賑わいを取り戻した夜の街では「違法行為」が横行していた。今年5月に新型コロナウイルスが5類に移行したことで規制が緩和されて人の流れが増加した。今、大阪のキタとミナミが抱える深刻な問題を取材した。

【大阪・ミナミ】熱気戻った夜の街で横行する「違法な客引き行為」

 大阪の夜の街にかつての熱気が戻ってきた。5月8日、新型コロナウイルスは5類に移行。外出も飲み会ももう我慢は要らない。

 (街の人)
 「めちゃめちゃ飲みました。5杯は飲みました。おいしい」
 「我慢していた部分が3年くらいあったじゃないですか。それでもうタガが外れたみたいなところはあったなと」

 戎橋周辺には外国人観光客の姿も目立つ。

 (アメリカから来た観光客)
 「食べ物、景色、文化、とてもきれいだし、とても上品。和牛が好きだね。あと寿司も」
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 だが、こうした賑わいの裏で『違法行為』が横行している実態もある。大阪府の迷惑防止条例によって規制されている悪質な『客引き行為』だ。

 (客引き)「うちは何でもいけますよ。ショットバー、ガールズバー、スナック、コンカフェ、ラウンジ、キャバクラ」
 (客引き)「お兄さんはおっパブ?キャバクラ?」
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 去年7月に条例が改正され禁止の対象は拡大。性風俗店やキャバクラに加えて、ガールズバー、メイドバー、ボーイズコンセプトバー、メンズエステ、韓国エステ、中国エステなども客引き行為が全面禁止となった。
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 警察の取り締まりで逮捕者も続出しているが、その様相はいたちごっこ。中にはこんな不届き者までいた。

 (客引き)「警察の方じゃないっすよね?」
  (記者)「警察ではないですね。警察やと思ったんですか?」
 (客引き)「1回この質問をしたら警察官はウソつけないんですよ、仕事中なので。もう今日1人パクられているんで。警察じゃないなと思った瞬間ごりごり行きます」

 声をかけてきたのは無料案内所の男性。私服警官でないことを確認したうえでキャバクラやガールズバーを勧めてきた。

 (客引き)「飲み屋系が多いですね。ショーパブとかありますし、セクキャバ、キャバクラ、ガールズバー、あとは普通のバーもやっていますし居酒屋も案内しているので。キャバクラの話なんですけど、2回転あって3人つきます」
  (記者)「それで言ったらお兄さんは今けっこう違法ですよね?」
 (客引き)「違法です。ちなみにガールズバーに行かれるんでしたら絶対的にキャバクラです」

 違法性を認識しながら客引き行為を続けているようだ。

【大阪・キタ】女性たちが等間隔に並び客待ちをする「立ちんぼエリア」

 一方、梅田周辺。飲食店が軒を連ねる商店街には人だかりができていた。だが、少し離れたエリアに足を運ぶと、異様ともいえる光景が広がっていた。
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 (記者リポート)
 「梅田から少し歩いた兎我野町のエリアです。このあたりはパチンコ店やホテルが立ち並んでいます。あ、立っていますね。女の子たちが等間隔に立っています。1、2、3…6人ほどいるでしょうか」

 路地裏に等間隔で立ち並ぶ若い女性たち。少し離れたところから様子をうかがうと…。

 (記者リポート)
 「1時間近く立っている人もいて、男性に話しかけられるのを待っているようにも見えます。あ、今、女性が立ち上がりました。男性とどこかに歩いていきます」
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 売春目的の客待ち行為をしているようだ。警察官が歩くそのすぐ後ろでも…。

 (記者リポート)
 「あ、今、女性が男性と2人で歩いていきました」

 一帯は売春の客待ちをする「立ちんぼエリア」として知られていて、こうした実態が野放しになっている。

『ホテルでもどう?』『今のパパですか?』記者に売春を持ちかける男性たち

 そのすぐ目の前に立っていた女性記者にも男性が声をかけてきた。

 (男性)「暇ですか?暇ですか?」
 (記者)「どうされました?」
 (男性)「どこかホテルでもどう?」
 (記者)「ホテルですか?私とですか?ホテルというのは?」
 (男性)「とりあえず目立つからこっちでしゃべろう。ホテル、ホテル、ホテル、セックス」

 1人の男性が慣れた口調で堂々と売春を持ちかけてきた。

 (記者)「おいくつですか?」
 (男性)「歳?なんで歳、関係あるの?」
 (記者)「おいくつかなと思ったので」
 (男性)「30、40くらい」
 (記者)「毎日放送の記者をしていて、この辺りを取材しているので、取材中で立っていました」
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 男性は記者の前から去っていった。その後もひっきりなしに男性が声をかけてくる。

 (男性)「だいぶ待ってはるんですか?」
 (記者)「何ですか?」
 (男性)「誰か待ってはるんですか?今のパパですか?」

 40代だと言う男性。よくこのあたりで女性に声をかけるという。実際に性行為に及んだことがあるのか尋ねてみると…。

 (男性)「2回くらいですかね。困っている人を助けるような仕事をやっていたんですよ。だからほんまに困っているのかなって。ちょっと身の上話をされたら情に流されちゃって」
 (記者)「特に(金銭を)支払わずに?」
 (男性)「いや、支払うっていうか、お金を貸したことはあります。貸した時点で半分返ってこないかなと思いますけど」
 (記者)「返ってこなかったら買春じゃないですか?」
 (男性)「そうですね。でもナンパなんで、ナンパです」

広島から売春に来た女性「整形費用100万円を稼ぐため」訪れた結末は

 法律で禁じられている売春行為。女性側の客待ち行為は罰則も伴うが、なぜ女性たちは自らを危険にさらして売春の道に走るのか。立ちんぼエリアにいた1人の女性が私たちの取材に応じた。25歳のAさんは売春をするために4日前に広島からやってきたのだという。

  (記者)「お金を稼ぎたい理由っていうのは何ですか?」
 (Aさん)「まぁ整形がしたいからです。100万円ぐらい。今の自分じゃなくなりたいみたいな。本当に自分が嫌いなんですよ」
  (記者)「どういうところが?」
 (Aさん)「性格も、顔も、全部」

 整形費用を1日でも早く貯めるため売春に手を染めた。

  (記者)「あそこに立っていて怖い思いとかすることはないですか?」
 (Aさん)「あんまり人に怖いと思わないんで大丈夫です。結構図々しい人らもいます」
  (記者)「どんなところが?」
 (Aさん)「じゃけぇ、その妊娠に至るようなことまでみたいな」
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 『100万円貯めるまで家には帰らない』、そう決めて売春を続ける日々が、決して平気なわけでもない。

 (Aさん)「まだ警察が捕まえてくれた方が楽になるんじゃないかなとちょっと思います」
  (記者)「なんでですか?」
 (Aさん)「もうどうしようもできなくなるから。こんなことで捕まっても長いこと実刑はくらわないと思うんですけど、誰かが引き留めてくれたら楽なんじゃないかなと思います」

 売春をやめたい、だけど売春以外の方法が思いつかない。Aさんはあの路地裏に戻っていった。
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 翌日にAさんからLINEでメッセージが届いた。

 【Aさんから届いたメッセージ】
 「盗撮されたんで警察に電話しました。怖い思いしたんで一旦広島に帰ろうと思います」

 コロナ以前の活気を取り戻した夜の街。危うい実態が同居している。