インバウンドの回復とともに『白タク行為』が深刻化している。取材班は白タク行為の実態を確認すべく、関西空港を出発した1台の車を追跡した。車はどこへ向かったのか、また記者の追及にドライバーが語ったこととは。

一般車送迎スペースに『白タク』とみられる車の列

 新型コロナウイルスが5類に移行した後、関西空港はすっかりと賑わいを取り戻していた。去年12月にその様子を取材すると。

 (アメリカから来た人)「ラスベガスから来ました。10日間滞在します」
 (インドネシアから来た人たち)「タコヤキ、オコノミヤキ、ドラヤキ。ドラえもん!(Qエンジョイ?)エンジョーイ!」

 しかしインバウンドの回復とともに今あることが問題となっている。それが『白タク行為』だ。
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 (記者)「関西空港の一般車乗り場に白ナンバーの高級ミニバンがずらりと並んでいます」

 関空到着ロビー近くの一般車送迎スペース。外国人から人気だという高級ミニバンやワゴン車が列をなして止まっている。これらの多くは白タクとみられる。白タク行為とは、営業許可を得ていない自家用車である白ナンバーの車が、客から運賃を受け取り客を乗車させることだ。

 そもそもタクシーなどは国土交通大臣の許可を得て緑ナンバーが取り付けられていて、白タク行為は道路運送法で禁じられていて、違反すると3年以下の懲役や罰金となる。

タクシードライバー憤り「アホらしくなってくる」

 警察も摘発に乗り出している。去年11月、白タク行為をした道路運送法違反(無許可営業)の疑いでベトナム国籍の男女9人(20代~30代)が逮捕された。警察によると、SNSで依頼してきた客に対して、関空から大阪市内までタクシーであれば約1万5000円のところ、白タクは1人約5000円で運んでいたという。うち1人は計560回送迎をして約700万円を荒稼ぎしていた。
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 “白タクに客を奪われている”とタクシードライバーは怒りを露わにする。

 (タクシードライバー)「コロナが明けて10月くらいから白タクが多くなりましたね。だんだんアホらしくなってきますよね。真面目にやっていてお客さんとられるなら、ルールを破ってもいいのかなみたいな」
 (タクシードライバー)「白タクすごく多いです。私服の若い子がずっとスライドドアを開けて待っているので。違法なので、第一、ちゃんと摘発なりなんなりしてもらわないと」
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 取材を進めると…。

 (記者)「3人ほど、スーツケースを車の後ろに積み込みました。ドライバーが運転席に乗り込みました。乗客と思われる人も後部座席に乗り込みました。ナンバーは白ですね」
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 (記者)「運転手がスーツケースを積んでいます」
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 (記者)「男性が…後部座席に座るように促しているのでしょうか」

 大きなスーツケースを持った人が次々と車に乗り込んでいく。
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 (記者)「運転手と思われる人が降りてきて何やら電話をしています。…また同じ人が来た!また人が来ましたよ」
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 電話で待ち合わせ場所を指定したのか。カートを押した男女を誘導して車に乗せる。

乗せているのは…「いとこ」「友達」

 彼らは白タク行為をしているのか?ドライバーを直撃した。

 (通訳)「これはあなたが予約した車でしょうか?」
 (ドライバー)「私のいとこです。いとこ!前に座って!」

 ドライバーの多くは中国人とみられ、乗せているのは友達や親戚と答える。
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 (記者)「すみません、こんにちは。どなたか待っているんですか?」
 (ドライバー)「友達ですけども」
 (記者)「どこから来られた友達?」
 (ドライバー)「中国から」
 (記者)「お金は貰っていない?」
 (ドライバー)「貰っていないです」
 (記者)「白タク行為はしていない?」
 (ドライバー)「自分の家族ですけれども」
 (記者)「友達ですか?家族ですか?」
 (ドライバー)「家族みたいな友達です」

「お金を使って予約した」と最初は話していた訪日客だが…

 香港からきた男女。7日間、日本に滞在する予定で、これから大阪の中心部に向かうという。

 (通訳)「これはあなたが予約した車ですか?」
 (訪日客)「そうです」
 (通訳)「これはあなたがお金を使って予約した車でしょうか?」
 (訪日客)「そうです、当たり前。もちろんお金を使って予約したよ」
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 すると一緒にいた女性が…。

