2022年2月、大阪府門真市で当時中学3年生だった男子生徒が自殺した。その2か月後、両親の求めにより市の第三者委員会が設置された。そして取材班は今回、その第三者委がまとめた報告書を独自入手した。その内容は“異例”のいじめを認定するものだった。

自ら命を絶った15歳息子 学校に何度もSOSを出していたが…

 大阪府門真市に住む50代の女性。2022年2月、最愛の1人息子を失った。

 (Aさんの母親)「明るくて元気で。とにかく人が好きな子だったんですよ」
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 当時15歳だった息子のAさん、地元の公立中学に通う3年生だった。バスケットボールなどスポーツ好きで、4月から通う高校も決まっていた。誕生日を祝うメッセージを送るなど母親思いの一面もあったという。しかし、そのメッセージの1か月後に自ら命を絶った。

 Aさんは人とコミュニケーションを取るのが得意ではなかったことなどもあって、中学校に入学してから徐々に同級生から仲間外れにされ始めたという。学校のいじめアンケートでAさんは何度もSOSを出し、母親も学校に訴えたものの、まともに取り合ってくれなかったと振り返る。

 (Aさんの母親)「悲しかったのが誰1人止めていないんですよね。それだけ人数がいるのに『やめときや』という子が1人もいない。逆に笑っている。(学校に被害を訴えたとき)学年主任の先生は寝ていましたからね。びっくりしましたね」

 息子の死後、携帯電話を調べると、両親にもわからなかった卑劣な誹謗中傷の実態が浮かび上がってきた。

約1分間に10回以上「しんでください」匿名で書き込み

 「どつきまわすぞ」
 「なんで4なないの?」

 これはSNS上でAさんのアカウントに投げかけられたコメントだ。匿名でコメントできるアプリで「死ね」「非人権」などAさんを否定するような内容が書かれている。
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 中には約1分間に10回以上「しんでください」と書き込まれたものも。Aさんも「イヤだね」などと返事を送っているが、亡くなる直前まで嫌がらせは繰り返されていた。

 (Aさんの母親)「リアルには見たことなかったですし、こんなにアホみたいにいっぱい送ってきてるんやと思って、もう頭おかしくなりそうでしたね。向こう(同級生ら)が『あいつはムキになる』という性格をわかっていて。いじめる側って反応がなかったらおもしろくないからやめるじゃないですか。息子は格好のターゲットだったと思います」

 両親は市教委に真相を明らかにするよう求め、亡くなって2か月後に第三者委員会が立ち上がった。ただ、主に嫌がらせをしていたとみられる生徒らは聞き取り調査に応じなかった上、匿名での嫌がらせなどをいじめと認定することはハードルが高く、両親はほかに証拠がないか調べ始めた。
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 すると新たな事実が。友人らに協力を得て入手したという加害生徒らのLINEのトーク履歴をまとめたノートを見せてもらった。Aさんが含まれていないこのグループの中で、Aさんへの誹謗中傷が繰り返されていたのだ。

本人含まないLINEグループで陰口 Aさんの死後にも「何が悪いん?」

 例えば、2021年10月5日、下校後に鬼ごっこをしていた際、わざとAさんを置き去りにしたという。その理由については以下のようなことが書かれていた。

 【2021年10月5日トーク内容】
 「こいつ一生ついてくるもん」
 「ゴールデンフィッシュ」
 「金魚の糞」
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 こうした誹謗中傷はAさんが命を絶った後も続き、中には反省の思いが感じ取れないものもあった。

 【Aさんの死亡3日後のトーク内容】
 「まぁまじのことゆうとさ何が悪いん?」
 「なぜ俺らだけピックアップする?ましてや直接ゆうてないだけマシやわ」
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 また、証拠の隠滅を図るかのようなやり取りも。

 【Aさんの死亡8日後のトーク内容】
 「一応らいんはけさせてもらうな?口実はあるから」
 「ええで」
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 さらには学校側の聞き取りに対して“口裏合わせ”をするかのようなトーク履歴も残されていた。

 (Aさんの母親)「いじめを通り越して殺人じゃないですか。おもしろがって人の命が亡くなっていて、いくら嫌いな人間でもそんなになるんかなという。ちょっとほんまに恐ろしいですよね」

SNS上でのいじめ「加害者にはやりやすく被害者には困難な状況を作る」

 いじめ問題に詳しい専門家は、近年目につくSNS上でのいじめの特徴をこう分析する。

 (子どもの発達科学研究所 和久田学所長)「ここでやるんだったら気づかれないのではないだろうか、自分の責任を問われないのではないだろうか、と考える匿名性の問題。簡便だからこそどこまでも追いかけてきて、学校にいる時だけいじめられるのではなくて、24時間いつでもになってしまうとか、誰がやっているのかわからないとか。いじめの加害者にとってはやりやすいものになり、被害者にとっては非常に困難な状況を作る特徴だなと思います」

第三者委「Aさん含まないLINEグループでの暴言」もいじめ認定

 周りの大人も気づきにくいSNS上の誹謗中傷。いじめを調査する第三者委員会はどう判断したのか。Aさんが亡くなって2年、取材班は第三者委員会がまとめた報告書を公開前に独自に入手した。そこには次のように書かれている。

 【第三者委員会の報告書より】
 「本生徒が『その存在を認識した場合には心身の苦痛を感じる』と認められるものについては、『いじめ』に該当する」
 「長きにわたるいじめを受けた結果、絶望と無念な気持ちを抱えながら死を選択せざるを得なかったと推察される」
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 報告書では、中学1年から死亡するまでに実際にされた仲間外れなどをいじめと認定したほか、アプリ上の発言者がわからないコメントやAさんが含まれないLINEグループでの暴言など、計62件をいじめと認定した。本人が知り得なかったSNS上でのやり取りがいじめと認定されたのは極めて異例といえる。

 また学校側の対応についても、いじめアンケートなどで被害を訴えていたにもかかわらず組織的に対応しなかったことが、孤立感や疎外感を強める要因になったと思われる、と厳しく批判した。

 報告書を受けて取材班は門真市教委に取材を申し込んだが、市教委は「報告書を正式に公表しておらず、加害生徒や関係教員らに説明ができていないため、詳細はお答えしかねる」とコメントした。

母親「ここに来て少し時間が進むかなという気持ち」

 息子が亡くなり今年2月で三回忌を迎える。息子が直接見知ったわけではないLINEの投稿などがいじめと認定されたことに、母親は少し気持ちが落ち着いたという。

 (Aさんの母親)「(墓前に)報告できることが1つできたということと、私らは令和4年2月17日から時間が止まったままやったんですけど、ここに来て少し時間が進むかなという気持ちはあります」

 両親らは門真市や加害生徒らを相手取り損害賠償を求めて裁判を起こす予定だ。