすい。あとは、ある程度リゾート地、特殊詐欺の時間が終われば、ある程度遊べるというか、そういった地域環境でないといけない。あとは、Wi-Fiのネットの環境が整っているといったような場所で、この東南アジアが選ばれる。もちろん後、行き来がしやすいということもありますね。

---カンボジア、ビーチリゾートを拠点にしていたというのが今回の犯行グループです。特殊詐欺グループ19人、大半はかけ子とみられ、中には暴力団関係者も含まれているようです。彼らの移送に、警視庁の捜査員およそ50人を現地投入しかもこれ帰りですね、カンボジアから羽田はチャーター機を利用するということです。チャーター機のコストですが、航空会社に聞きますと、かなり幅はあるということですけども。最低でも1000万円以上かかるのではないかということです。この捜査員50人は非常に多いなというふうに感じたんですけども?
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(小川泰平氏)いや私は全然多いと思ってなくて、逆に少ないぐらいです。というのは容疑者19名います。19名を1回で連れてくるということは、1名に対して1名で最低2名、プラス責任者ということを考えるとですね、本来なら60名ぐらいはいなきゃいけないんですけども、50名ということなので、特段多いというわけではない。ただこれを何回かに分けて帰ってくれば、前回フィリピンからですね来るときのことを考えていただければわかるんですけども、2名の容疑者を連れてくるのに7名もしくは8名の捜査員がいたということを考えると、今回は逆に少ないぐらいだと思います。

---以前ですね、ルフィと名乗っていたフィリピンの詐欺グループの移送時の様子なんですけども、この赤が、容疑者2人で、その容疑者を取り囲むように青色がこれ捜査員なんですけど、こういう形で日本に移送されたと言われていますけども、今回チャーター機ということでありますけども、これに近いような状況になるんでしょうか?
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(小川泰平氏)今回はですねチャーター機ですから、ただ飛行機の大きさによりますけども、例えば19名ですから38列もしあるとすればですね、一つずつ間を置いて、しかも一番前が右の端、次は左の端というふうに順番に、絶対に顔が見えない。また話し声も聞こえないような態勢で、しかも捜査員が必ず周りを囲んで移送するというふうになると思います。

---今夜10時ごろ、羽田空港に到着をするということです。では今回のこの特殊詐欺グループ摘発までということで振り返りますと、今年1月、現地日本大使館に情報提供がありました。その情報というのは、「ホテルに閉じ込められている日本人がいる」というものでした。カンボジア当局が5つの部屋にわかれて滞在する日本人19人を発見し、拘束しました。19人はプノンペンの警察関連施設に収容されたということです。捜索した部屋からは、パソコンそして携帯電話50台以上が様子押収されて、既に警視庁へということになっています。カンボジアの当局者は、容疑者たちは何を聞いても答えてくれなかったと、容疑者たちは何を聞いても何も答えてくれませんでしたというふうにコメントしています。19人のうちの一部は、カンボジア当局に対して「仕事を探しに来ていて、犯罪はしていない」と現地メディアが伝えているところです。ここだけ振り返りますと、元々特殊詐欺グループだということがわかっていて踏み込んだわけじゃないということなんですね?

(小川泰平氏)実はですね、プノンペンの日本大使館にもう警察官が外務省の職員として身分を変えて、実際に駐在しております。閉じ込められている日本人がいるというのは、昨年末にタイのバンコクで、グループから抜け出して逃げ出して警察に飛び込んだ者がいるんですね。そのときも監禁容疑で捕まっているんですが、今回はどなたかホテルに泊まっているものが誰かにそういうお願いをして、大使館に連絡をしてもらったんじゃないかなというふうに。そこで大使館にいる警察官が連絡をしてということで、大体このあたりでこういうことが起きている特殊詐欺グループだっていうことは、大体わかっていて、それによって警察に入ってもらったというところから考えると、ある程度特殊詐欺のグループだろうということはわかっていたと思います。フィリピンで2年前に日本に強制送還され逮捕され、実際に出てきた者がいまして。このルフィの一味というかですね。そのときかけ子をした者に私インタビューしたのですが、その者は最初ツイッターの中で、「高額バイト」みたいな検索から引っ掛かって、連絡をすると違うテレグラムに案内された。そこで話をすると「かけ子をやらないか」と最初から言われていました。ただ、借金が数百万あって、毎月最低でも50から100は稼げるよ。しかも日本国内ならやりませんっていう話をしたら、「いや実はフィリピンなんだ」ってことで、それだったらやってみようかなというふうに考えたということです。今は騙して連れて行くっていうようなことはしないで、もう初めからかけ子だということで、しかも海外なんだということで募集というかやっているみたいですね。以前ですね、未成年の女性、女子中学生とか女子高生が下着を売るっていうのがあったと思うんですね。それについては、捕まえるわけではなくて補導するってことで警察官がなりすまして、その少女と会って補導しています。それに近い形で高額バイトがあればですね、そこに警察官がなりすましておとり捜査。グレーゾーンかもしれませんが、そこに行って高額バイト募集しているものを捕まえる。例えば法律ってすごい時間がかかるので、当初は条例とかですね、早急にしてもっと踏み込めるようにする法改正が必要ではないのかなと私は個人的に思っています。

容疑者19人の中に「工藤会」の暴力団組員も...その上の首謀者を暴き出す「突き上げ捜査」がポイント

---今回の事件に関する捜査のポイントってはどういうところでしょうか?

(小川泰平氏)ここにいる19名だけではないですね。当然ですけども、ただ今回は19名の中に暴力団、反社と言われているものですね。九州の工藤会の者が含まれているという話は既に出ています。が、そのものが主犯格ではない、当然ですけど、その上に首謀者がいて、またその上に黒幕といったものがいる。もちろん19名のグループだけではなくて、他のグループもいるはずですね。もちろん被害付けをして再逮捕なりそういったこともしていく必要があるんですけども。やはりどこまで上に突き上げ捜査ができるか、というところがポイントになると思います。

---今回は都内の女性にうその電話をかけて電子マネー25万円相当をだまし取った疑いということなんですけども、おそらくこれだけではないということなんでしょうか?警察の見立ては?

(小川泰平氏)そうですね。これは今年の1月24日の事件なんですが、当然ですけどこの19名もいて一件だけなんて絶対あり得ないので、そういったところも被害被害付けというんですけども、被害を判明させると同時に、もっともっと上に突き上げ捜査、事件の真相究明にたどり着かないと、本当にイタチごっこになってしまうんじゃないかなと思いますね。

---元特殊詐欺グループの主犯格の「フナイム」さんも、現金の受け渡しで、受け子は警察の騙されたふり作戦に警戒、一方で電子マネーや仮想通貨、海外だと、ほぼ追えないというふうに話しています。犯人側は「最低限のリスクで最高の金額を受け取る」を常に考えているので、電子マネーを使った手口はこれからもどんどん増えていく。皆さんおっしゃるようにたちごっこになっている。金融庁などの注意喚起ですけども、皆さんこれぜひ覚えておいてください。改めてなんですが、プリペイドカードそのものを相手に渡していないので、安心してしまいがちですが、カードに記載された番号等を相手に伝えることは、購入した金額価値を相手に全て渡したことと同じです。だからカード自体は手元にあるから安心しないでくださいもしもそれで何か番号教えてって言っても絶対伝えてはいけないということ繰り返し注意喚起をしています。