中国全人代で李強氏(63)が首相に任命されるなど新体制で歩み始めました。一方で、中国は積極的な外交を展開。犬猿の仲の中東のサウジアラビアとイランの歴史的和解を仲介。

さらに来週にはロシアを訪問するだけでなく、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談するのではないかとの情報が世界を駆けめぐっています。

中国専門家の拓殖大学教授・富坂聰氏は「民主主義を押し付けるアメリカと違って、中国はうるさいことを言わないので仲介しやすかったのでは。そして産油国になったアメリカが中東への興味を失った影響も」と話します。
(2023年3月14日MBSテレビ「よんチャンTV」より)

富坂聰氏(元週刊誌記者、フリージャーナリストを経て拓殖大学教授。中国情勢や中国問題を中心に継続的に現地取材を続けている)
お披露目!習近平国家主席の「お眼鏡にかなった9人」

---拓殖大学の富坂先生に解説をしていただきます。日本の国会に当たる中国の全人代が昨日閉幕しました。9日間の会期の中で富坂先生が最も注目したポイント、それが閉幕後の記者会見だったということなのですね。これまでの会見では、新しく任命された首相1人がこれを行ってきたということですが、今回はこのようにズラリ並んでいます。今までと全然違うと。真ん中にいるのが李強さんですが、全部で並んでの会見となりました。これはどういうことなのでしょうか?

これは1人の人間に権力を集中しているという状況ではなくて、ある程度仕事を分散してやっているということを見せる意味なのか、もう一つは今時点でのその李強さんが1人で会見やるほど強い権力を持ってないということなのかもしれないですね。実は李強さんの演説とかそういうものっていうのはほとんどで表にあまり出ないので、ほとんどの中国人は聞いたことがないと。ただこの会見を聞く限りは、要するにたたき上げの人なので意外にしっかりしているという評価が多かったん、ただでやっぱりその無難で華がないのでいわゆる未来に向けて中国がすごく伸びていくと印象は受けなかったという意味で、やはり何て言うのですかね、ちょっと物足りなさというかねちょっと薄曇りみたいな雰囲気を受けたということですね。

---これ9人並んでいますけども並び方に意味があるのですか?

特に中国で注目されているのは丁薛祥さんですね。共産党序列6位の副総理になったわけですけども、この方とワンツーっていう意味ですごく注目を浴びています。だから例えばですね、これ三つぐらいパターンがあると思うのですけど、習近平さんが残ってその次丁薛祥さんが李強さんに代わっていわゆる首相になるパターン。2人が一緒に上がるパターン。それと追い抜かして、丁さんがトップになるパターンとか、今ネットの中にはものすごくそういう話題が出ては消えると。すぐ消されますのでね、そういうような見方も出ているようですね。

---まとめると、1番の方と2番が方が、さらに上に行くチャンスがあるということですね?

この2人っていうのが次の世代の権力の象徴いくのではないかということですね。

---いずれにしても9人並んでいますけど、皆、習近平さんの側近といいますか、習近平さんを支持する人たちということなんですよね。

どこかの時点で彼の眼鏡にかなったっていう人たちばっかりですね。

さらに驚愕!極秘裏で行われたイラン・サウジの仲介

---そしてもう一つポイントのニュースです。全人代の開催中に飛び込んできた世界が驚いたニュースこちら今月10日に中国が犬猿の仲とされていたサウジアラビアとイランの仲介を、外交関係の正常化で合意に至ったというニュースです。世界が驚いたニュースというふうにご紹介をしているんですけど、これどれぐらいびっくりしたニュースなのですか。?

