『孤独死』が急増している。コロナ禍で家族で集まる時間が減ったことや連絡を取る機会が減ったことが一因とされている。孤独死の現場を取材した。

発見時には死後4日ほどが経っていた

今年8月、Aさんは、京都府舞鶴市の民家で76歳の父親が倒れているのを見つけた。父親は一人暮らしですでに亡くなっていたという。
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(父親を亡くしたAさん 45歳)
「電話をかけようとしてか、ここで横になって倒れていた。またいつもの通り寝てるだけなんかなと思ったんですけれど、見た瞬間に明らかに顔色とかも土色になっていて、亡くなっているのがはっきりわかるような状態だったので。頭が真っ白になりましたね」

警察にすぐに通報し、検視などの結果、「事件性はなく死因は心不全」と説明を受けた。発見時には死後4日ほどが経っていたという。
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(Aさん)
「死に目に会えなかったのはやっぱり子どもとして申し訳ないなというのが思いとしてはありますね。悔やんでも悔やみきれない」

Aさんはコロナ禍でも月に1度は父親の顔を見に訪れていたというが、今、こうした孤独死が急増している実態がある。
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大阪府監察医事務所によると、大阪市内で見つかった孤独死の件数は高齢化の影響で高水準が続いていたが、2017年は1077人だったのが2020年は1314人と急増した。コロナ禍で家族関係が疎遠になったことが一因とみられている。

Aさんは父親の死後、遺品整理や祖父母の代からそのままになっていた家財道具の処理などをある業者に依頼した。

(Aさん)
「どうしていいのか本当にわからなかったので、特殊清掃とかも含めてお願いをしないといけないのかなと思って」

清掃請け負う業者に例年の2~3倍の相談

Aさんから依頼を受けたのは奈良市の遺品整理会社「関西クリーンサービス」。大阪を中心に孤独死などの現場で清掃作業を請け負っている。

(関西クリーンサービス 亀澤範行社長)
「(Q今年の相談件数は?)2000件~3000件近いと思いますね。例年の倍くらい。月によっては3倍とか」

今年さらに急増しているという仕事の依頼。その訳とは?

(関西クリーンサービス 亀澤範行社長)
「コロナで会わなくなってしまったとか、連絡も取らなくなってしまったとか、今までだったら毎年お盆であったりとかお正月とか年末とかは家族とか親族が集まっていたんですけれども、ここ2年くらいはそういう集まりもなくなってしまって。久々に実家に帰ったら亡くなっていたとかそういう方が多いです」

コロナ禍で増え続ける孤独死。その現場は死後に時間が経過していればいるほど難しくなるという。

孤独死した住人…家族は相続放棄

今年8月、大阪市西成区にある民家での特殊清掃の現場に、取材班は立ち会った。まず大家に話を聞いた。

(特殊清掃を依頼した大家)
「西成区役所の方が故人に用事があるようで手紙を出されたんです。その手紙の返事が返ってこない。おかしいなって気付かれまして、それで一応見に来られたそうです」

今年8月、民家を訪れた区の職員が異変に気付き、警察に通報。この家に住んでいた65歳の男性が亡くなっているのが見つかった。死後3か月ほどが経っていて、死因は不明だった。

(特殊清掃を依頼した大家)
「(男性の)お姉さんがいろいろ葬儀とかをされるので『家具一切は私たちがせんといけないね』ということをおっしゃっていたんですが、ある日突然、相続放棄ということをされたんです。大家が今回はしないといけなくなった」

孤独死の場合、元々家族と疎遠で遺産相続を放棄するケースも少なくない。

清掃作業者もコロナ警戒で防護服を着用

亡くなった人が新型コロナウイルスに感染していた可能性もあるため、室内に入る際には防護服を着用する。取材班も防護服を着た上で同行した。家に入り2階に上がると窓が割れた跡があった。

(関西クリーンサービス 亀澤範行社長)
「(Q窓が割れているのは?)あれはですね、異臭騒ぎの苦情で警察が窓ガラスを破って鍵を開けて入った。救急とか警察が入った時に事件性がないかというのを調べるので。強盗にあったんじゃないかとか何か盗まれたんじゃないかとか」
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高齢者の一人暮らしで体が不自由だったのか、部屋はかなり荒れている状況だった。

(関西クリーンサービス 亀澤範行社長)
「コロナ禍において突然、遺体の発見がかなり遅れるケースが多くなって、もしかしたらコロナで亡くなっているかもしれないということで、スタッフも行きたくないという人が増えたので、そのために防護服を着たりとか薬剤を散布したりとか」
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家具などを持ち出す前に、薬剤を部屋全体に散布して、感染症対策を行う。
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その後、タンスや食器棚などを次々と外に運び出していく。
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すると、台所に置いてあったフライパンの中に1万円札の束が入っていた。

(関西クリーンサービス 亀澤範行社長)
「(Qへそくりですか?)これどうしようかな。相続放棄ですもんね。結構あるで…」

さらに…。
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(関西クリーンサービスのスタッフ)
「遺骨」
(関西クリーンサービス 亀澤範行社長)
「あ!あった!どこにあった?」
(関西クリーンサービスのスタッフ)
「袋に入ったままで転がっていました」

出てきたのは現金や兄の骨壺など。貴重品が出てきた場合、遺族が相続を放棄しているため、大家の所有物になる。

清掃作業が進むにつれ見えてくる住人の状況

住人がどんな最期を迎えたのかさえわからないまま続く特殊清掃。作業が進む中で当時の住人の状況が少しずつわかってきた。部屋から文字が書かれた紙が出てきた。

【紙に書かれた内容】
『4年ぜったいむり』
『いきがあらくてくるしい』
『あたまがおかしい』
『死にたい』
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(関西クリーンサービス 亀澤範行社長)
「たぶん闘病生活をされてたんでしょうね。なんとなくですけど、何かの持病を患っていらっしゃって、薬の副作用がけっこうきつくて鬱っぽくなっていたのかなという感じがしますね。さっきも片づけていたら注射の針がいっぱい出てきたので」
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作業を続けること8時間。室内の畳も全て外すなどして2tトラック5台で全て運び出した。

(関西クリーンサービス 亀澤範行社長)
「廃棄物は廃棄物として処理されて、機械類とかは海外の方に貿易で流れていきます。きょうでここと同じような現場を7件、別でやっています」
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コロナ前の特殊清掃の仕事の多くは『ゴミ屋敷の清掃』だったが、今は孤独死の現場が増えている。今年8月には全国の警察が扱った変死体のうち、過去最多となる250人が新型コロナウイルスに感染していたこともわかっていて、緊迫した状況が続いている。