知人の女子大学生・濱野日菜子さん(21)を劇物タリウムを使って殺害した疑いで逮捕され、3月24日に殺人罪で起訴された不動産業・宮本一希被告(37)に新たな事実が。2020年7月ごろ、宮本被告の叔母(父の妹)で当時は不動産会社の代表取締役だった女性が体調不調を起こして重症化、今も意識不明で入院中との事実が。代表取締役が数か月後に宮本被告に変更されました。犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「叔母が病院に搬送されてきたときの状態や誰が付き添っていたのか。吐しゃ物の有無などの捜査は進められているだろう」と話します。(2023年3月24日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

小川泰平氏(元神奈川県警捜査員 30年の勤務経験 第一線で数々の事件を解決、事件捜査のリアルを描いた著書多数)

宮本被告のスマホに複数の検索履歴「タリウムの中毒症状」や「過去の事件」

---タリウムを使ったとみられる殺人事件。今から約5か月前の去年10月11日、宮本被告、そして亡くなった濱野さんは2人で会食をした後、濱野さんの家でお酒を飲んでいたということなんですね。日付が変わった12日の午前、濱野さんがせき込み始めました。逮捕前の任意聴取で宮本被告は「薬を買って飲ませた」と供述しています。同日12日、宮本被告は濱野さんの両親に電話をします。両親が個人病院に連れて行きましたが、対応できず、総合病院へと搬送されました。そこで事件性を疑った医師が警察に通報。そして3日後の15日に濱野さんの死亡が確認されました。死因はタリウム中毒による「急性呼吸窮迫症候群」。重度の呼吸不全を起こしていたということです。宮本被告はきょう3月24日に起訴されましたが、現在警察はどのような捜査を行っていると見られますか。

(小川泰平氏)6か月前の昨年10月に事件は発生し、当初からタリウムが検出されたというのは、警察はこの5か月間、相当慎重に捜査を進めたということが言えると思います。その中で検察庁と協議の上、逮捕状を請求し、逮捕状の発布を得て逮捕した。逮捕すれば否認する、もしくは黙秘するっていうのを前提で逮捕する以上、起訴できる、公判維持ができるというようなことを踏んで対応したんだと思われます。ただ今一度、入手経路、これが一番大きいこと、あとは摂取方法を警察の捜査で徐々に進んでいっている。また10月の時点で、3年前の7月に宮本被告の叔母が意識ない状態で、まだ入院されているということで、今回の事件、昨年10月以降にわかってきた。その間に病院等で資料等ですね、そういったものが病院に保管されているかどうかっていうようなことも今後重要なことになっていくのかなと思います。

---今、事件に関して2つの新事実がわかってきています。まず1つ目から。宮本被告のスマートフォンを解析したところ、事件当日にカリウムの中毒症状やタリウム関連の過去の事件について複数回の検索履歴が残っていたということがわかったそうです。この複数回の検索履歴が残っていたことがわかったということは証拠としてはどれぐらい重要なのでしょうか?

(小川泰平氏)検索履歴があったからといってすぐに逮捕というわけにはいかないですが、検索履歴とプラスして、前後にそれ以外にも必ず何か検索しているはずなんです。必ず検索の前、検索の後、あと他にも検索している事項が必ずあるので、そういったことも含めて(警察は)総合的に判断したんだと思います。

---犯行に結びつく何かヒントがそこに隠されている可能性があるということですか?

(小川泰平氏)そうですね。今回タリウム、例えば「販売所」とかですね、「タリウム購入場所」とかですね、そういったタリウム関連のところを検索しているんだろうと思われます。

---今回使われたとされるタリウムは劇物で、白い粉状で水に溶けやすく無味無臭、致死量は約1グラムとされています。タリウムは毒物および劇物取締法に指定されていて、販売するには各都道府県知事に登録が必要。さらには年齢や名前・職業などが確認できない人には販売できません。入手ルートはどのようにみていますか?

(小川泰平氏)数年前に愛知県で名古屋大学の大学生のタリウム事件があって、取材したのですが、東京とか大阪とか大きな町の薬局には販売されてなかったのですが、地方に行くと「殺鼠剤」のようなものが実際販売されていました。当時も大学生が年齢を偽って購入していた履歴がありました。一概には言えませんが、(宮本被告が)不動産の賃貸業等をやっていたということを考えると、そういった殺鼠剤等を使用していた可能性、ですからそういったこれまだ何とも言えませんけど、2020年、3年前に亡くなった伯母さんの事件もあるんですけども、かなり昔から所有していた、持っていた可能性がある、ということが言えるとは思います。ですから以前そういった合法的に購入したものを持っていて、それをずっと保管していた可能性もなくはない、もしくはどっか、ただインターネットでいろいろ調べたんですけど、これを売っているというのがなかなかないんですよ、日本国内では。

2年前、不動産業の叔母が体調不良で今も意識不明、そして叔母に代わって宮本被告が代表取締役就任

---新事実として不審な出来事があります。宮本被告の叔母にあたる人が、2020年の7月ごろ体調不良で病院を受診します。重症化し、意識不明で現在も入院中だということなのですね。叔母にあたる人は不動産会社の代表取締役をしていましたが、登記簿によりますと、叔母の入院の数か月後、代表取締役は宮本被告に名義変更されていたということなんです。捜査関係者によりますと、警察は宮本被告の関連があるか慎重に調べる方針だということです。警察はこの叔母の状態ですよね、意識不明、入院中ということで、ここにも捜査するということになるのですか。

(小川泰平氏)そうですね。この病院で保管している宮本被告の叔母さんのものですね。例えば「吐しゃ物」とか「尿」だとか。そういったものが保管されているか否か。あとは病院に搬送されてきたときの状態。誰が搬送を依頼したのか?誰が付き添っているのか?そのあたりですね。前に宮本被告との接触があったのかということは、もうすでに昨年の10月、逮捕された後に、捜査が進められていたのだろうというふうには思います。

---三澤さんはここまでの捜査どうみていますか?

(MBS・三澤肇解説委員)叔母が重症化しているということで、それがタリウムが原因かどうかが最大のポイントになってくるとは思うんですが、やっぱりタリウムもその薬物の「指紋」というものがあって、例えば和歌山のカレー毒物混入事件のヒ素は「アンチモン」とか「スズ」とかいろんな不純物が混ざっていて、ものによって違うのです。それが「指紋」になって同一性がわかるんですよね。今のところ被告の周辺からタリウムは出ていないということなんですけれども、もしタリウムが出てきたとして、吐しゃ物であるとか叔母の関連物であるとか、そういったところで薬物の「指紋」が一致すれば、物的証拠になりうるのかなと思うんですが、まだ出てきてないので、そのあたりは注目してます。

---事件から5か月後の起訴となりましたが、現在も被告は黙秘を続けているということです。小川さん、今後の捜査のポイントを教えてください。

(小川泰平氏)やはり一番は入手経路。あとはどういうふうに摂取させたのか。動機はある程度警察もわかっていると思うんですが、本人の口から、やっぱり動機については話しをさせる必要があるのかなということが言えると思います。