政府は、3月13日からマスク着用を「個人の判断」に委ねるとの方針を示しています。これを受けて、人が集まるデパートやスーパー、JRは「客は個人判断」としながら「従業員は(概ね)着用」との方針です。プロ野球観戦は、歓声上げるときはマスク着用としています。また、今後の新型コロナワクチンの接種については「高リスクや高齢者は年2回」、「そのほかは年1回」としています。大阪公立大学大学院・城戸康年教授は「接種の回数や効果はまだ試行錯誤中」と話します。
(2023年3月9日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎城戸康年氏(大阪公立大学大学院教授):専門は感染症学、寄生虫学 コロナの治療薬開発や疫学調査に従事

「マスクはどんな時に何のために着けるのか」を個人が考えるとき

―――3月13日月曜日からマスク着用は個人の判断に委ねられることになります。各社の判断を見ていきます。百貨店の「阪急阪神」「高島屋」「大丸」は、お客さんに関しては個人の判断に委ねる。ただ、従業員に関しては引き続き着用を求めます。スーパーの「ライフ」はお客さんに関しては個人の判断ですが、従業員に関しては着用をお願いするが、強制ではなくなります。また「関西スーパー」も同様に、お客さんは個人の判断、従業員は着用します。また鉄道のJR西日本ですが、お客さんに関しては個人の判断に委ねられます。混雑時含めアナウンスで着用の呼びかけがなくなるということです。また従業員は乗客対応の際は着用するということ。またカラオケの「ビッグエコー」はお客さんに関しては個人の判断ですが、従業員は強制ではなく推奨、少し緩和されるということです。プロ野球は今年からマスク着用なら応援観戦が可能で、トランペットなどの鳴り物応援もOKということで、より盛り上がってくるのではないかと思われます。

いっぽう政府の判断については、厚生労働省の専門家会合の中で、5つの基本が示されました。マスクに関しましては、マスク着用・咳エチケットの中で、地域の感染状況、目の前にいる人の重症化リスクなどを考慮してください。また外出時はマスクを携帯、また必要に応じて着用できるようにしていうふうに示されています。

城戸先生によりますと、マスク着用の目的として主に2つあります。①風邪症状があるときに周囲へ感染を広げないためのマスクの着用。②病原体から自分を守るためのマスクの着用、を目的として挙げています。

 もう今、個人の判断になって、どの場面がどうとかいう時代ではなく「どの場面というよりも、何のために」を先に考えた方がいいのじゃないかなと思います。マスクは何のため有効かというと、自分に症状があるときにマスクをするというのが、これまでも最も効果が高いし、それだとわかりやすいよねというので、基本それにすればいいんじゃないかなと考えます。

次の、自分を守るためにはどうなんだという意見があると思いますが、それは①番目に比べてマスクの効果が落ちますので、ぐっと。なので、それは個人の考え方とか、必ずしも守る必要がないという方もいらっしゃると思うんですよね。なので個人の考えも含めて②番目は考えていけばいいのかな。なので、①番目を主に考えれば基本的にはいいのかなと考えます。

―――今まで通り、コロナが蔓延する前から、ちょっと調子悪かったらマスクしとこうかなっていうのありましたよね。

 おっしゃる通りです。自分が調子が悪いときは自分がよくわかりますし、なんか風邪っぽいなと思ったら、マスクをするというのが最もわかりやすい判断かなと思います。

―――やっぱり、ちょっとマスクを取るのが恥ずかしいっていう子どもも結構いました。そのあたりの影響ってどう思われますか?

 子どもに最も大切なのは成長・発達で、身体の発達もそうだし、精神面も含めての発達もそう、社会の中で我々生きていかなければならないので、マスクは果たしてどうなのかなというのは私もあの懐疑的に思っております。

―――国の見解として、地域の感染状況などを考慮と言っていますが、今、地域の感染状況がどうなっているのか、見ていきます。3月9日に発表された関西の新型コロナ新規感染者数を見ますと、大阪は474人、兵庫は381人となっています。亡くなった方の数は大阪5人、京都・兵庫はそれぞれ3人です。

 多かったときはもう1万人以上が感染ということもありました。その時期と比べるとぐっと下がっていますが、今も日々感染者や死亡された方が確認されています。感染の波はどう予測されますか?

