全国で約1000の選挙が一斉に実施される統一地方選挙。奈良の知事選挙は4月9日に投開票されます。『県外への人口流出』に悩む奈良県。各候補者は県が抱える課題にどのように応えていくのでしょうか。訴えをまとめました。

「県外への人口流出」が課題の奈良県を「働く街」に

 1300年の歴史を誇る古都・奈良。かつての都はいま、深刻な問題に直面しています。それは「県外への人口流出」です。22年連続で転出人口が転入を上回り、人口は20年間で11万人以上減少しました。奈良に産業がないのが一番の理由で、大阪など県外に働きに出る人が3割近くいるのです。
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 『大阪のベッドタウン』と呼ばれる奈良を『働く街』に変えようと動き出した人達がいます。一般社団法人TOMOSUの中島章さん(40)です。

 (一般社団法人TOMOSU 中島章代表理事)
 「どこでも自由に座って仕事をしていただくことができます」
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 開放的な室内にはデスクやテレビ会議用の防音ルーム、さらには個別の郵便受けも設置されています。

 (一般社団法人TOMOSU 中島章代表理事)
 「開業届を出したり法人登記を出したり、企業さんがここを拠点にできます」

 この施設では起業を目指す人に場所やノウハウなどを提供しています。目指すは『起業しやすい奈良』。
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 ここで実際に起業した人は次のように話します。

 (起業した人)
 「夫と2人で起業してロボット関係の設計開発をしています。奈良の人は大阪に出て仕事をされる人も多いですが、自宅から近い環境で仕事ができる環境が整っています」
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 中島さんの活動は起業家支援だけではありません。奈良県内の企業と県外に住む起業家らを結びつける取り組みを行っています。現在は奈良の伝統産業である固形の墨を製造する企業とのマッチングを模索しています。
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 (製墨『錦光園』 墨匠・長野睦さん)
 「業界的にも本当に使われなくなってきていて、需要がガタガタに落ちてきている斜陽産業でもあるので。新しい全然違う立場の方の意見や考えを取り入れながら、違った客層の方やこれから使っていただける方へのアプローチが絶対に必要だと思っています」
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 県外のビジネスマンに奈良に興味を持ってもらい、最終的には移住者を増やすのが目的です。知事選挙では奈良を活性化させる政策に注目しています。

 (一般社団法人TOMOSU 中島章代表理事)
 「若者がもっと活躍できるような場所になってくると、そのまま就職であったりとか学校を出てすぐに奈良で何か始めようみたいな方々がうまれてくるんじゃないかなと期待しています」

奈良県知事選挙には6人が立候補

 今回、奈良県知事選挙には6人が立候補しています。「県外への人口流出」について候補者たちはどう考えているのでしょうか。
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 日本維新の会の新人で元生駒市長の山下真さん(54)は、子育て支援に力を入れて人口流出を食い止めたいと訴えます。

 (日本維新の会・新人 山下真さん)
 「大阪や京都並みに授業料の無償化をしていく。子ども医療費の無償化とか、そうしたことも市町村と協議をして順次実施していきたいと思っています。特に、子育て中の女性の方が子育てと仕事の両立のために近場で働きたいというニーズはありますし、そうした職場を増やしていくというのも県の行政がやることだと思います」
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 無所属の新人で自民党県連が推薦する元総務官僚の平木省さん(48)は、企業誘致のための規制緩和と県内企業への支援に力を入れたいと訴えます。

 (無所属・新人 平木省さん)
 「工場を広げたいというときに高さの規制や区域の規制があって時間がかかりすぎるとか、ひとつひとつボトルネックを解消していくことが大事だと思います。技術が高い中小零細企業の海外への販路拡大であるとか、しっかりとサポートすることによって県内の企業の雇用が増えて確保することができると考えています」
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 無所属の新人で共産党が推薦する元大和郡山市議の尾口五三さん(72)は、高校や大学を充実させて若い世代が奈良に残れるようにするべきだと主張します。

 (無所属・新人 尾口五三さん)
 「奈良県は学校を廃統合して高校を少なくしてきたんですね。そうすると行くところがないからといって県外の高校に行ってしまう。特に大阪などですね。そうするとね、次は大学という時に奈良県に帰ってくることはまず考えられないんですよね。しっかりと高校を選んでいける、そして当然大学も充実させていけるような方向で考えていかなければならないと思っています」
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 無所属の現職で国民民主党県連が推薦する荒井正吾さん(78)は、これまでの16年間に工場を誘致して雇用を生み出したとして、今の県政を継続すべきだと訴えます。

 (無所属・現職 荒井正吾さん)
 「雇用にとって一番大事なのは工場、長く続く製造業であります。この16年間で424軒の工場の誘致ができまして、今は工場の立地件数が全国9位にまでなっています。雇用を生んで人口流出を止めることが実現しかかっています。まだ時間はかかりますが、この実現が成功モデルになってきていることを実感しています」
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 このほかにも、無所属の新人で元中学校講師の西口伸子さん(68)は、「小中学校で奈良への地域愛を育む教育をして流出を食い止めたい」と主張。
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 無所属の新人で会社員の羽多野貴至さん(43)は、「交通の便を改善し、企業を誘致して雇用を生み出したい」と訴えています。