とにかく驚愕じゃないですか。つまりね、この2つの国の手を握らせるなんていうのはもうありえないぐらい深い対立、実際にいわゆるその色の二つぐらいの場所で今でも代理戦争やっていますのでもうこれもあからさまにやっていますのでね。だからそれがあの手を握るということ、第1のポイントとしてこの二つの国の手を繋げたということが大きいですけども。もう一つのポイントはこれだけの動きがあったら事前に何かわかったはずです。ところがその全人代の裏側で静かに進んでいて、発表当日まで世界が知らなかったと。二重の驚きがあった。全人代で信号新しい外相ですね会見行ってて、いたんですけども、その裏でもほとんど合意ができていたのですよ。もう5日ぐらい前の話ですけども、
それを隠し通して本当に完全に本番までお昼まで情報が漏れなかったっていう、この凄まじい外交というのはどういうことだろうなと。

---驚愕という言葉ありましたが、二つの国、どれくらい対立していたのかまとめています。地図で言ってもサウジアラビアとイラン非常に近い国ですよねどんなところで対立していたのかまずは宗教です。どちらもイスラム教ですが宗派が違います。サウジアラビアはスンニ派、イランは椎谷派が多数だということです。そして米国関係も最近はサウジアラビアがギクシャクしているとはいうものの、同盟を結んでいるしかし、イランは対立。さらに他にもですね、中東各国での争いでは対立する勢力をそれぞれ応援しています。シリア内戦では反体制派を支持しているか、アサド政権を支持しているかさらにはイエメンの内戦暫定政権を支持しているのか、反体制派を支持しているのか、様々なところで対立をしています。中国との関係は、2国とも強いというところですね。サウジアラビアにとって中国は最大の貿易相手であるイランは安全保障や経済で相互協力関係があるということで、今回は中国が仲介をし、歴史的な和解に至ったということです。先生、どうしてこれ中国はこの両国を仲介することができたのですか。

実は習近平昨年の4月からグローバル安全保障イニシアチブということをもう言い出していて、その一言が発せられてからこれがダーッと中国の外交関係者の中で言われるようになってきていますが、これはどういうことかっていうと、いわゆる本当に純粋な仲介者というのをやっていくことの方がより自分たちにとっても利益があるという考え方が背景にあるんですよね。つまりイランに力を加えて反省を促して、「いやあすいませんでした。反省しましたサウジと仲良くします」ではどうしようもないと。両方が受け入れ可能な状態の安全保障を作らなきゃいけないというやり方で、要するにどっちも何て言うかそこ損をしない形での仲介ということですねそもそもがですね何か要求をしない。言うかアメリカだと例えばあなたの国は民主的でないとか独裁ですよとかこれが駄目ですよ。要するに制裁でやっていくっていうのがあるんですけど、中国は基本的にうるさいこと言わない。楽なんですよ。中国の姿勢っていうのは先進国には極めて評判が悪いんですけども、新興国、発展途上国にとってはぬるま湯ですから。非常にやりやすい。だからそういう意味では純粋な仲介者の立場であったということもあると思いますね。

---そして中東での仲介国として存在感を強める中、習主席が来週にもロシアを訪問し、プーチン大統領と会談かと言われています。さらにはウクライナのゼレンスキーとも大統領とも電話会談をするのではないかと言われています。中国はこれまでに停戦を呼びかけるは和平案というのも既に出しているわけなんですが、これが現実味を帯びてきたのかということです。

今ですね両国は今のところ例えばプーチン支持は72%を下回ったこともないですし、ゼレンスキーが戦争やり続けるっていうことにすごい強い支持ありますので、仲介が可能かというと中国は現実的じゃないというふうに見てると思いますね。ただ、いわゆる和平案と同時に「グローバル安全保障イニシアチブ」というコンセプトペーパー」というのも出しています。実は裏でも少し動いていって、ウクライナのクレバ外相はニューヨークの会見のことについて、「中国の提案に対して一部共通認識を持った」という言い方をしている。ゼレンスキーさんはこの和平案の提案について「これは当事国しか出せないんだって」と言って冷たい反応したんですけど、一方で「習近平と会いたい」と言ったわけですね。実はウクライナと中国の仲はすごくいいんですよ。意外かもしれませんけど。ですから(中国は)ロシアとはまあ悪くないですし、プーチンは昨年の2月に中国行っていますので、首脳外交というのはこれ1回来たら1回行くのがこれ礼儀ですから、だから多分今年も行くと思いますけども。そういう中で、中国は「もう制裁によってロシアが反省して何かを変えるっていうことはあり得ない話だ」というふうに思っていますので、直接話し合いしか解決する方法がないと言っています。だから少しどっかにきしみが出てきたり、疲れが出てきたりというタイミングで、中国の存在感が急激に上がるってことはあるかもしれないですね。