 今後も間違いなく、今までのような波はやってくると考えられます。しかし、今のこの数字が示しているように、もはやこれが多いのか少ないのかさえわからなくないですか?さらに社会が変わっていって、みんなそれほど検査を受けたくないというのも変わってくれば、なおわからなくなってくるんです。

 なので、地域の状況を確認しろということですが、それは我々プロだってなかなかわからないものを、個人に任せるっていうのはどうなのかなと思うので、ますます地域がどの程度、感染があるんだろうっていうことを他の方法で考えていかなきゃならないと思うんですね。なので、そういうことを我々関係者は進めていかなければならないことかなと考えております。

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―――コロナのワクチン接種については今後、公費負担は来年の3月末までと決まりました。今年の9月から12月の間に5歳以上の全ての年代を対象に接種ができます。さらに2023年の5月から8月末までは、ハイリスクの方や高齢者など先行して追加接種が行われます。なので高リスク者・高齢者などは年に2回、それ以外の全ての年代は年に1回というペースになるということです。

―――65歳未満の健康な人の中で今ワクチンを受けようかな受けないかなと迷っている方は、5月7日までに受けないと、次受けられるのは9月になってしまうので一応5月7日までが基準になっています。若い人、健康な人は年に1回、高齢者は年2回というような回数に関してはどう思われますか?

 もう明確ないわゆるエビデンスというか、どんなスケジュールであれば、どんなメリットが得られるかというのはほとんどわかっていません。これまで最初に打った2回は、これぐらい打てば、これぐらいの人がメリットありますよというお話がわかりやすかったわけですが、もう将来予測も難しいので、年に1回打てばどれぐらいの人がどんなメリットを得られるのか、もしくは打たなければどんなデメリットがあるのかっていうのがほとんどわからない状況です。なぜならまだワクチンができて間もないですから。これは何年もかけて、インフルエンザでさえですよ、同じ研究をずっとやっても結論は出ないので、大体こんなもんだというのでやりながら試行錯誤してやっているわけなので、新型コロナについては、「はっきり言って何もわからない」と言っても過言ではないと思います。

---医学的根拠みたいなところはないんだけども、ひとまずちょっとこれで進めてみていかなければならないという段階ですか?

 そうです。インフルエンザもやってきたから、これでやってみようということです。

飲み薬「ゾコーバ」は1錠約7400円、1回の治療で5万1850円

―――薬についてです。国産初のコロナ飲み薬「ゾコーバ」が保険適用了承されました。薬の価格は1錠約7400円。5日間で7錠を服用するのが治療1回なので、治療1回あたり合計約5万1850円になります。高額ですね。保険適用3割負担の場合はこちらが約1万5000円になります。ただ当面の間、公費負担で患者の自己負担ではないということです。

―――効果としてはオミクロン株の症状が改善するまで8日だったところが1日短縮されまして7日程度になるということです。城戸先生は「服用してどんなメリットがあるのか研究が必要」と話します。

 薬については、いつ誰が飲むとどんなメリットがあるかっていうのがわかるから、初めて価値があるわけです。そうすると、今のところ1日症状が短くなることしかないので、1000円以内で済む解熱剤を飲むのと何が違うんだっていうことになってくるわけです。だけどそれをおしてでもやっぱりこれを飲んだ方がいいという方が中にはいらっしゃると思うんです。それは今のところわからないので、それは考え続けていかなければならないし、コロナが社会の扱い方が変わっても残念ながらこのコロナで亡くなり続ける方はいらっしゃると思います。その薬を誰に届けるかということも含めて、我々は考え続けていかなければならないことなんだと思います。