 (訪日客)「運転手に『友達って答えて』と言われた」
 (訪日客)「私たちは友達です」

 ドライバーからの指示があったのか、突然、ドライバーとの関係を友達だと言い直した。
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 (記者)「この方を乗せられるんですか?」
 (ドライバー)「友達ですよ」
 (記者)「さっき『友達じゃない』と言っていたんですけど。『お金払っている』と言っていた」
 (ドライバー)「友達です」
 (記者)「これ違反じゃないですかね?許可とっていますか?最初は『友達じゃない』と言っていたんですけれども?」

 車は走り去ってしまった。

“白タクとみられる車”を関空から追跡

 12月14日、取材班は再び関空を張り込むことにした。一般車送迎スペースにはこの日も白タクとみられる車が並ぶ。白タク行為を確認するためにも、私たちは1台のミニバンを追跡することにした。

 (記者)「白ナンバーのミニバンが関空連絡橋を渡っています」
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 車は阪神高速を通り大阪市内方面へ。関空を出発して45分、車は梅田周辺で高速道路を降り、外資系の高級ホテルに到着した。

 (記者)「今、大阪市内の高級ホテルで、トランクからスーツケースをおろしています」

 客とみられる男女2人を送り届けると、車は再び走り出す。
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 大阪市内を走ること30分。すると突然、車が止まった。そしてドライバーがこちらへとやってきた。

記者の追及にドライバーが語ったことは

 (ドライバー)「誰ですか?」
 (記者)「すみません。ちょっとお聞きしたいんですけれども、2人お客さん乗せていましたよね?」
 (ドライバー)「お客さん?」
 (記者)「あれはどういう人ですか?」
 (ドライバー)「それは個人情報です。答える理由はない」
 (記者)「知り合いとかですか?」
 (ドライバー)「それに答える理由はない」
 (記者)「『違法行為をしていない』と自信を持って言えますか?」
 (ドライバー)「それは個人情報です」
 (記者)「お金を貰ったことは認めますか?」
 (ドライバー)「それは答えたくないです。口は堅いですからもう聞かないでください」

 カタコトの日本語で「個人情報なので答えたくない」と繰り返す。
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 (ドライバー)「僕はやったことは答えたくないです。『僕は違法行為をしていない』とかも答えたくないです。もう帰ってください」
 (記者)「タクシー運転手のところに本来なら入るお金。日本で認可されていない」
 (ドライバー)「違うよ、今運転手不足ですよ。全く不足ですよ」
 (記者)「だからといって乗せたらダメなんじゃないですか?」
 (ドライバー)「それは知らん。どうしたらいいかも知らん。社会が良くなるか悪くなるか、それは社会が解決する問題で、俺個人で解決する問題ではない」

 ドライバーは白タク行為については認めなかった。

専門家「事故時に保証ない危険性」「諸外国では性犯罪や強盗も」

 白タクを利用することでどんな危険性があるのか?専門家に聞いた。

 (桜美林大学ビジネスマネジメント学群 戸崎肇教授)「白タクに乗っていて事故を起こされて何の保証もなく泣き寝入りをするといった危険性もあります。諸外国では白タクを利用することによって性犯罪や強盗行為が起こったりしています。日本でもそういったことはないとは限らない」
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 12月中旬、近畿運輸局などが白タクの実態調査に乗り出した。白タク行為が後を絶たないことを受け、今回初めてドライバーに直接、白タク行為をしていないか確認した。

 (職員)「きょうはお迎えですか?」
 (ドライバー)「友達」
 (職員)「どちらの国からですか?」
 (ドライバー)「中国…どこから来ましたか?」
 (訪日客)「アメリカです」
 (職員)「白タクの防止ということで…」
 (ドライバー)「それじゃないです」
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 (近畿運輸局自動車交通部 河原正明課長)「友達と言ってしまえば言い逃れできると思っているところがありますので、啓発活動を継続的に続けていって、白タクをしない、白タクを使わない、こういった両面から啓発活動を進めていくことが大事かなと思っています」

 インバウンド回復とともに急増する白タク。早急に対策が求められている。